Project/Area Number |
23K05861
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44050:Animal physiological chemistry, physiology and behavioral biology-related
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
渡邉 英博 福岡大学, 理学部, 助教 (90535139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 崇之 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 助教 (70547851)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 湿度受容 / イオノトロピック受容体 / 機械受容体 / ワモンゴキブリ / 湿度トランスダクション機構 / 電気生理学 / 湿受容細胞 / 乾受容細胞 / 湿度受容体 / 神経生物学 / RNA干渉 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ワモンゴキブリの湿度受容体および湿度情報のトランスダクション過程を明らかにする。昆虫は湿度感覚に特化する受容器や感覚細胞、受容体を持つが湿度受容機構は、湿度応答記録の難しさから、モデル昆虫であるショウジョウバエにおいても明らかになっていない。一方、ワモンゴキブリでは、電気生理学的に湿度感覚細胞の神経応答を直接記録することが可能であり、RNA干渉法と電気生理学実験を組み合わせることで湿度受容体の機能解析を行うことができるようになった。ワモンゴキブリの湿度情報トランスダクション過程の解明を行うことにより、不完全変態昆虫から完全変態昆虫にかけての感覚系の進化なども明らかになるだろう。
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Outline of Annual Research Achievements |
昆虫にとって外界の湿度勾配を正確に受容し、水源に定位することは極めて重要であり、昆虫は触角上に湿度受容に特化した受容器と湿度感覚細胞を保持している。しかし、昆虫において、外界の湿度情報がどのように湿度感覚細胞の神経応答に符号化されているかはいまだ不明である。本研究課題では、神経生理学的に湿度受容機構がよく研究されているワモンゴキブリに、分子生物学的手法を導入することで、ワモンゴキブリの湿度受容体を機能的に同定する。続いて、外界の湿度変化に伴う、触角上の湿度受容器の微細構造の変化を実際に観察する。これらの実験により、ワモンゴキブリで提唱されている湿度受容過程における「湿度-機械変換仮説」を検証し、今日まで不明であった、昆虫の湿度情報のトランスダクション機構の全容解明を目指す。 モデル生物であるショウジョウバエでは化学受容体であるIR型受容体の一部と機械受容体であるTRP受容体の一部が湿度受容に関わっていることが独立した研究によって示唆されている。しかしながら、ショウジョウバエでは湿度感覚細胞からの高時間解像度の神経応答記録ができないため、これら同定された受容体が湿度受容にどのように関わっているかがわかっていない。23年度はワモンゴキブリにおいてショウジョウバエで報告されている湿度受容体遺伝子と相同な遺伝子、および分子系統学的にその近縁な遺伝子群を網羅的に同定し、RNA干渉法と電気生理実験を組み合わせることで同定した遺伝子の機能解析を進めた。その結果、ワモンゴキブリにおける湿度受容体を新規に同定し、そのうちのいくつかは昆虫で初めて報告された湿度受容体であった。現在、同定した湿度受容体候補遺伝子の機能解析を引き続き進めるとともに、これらの発現阻害個体において湿度定位行動がどのように変容するのか解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不完全変態昆虫であるワモンゴキブリの触角上には「茸状感覚子」と呼ばれる湿度受容に特化した感覚器が存在している。また、茸状感覚子の構造観察結果より、外界の湿度変化をクチクラ構造の微細な機械変位を内在する湿度受容細胞が受容するという「湿度-機械変換仮説」が提唱されている。本研究では、この「湿度-機械変換仮説」を検証するため、「(1)ワモンゴキブリの湿度受容体の同定と機能解析」と「(2)外界の湿度変化に伴う、茸状感覚子の構造変化」の二つの研究課題を実施する。23年度は特に(1)の課題で進展が見られたので報告する。 ショウジョウバエではIR受容体に属するIR25a、IR93a、IR68a、IR40a、および、TRP受容体に属するNauchung、Inactive、water witchが湿度受容体であることが示唆されている。23年度は、ワモンゴキブリの触角に発現しているこれら遺伝子と相同な遺伝子、およびその近縁の遺伝子12種類(IR型受容体遺伝子6種、機械受容体遺伝子6種)をワモンゴキブリ湿度受容体候補遺伝子として同定した。続いて、RNA干渉法を用い、これらの湿度受容体候補遺伝子の発現阻害個体を作成し、湿度受容細胞から湿度応答を記録することで、同定した遺伝子の機能解析を行った。その結果、ワモンゴキブリではIR25aとIR93aが湿度の上昇を受容する湿度受容体であること、IR8aが湿度の下降を受容する受容体であることが示唆された。一方、ワモンゴキブリではショウジョウバエと異なり、いずれの機械受容体も湿度受容には関与していなかった。ワモンゴキブリで明らかになった湿度受容体の組み合わせはショウジョウバエとは全く異なり、不完全変態昆虫から完全変態昆虫に至るまでの湿度受容機構の進化過程があること強く示唆された。この研究成果の一部については23年度に実施された国内学会で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の実験より、分子生物学的手法と感覚生理学的手法を組み合わせることにより、ワモンゴキブリの湿度受容体の一部が明らかになった。24年度は、23年度に確立した実験手法を用いて、未解析の湿度受容体候補遺伝子の解析を引き続き進める。加えて、現在、ワモンゴキブリを用いた、湿度定位行動の実験・解析系の立ち上げを進めており、実際に、ワモンゴキブリの通常個体が非常に正確に湿度源を定位できることを明らかにしつつある。今後、機能同定した湿度受容体の発現阻害個体を用いて、湿度定位行動の解析を進めることで、湿度受容と湿度行動の関係性を明らかにする計画である。続いて、24年度は、機能同定した湿度受容体遺伝子が実際に湿度感覚細胞に発現しているかどうかを神経解剖学的に明らかにする。現在、すでに湿度受容体として同定したIR25a、IR8a、IR93aのペプチド抗体の作成を依頼しており、それが完成次第、免疫組織染色法によりこれら受容体分子の触角内および茸状感覚子内での分布パターンを解析する予定である。もし、染色性の高い抗体の作成に失敗したら、国内の専門家の協力のもと蛍光in situ hybridization法を実施する。 これら湿度受容体関係の研究と並行して、24年度から25年度にかけては実験課題「(2)外界の湿度変化に伴う、茸状感覚子の構造変化」を進める予定である。現在、実験に使用する「環境操作型電子顕微鏡」を用いた予備実験を進めている。 得られた研究成果のうち、ワモンゴキブリ湿度受容体の機能解析については新規性の高い実験データであるため、原著論文としてまとめ、24年度内に国際誌で報告することを目標としている。
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