Project/Area Number |
23K05876
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松村 茂祥 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (40619855)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 生命の起源 / 情報と機能の分離 / RNAワールド / 区画化 / 実験進化 |
Outline of Research at the Start |
生命の初期進化において、「遺伝情報と機能がどのように分離したのか」は、生命科学における非常に重要な未解決問題である。申請者は、最近行ったリボザイムの擬細胞内進化実験により、遺伝情報と機能が分離したRNAを偶発的に発見した。本研究では、液滴マイクロ流体システムを用いた実験進化により、「情報と機能の分離が成立するための進化条件」を解明することを目的とする。単一の分子が情報と機能の両方を担う状態に比べ、別々の分子がそれらを分業し協力する状態は複雑で生じにくいと考えられるが、一方で、系全体の機能の高度化という点では有利に働くと予想される。この複雑化がどのように起き得たのか、実験進化により検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
生命の初期進化において、「遺伝情報と機能がどのように分離したのか」は、生命科学における非常に重要な未解決問題である。申請者は、最近行ったリボザイムの擬細胞内進化実験により、遺伝情報と機能が分離したRNAを偶発的に発見した。本研究では、液滴マイクロ流体システムを用いた実験進化により、「情報と機能の分離が成立するための進化条件」を解明することを目的とする。単一の分子が情報と機能の両方を担う状態に比べ、別々の分子がそれらを分業し協力する状態は複雑で生じにくいと考えられるが、一方で、系全体の機能の高度化という点では有利に働くと予想される。この複雑化がどのように起き得たのか、実験進化により検証する。 申請者がこれまでに行ったRNA切断リボザイムの擬細胞内進化実験により、触媒活性を持たない機能性RNAが想定外に進化してきた。そのRNAを解析したところ、もとのリボザイムより小型でかつ全く異なる配列をもっており、基質RNAと塩基対を形成し、その蛍光を増強させる活性を有していることが判明した。そこで、このRNAがどのように生じたのかに関心をもち、これをコードするDNA("b4"と命名)を調べたところ、配列内に2つのT7プロモーターを有していた。そこから転写される長短2種のRNAのうち、長いRNA("b4u")は、液滴内の増幅系(NASBA)内で自己複製する能力をもつが、基質RNAと結合してその蛍光を増強する機能をもっていなかった。対して、短いRNA("b4d")は、NASBA内で複製されないが、基質RNAの蛍光を増強する能力をもっていた。すなわち、これらのb4uとb4d RNAは互いに依存関係にあり、同一液滴内で協調して働くことで液滴の蛍光強度を増大させ、進化してきたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者がこれまでに行ったRNA切断リボザイムの擬細胞内進化実験により、触媒活性を持たない機能性RNAが想定外に進化してきた。そのRNAを解析したところ、もとのリボザイムより小型でかつ全く異なる配列をもっており、基質RNAと塩基対を形成し、その蛍光を増強させる活性を有していることが判明した。そこで、このRNAがどのように生じたのかに関心をもち、これをコードするDNA("b4"と命名)を調べたところ、配列内に2つのT7プロモーターを有していた。そこから転写される長短2種のRNAのうち、長いRNA("b4u")は、液滴内の増幅系(NASBA)内で自己複製する能力をもつが、基質RNAと結合してその蛍光を増強する機能をもっていなかった。対して、短いRNA("b4d")は、NASBA内で複製されないが、基質RNAの蛍光を増強する能力をもっていた。すなわち、これらのb4uとb4d RNAは互いに依存関係にあり、同一液滴内で協調して働くことで液滴の蛍光強度を増大させ、進化してきたと考えられた。 進化してきたb4uとb4d RNAの配列は明らかとなったが、その機能発現メカニズムは不明であった。よって、まずb4uとb4d RNAそれぞれについて、変異体の作製と機能解析を行い、b4dの蛍光増強メカニズム、そしてb4uがb4dと同じ配列を有するのになぜ蛍光増強しないのか、を解明した。b4uとb4dでは2次構造が変化しており、b4uでは不可配列の影響で、基質RNAに結合できなくなっていることが明らかとなった。また、b4dはNASBA増幅に必要な配列を欠失しているため、NASBA内で複製されないことも判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
VSリボザイムの進化実験中に、どのような過程を経てb4 DNAが出現してきたのかを明らかにするため、次世代シーケンサーを用いた網羅的解析を行う。最初はVSリボザイムの変異体しか存在しなかったライブラリに、どの時点でどのようにb4が出現し、分子集団を占有していったのか、その動態を解析する。これにより、進化実験での選択圧の変化と、b4分子種の出現との相関関係を明らかにする。 また、b4 DNAの際だった特徴は、T7プロモーターを2つ有することと、その長さがもとのVSリボザイムに比べて顕著に短いことである。なぜもともと1つだったプロモーターが2つになったのか、なぜ長さが極めて短くなっていったのか、その機構を解明する。 b4の進化起源、および情報と機能の分離が起きる条件を明らかにするため、b4の擬細胞内進化実験を行う。液滴の反応時間、および選択の際の蛍光閾値を変更し、選択圧が低い状態と高い状態で進化を行う。また、もとのVSリボザイムとb4が共存した状態がb4の出現・進化に影響を与えるかどうか、リボザイムの有無それぞれの条件で実験進化を行うことで、検証する。これらの実験により、情報と機能の分離が起きるためには、どのような進化条件が必要なのかを明らかにする。
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