Project/Area Number |
23K05893
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45030:Biodiversity and systematics-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 文男 東京都立大学, 理学研究科, 客員研究員 (40212154)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ベイツ型擬態 / 平行進化 / 日周活動 / 前適応 / 擬態 / 行動 / 昆虫 |
Outline of Research at the Start |
昼行性種と夜行性種が混在する昆虫のグループで、警告色を伴うベイツ型擬態およびミュラー型擬態が系統樹上でどのように出現するのかを調べ、本来夜行性であるはずの昆虫の中に、昼行性の種が擬態のために進化したことを明らかにする(昼行性種はが昼行性の有毒の昆虫に類似する)。さらに、そうした擬態の進化の背景として、婚姻贈呈(交尾時にオスからメスへ渡されるゼリー状の外部精包をメスが後尾後に食べて卵の成長などの栄養とする)がどのように関与するかについても明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
ヘビトンボ類における成虫の活動の日周性と擬態の可能性について,初年度(2023年度)として,アジアおよびインドに分布するProtohermes属の分子系統解析の整理を行った.この属には翅が透明あるいはやや黄色となる種と,翅が黒化し白い水玉模様を有する種が混在する.これまでのDNA塩基解析結果から分子系統樹を作成とすると,これらの翅の色と模様はそれぞれが1つにまとまるのではなく,それぞれの種群に両者が混在する場合と,全種が黒化した翅を有する場合に分けられた.つまり,翅の黒化は進化の途上で1回のみ生じたのではなく,多起源であることが示唆された.それぞれの種の日周活動について,全種が黒化した種群では昼行性であったが,他の種群(黒化した種が混在する)では,まだ不明のままである(透明あるいはやや黄色い翅の種は夜行性であることがわかっている). 翅が黒化し白い水玉模様をもつProtohermes属の擬態相手(モデル種)として,有毒の鱗翅目のマダラガ類,ヒトリガ類,シロチョウ類のDelias属の種を選定した.それぞれの種は文献情報から有毒と判断され,翅の色彩・模様および体サイズがいずれもProtohermes属の黒化種と類似していた.また,これらのモデル種の分布は,黒化したProtohermes属の分布域と一致よく一致した. ヘビトンボ類だけでなく,他の昆虫類における日周活動と擬態の進化に関して,日本産のガ類についても同様の研究を行なっている.その結果,カノコガ類4種のうち(成虫はいずれも昼行性)蛹の色彩に褐色と黄色に黒い斑点を有する2パターンがあることがわかった.さらに,褐色の蛹は地表面の物陰で蛹化するが,黄色に黒い斑点を有する蛹は地上のよく目立つ枝先や葉の間で蛹化することが野外および室内容器内で証明された.これらの結果は論文としてまとめられ出版された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでできるだけ多くの種について,中国の共同研究者らとProtohermes属についてDNA解析を行ってきたが,それらを網羅的に整理し,この属の分布域全体(東アジア,東南アジア,インド)の全種群(形態分類に基づく)についての解析を行うことができた.その結果,形態分類では分けられていた種群が分子系統樹上では同一種群となったり,同一種群と考えられていたものが分子系統樹上ではあらたに2種群に分けられることが明らかとなった(多くの種群は形態分類と分子系統が一致した).さらに,昼行性の有毒のガ類やチョウ類に擬態していると考えられる翅が黒化し,白い水玉模様を有する種が,多くの種群にわたり多起源的に生じていることが証明された.これらの結果は,今後,それぞれの種の擬態の効果に対する実証的研究の基礎として非常に有用な情報となる. 一方,が類においても,ヘビトンボ類と同様の日周活動の変化にともなう擬態の進化が生じている可能性について予備的知見を得ることができた.それに基づき,昆虫類の日周活動の変更が起こると,擬態が進化する背景が生じ(昼行性の有毒種に擬態),形態的多様性が同様の自然選択圧のもとで平行的に進化する可能性を実証的に研究できそうである. その一部(昼行性のカノコガ類4種の蛹の色彩の極端の差異)は論文として出版することができた.また,タイの研究者のもとを訪問し,今後の研究の可能性と調査地の選定を行うこともできた.
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Strategy for Future Research Activity |
ヘビトンボ類には,Protohernes属だけでなく,他の属にも形態的に擬態種と考えられる種が存在する.それらの属の網羅的分子系統樹を作成し,Protohermes属と同様に,擬態種が何回進化したかを推定することが今後の課題の1つである.そのためには,できるだけ多くの種の記載を行い,同時にDNA配列情報を得ることが必要である. 擬態の実証的研究は困難さをともなうが,まず捕食者に対する毒性や忌避性を明らかにする.このときモデル種と考えられる種についての毒性や忌避性についても明らかにする.さらにそれぞれの種が夜行性であるのか,昼行性であるのか,薄明薄暮型であるのかを飼育化でアクトグラムを用いて調べる必要がある. ヘビトンボ類では擬態に伴う性的二型種が存在する(オスは黒化して白い水玉模様を有するが,メスは透明翅あるいはやや黄色い翅を有する).このオス限定擬態は,これまで擬態の適応的側面から調べらたことがなく,そうした種について,この研究での仮説(多量のゼリーを自己生産して婚姻贈呈を行う種は,腹部に大きな内部生殖器を有し,捕食者にとって卵巣のあるメスより栄養価が高いため,擬態の効果がオスで顕著になる)を実証するという目的がある.その野外調査を行う場所の選定が今後の課題である.
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