Project/Area Number |
23K05848
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44050:Animal physiological chemistry, physiology and behavioral biology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷部 政治 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (40802822)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 光周性 / 概日時計 / 温度受容 / 季節性繁殖 / 神経 |
Outline of Research at the Start |
動物は日長や温度といった環境要因から季節を正確に読み取り、様々な生理機能や行動を季節変化に応じて適切に調節している。季節情報の1つである日長情報の読み取りには、約24時間周期のリズムを刻む脳内の概日時計が重要であることが示唆されてきた。しかし、日長や温度といった複数の環境情報を統合し、季節に応じた生理機能制御を司る神経分子基盤は未だ不明瞭である。 本研究では、季節性生殖を行うホソヘリカメムシを用いて、1. 概日時計をもとにした日長読み取りの神経分子基盤、2. 生殖の光周性制御回路における温度情報の統合機構の解析を行い、複数の環境要因を統合し季節性生殖を司る神経分子基盤の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
動物は日長や温度といった環境情報を統合することで、季節に応じて適切に生殖を制御している。本研究では、日長に応じて生殖活動を明瞭に切り替えるホソヘリカメムシを用いて、体内時計:概日時計を中心とした、環境要因を統合し季節性生殖を司る神経基盤の解析を進めている。 本年ではまず、生殖休眠の誘導に関わるとされる脳側部(Pars lateralis、PL)領域に着目し、日長条件に応じた生殖切り替え時における、大型PLニューロンの神経応答を解析した。その結果、PLニューロンは、生殖休眠に入る短日下では顕著に高い自発活動性を示した。一方で、長日下では多くのPLニューロンは活動性が見られないサイレントとなり、日長条件に応じてその自発活動性が明瞭に切り替わることが分かった。 続いて、このPLニューロンの神経日長応答における概日時計の関与を、RNA干渉による概日時計遺伝子のノックダウンにより検証した。時計遺伝子periodをノックダウンした群では、日長条件に関わらず生殖腺が発達するが、それと相関して、多くのPLニューロンも長日・短日どちらでも自発的活動が見られないサイレントとなり、日長応答性が消失することが分かった。 以上の結果から、休眠誘導に関わるとされるPLニューロンは、時計遺伝子依存的にその自発的な活動性を日長条件に応じて切り替えることで、季節日長変化に応じた生殖の切り替えに貢献していると考えられる。 また、もう1つの季節環境要因である温度による生殖への影響も解析した。成虫羽化直後から低温環境で飼育すると、卵巣発達は全く見られなかった。一方で、羽化後10日間は通常飼育温度で飼育した後に、低温環境に移して20日間飼育した場合には、羽化後10日目における卵巣発達とほぼ同じくらいの割合で卵巣発達が見られた。この結果から、低温環境によりその時点での発達状態のまま、卵巣発達が休止することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者のグループは、これまでにホソヘリカメムシにおいて、脳間部(Pars intercerebralis、PI)のニューロン群が、概日時計依存的に日長条件に応じて自発活動を切り替え、産卵制御を行っていることを明らかにしていた(Hasebe and Shiga, 2021)。それに加えて、本年の研究により、休眠誘導に関わることが示唆されているPLニューロンも、概日時計に基づいて日長条件に応じて神経活動性を切り替えていることが明らかになった。このことから、PLとPIという2つの脳領域が、概日時計に基づいた日長情報を受容し、生殖機能・活動の切り替えを行う中枢領域であることがより明瞭になり、季節性繁殖機構の解明に繋がる研究成果をあげられていると考えられる。 また、日長に加えてもう1つの季節環境要因である温度による生殖への影響についても解析を進め、ホソヘリカメムシにおいては、低温環境ではその時点での発達段階で卵巣発達を休止させるという、重要な知見を得ることができた。 以上のことから、季節性生殖を司る神経基盤の解明に向けて、おおむね順調に解析を進めることができていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年の研究によりPIニューロンに加えて、PLニューロンが季節日長情報を受け取り、生殖の切り替えを行っていることが示唆された。また、低温環境で卵巣発達が休止することも明らかになった。そこで次年度では、脳内のPL・PIニューロンが日長情報だけでなく温度情報も受容し、温度条件に応じた生殖制御にも関与しているか検証を進めていく。 また、PL/PIニューロンの神経日長応答には時計遺伝子が重要であることが分かったが、概日時計の分子機構をもとにどのように日長変化を読み取っているかは未だ不明である。そこで、概日時計のコアループを調節する様々な制御因子に着目し、RNA干渉による遺伝子ノックダウンや遺伝子発現量解析などを通じ、概日時計機構の日長応答性に関与する遺伝子群の同定を試みていく。
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