Project/Area Number |
23K05885
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中村 剛之 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00526486)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 新産地発見 / 積雪下昆虫の解明 / subnivean fauna / 白神山地 / 生物多様性 / subnivean zone / 昆虫群集 / 越冬 / 積雪環境 |
Outline of Research at the Start |
雪と地面の間の空間は雪の断熱効果によって冬季を通じて温湿度が一定に保たれ、低温下でも活動が可能な一部の昆虫類にとっては格好の生活空間となっている。日本の豪雪地帯は冬になると毎年厚い雪に覆われる。このような安定した環境下では特殊な環境に適応し、独自の進化を遂げた昆虫が生息している可能性があるが、日本国内では北日本の一部の地域を除き、この昆虫群集についての研究は行われていない。本研究は、これまで調査されていない中部地方から九州の積雪地帯で雪の下を調査することによって、日本列島の秘められた未知の生物多様性の一端を明らかにする事を目的としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は野外での調査は地元の青森県白神山地のみで行い、その他、博物館に保存されている標本資料の調査などを行った。(北アルプスなどでの調査は次年度に実施する予定である) 白神山地では冬季閉鎖している観光利用されている水源の自然林や弘前市南部の低山地で調査を行った。雪の下での活動が認められる昆虫を中心に、晩秋の雪の降り出す前と雪が降り出した後に繰り返し採集し、種の構成と出現する頻度を調べた。この調査は雪の下で捕獲された種の構成と比較することによって、冬季間、積雪条件下での昆虫の空間利用を明らかにすることを目的にしている。その結果、ホソキノコバエ科やタマバチ科、カワゲラ目昆虫などは雪の表面でのみ確認され、雪の下を利用していない、ハネカクシ類は逆に雪の表面ではほとんど見つからない、クモガタガガンボ(双翅目)は雪の下と表面を行き来し、両方の空間を利用しているという傾向が見られた。また、この調査によって寒冷期に活動するガガンボダマシ科、ガガンボ科、ホソキノコバエ科などの未記載種を確認することができた。これらの種については次年度以降、新種記載を行う。 博物館等での標本調査では、代表的な積雪下の昆虫であるクモガタガガンボの一種が、九州の低山地に生息していることが確認できた。九州ではこれまで、この仲間の分布は記録されていなかったと思われる。積雪下での暮らしに適応して歩行に特化し、翅を退化させたクモガタガガンボが、近年では稀にしか積雪しない地域で発見されたことは、生息地が以前はより頻繁に積雪する地域であったことを物語るだけでなく、少なくとも一部の積雪下の昆虫は、雪のない条件でも絶滅することなく、西日本の低山で生き続けている可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定では令和5年度は北アルプス、北陸、九州の山地、白神山地での野外調査を予定していたが、年度当初に体を壊し、手術と入院を伴う治療を受けてから、体力が大幅に減退したため、雪の中での物資の搬入、雪を掘り返して行うトラップの設置や回収などの作業は体への負担が大きく、危険と判断し、単独での冬山の調査活動は行うことができなかった。そのため、野外での調査は地元の青森県白神山地のみで行い、その他、博物館に保存されている標本資料の調査などを行った。 次年度には冬季の調査にむけて体力の回復を図り、調査地を増やし、令和5年度の遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の調査の遅れを取り戻すため、予定より調査地を増やし、北アルプス、南アルプス、北陸(白山)、九州で調査を行う。特に九州では、積雪がほとんどない場所から雪の下に特有の昆虫が確認されたことから、低山地にも調査地を設ける(九州大学英彦山実験所付近を想定)。近畿地方、中国地方は最終年度に調査する。白神山地の調査では、これまでと同様に雪の降り出す前と後の昆虫相を調べる他、雪の移動や雪崩のために、これまでのトラップでは調査できなかった傾斜地での調査方法や簡易なサンプリング方法を検討し試行する。 これまで得られた標本をもとに、クモガタガガンボ、ガガンボダマシ科の分類学的な研究を進め、多様性の記録や新種記載等の論文の執筆に取り掛かる。
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