Project/Area Number |
23K05924
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉竹 晋平 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (50643649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 俊之 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 教授 (90272351)
友常 満利 玉川大学, 農学部, 准教授 (90765124)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | マングローブ林 / 炭素循環 / 溶存無機炭素(DIC) / ベントス / 巣穴 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、マングローブ堆積物における好気的・嫌気的有機物分解によって生じた二酸化炭素が、ベントスが堆積物に穿孔した巣穴を出入りする水に溶け込むことで溶存無機炭素として河川・海洋へ流出するという潮汐ポンプ仮説に着目する。小規模なマングローブ林を対象とし、ベントス巣穴の現存量・サイズの把握を行う。また、巣穴内部の水を経時的に採取することでDIC放出速度を測定し、環境要因との関係性を調べる。さらにマングローブ域の広域踏査に基づいて流域レベルへのスケールアップを試みる。これらの調査・分析により、マングローブ域の炭素循環におけるベントス巣穴を介したDIC流出の重要性を明らかにすることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
マングローブ流域からは有機物分解で生じた溶存無機炭素(DIC)が大量に海洋に流出しており、マングローブ域や沿岸域における物質循環に重要な意味を持つ。本課題では、ベントス巣穴内部でのDIC放出過程を明らかにし、ベントス巣穴の重要性を定量的に評価することを目的としている。 石垣島の小規模マングローブ林において現地調査を行い、マングローブ域内を流れる小河川の上流~中流~下流域、そして河川からの距離が異なる地点においてベントス巣穴のサイズと密度を調べた。その結果、巣穴サイズや密度にはこれらの場所による違いは明瞭ではなく、巣穴サイズは0.5~1.5 cm程度、密度は10~60個 m2程度であった。 堆積物表面にあるベントス巣穴入口に対してインターバルカメラによる撮影を行い、巣穴内部の水の動態の観察を行ったところ、上げ潮時にも内部の水面がさほど上昇せず、地表面が冠水して巣穴上部から水が浸入する巣穴が確認できた一方、上げ潮時の周辺水位の上昇に連動して内部の水面が上昇する巣穴も存在していた。インターバルカメラで内部の水動態がきちんと確認できた巣穴のうち、前者が約6割、後者が約4割であった。 干出時に巣穴内部に残された水を試験的に採取してDIC濃度を測定したところ、河川水や海水および堆積物表層に残った表層水などよりも高濃度のDICが含まれていた。また、いくつかの巣穴ではその濃度が干出後に経時的に増加する傾向が見られたことから、巣穴壁面を介して堆積物から水へと多くのDICが移行していると考えられた。 さらに、堆積物中のDICの表層水への移行や巣穴内部の水の交換に大きくかかわると考えられる水文レジーム(干出・冠水時間など)を明らかにするため、マングローブ域内の精密な測量を行った。この結果をもとに現在等高線図などを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベントス巣穴のサイズ・密度の空間変動に関するデータは予定通り取得した。また、対象マングローブ林域の測量も実施し、等高線図作成に必要なデータも取得した。 ベントス巣穴内部の水へのDIC放出に関しては、まず巣穴内部の水自体の動態が重要であると考えられたことから、当初予定になかったインターバルカメラを用いての観察を行うことで、ベントス巣穴入口を介した単純な水の動きだけではないことを明らかにできた。同時に、主にベントス巣穴入口を介して水が出入りする(逆に言えば干出時は水の出入りがあまりない)巣穴を想定して当初計画していた方法だけでは、ベントス巣穴内部へのDIC放出速度の測定が困難であることが分かった。しかし本年度は、ベントス巣穴のうち、当初想定していた干出後も水が残る巣穴(すなわち、主にベントス巣穴入口を介して水が出入りしている巣穴)だけを対象として、当初予定していた方法にてDIC濃度測定を実施し、データを得ることができた。 以上のことから、当初想定していなかった方法上の困難さはあるものの、おおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
対象とするマングローブ域における、巣穴入口のサイズ・密度の概要については明らかになったがその地下部構造に関する情報、すなわち巣穴の深さ、太さ、分岐、地表面面積あたりの巣穴空間の体積などについては不明である。そこで今後はマングローブ林のベントス巣穴に関する更なる基礎情報を取得するため、ベントス巣穴に石膏または速乾性の樹脂を流し込むことで型取りを行い、それをもとに上記のデータを取得・解析していく予定である。 インターバルカメラによる観察により周辺水位と連動して巣穴内部の水位が上下する巣穴があったこと、また予備的に上記方法により巣穴の地下構造を調べたところ、複数の入り口を持ち複雑に分岐・合流を繰り返す巣穴が存在していたことなどから、野外に自然に存在するベントス巣穴だけを用いて、堆積物から巣穴内部の水へのDIC放出速度を求めることは難しいと考えられた。そこで本年度は、人為的に堆積物に垂直方向に穴を開け(人工巣穴)、そこに溜まった水へのDIC放出速度を測定する。これにより、既知の深度や表面積、空間体積におけるDIC放出速度を求めることができる。これを前出の樹脂による型取り結果(巣穴全体の体積や表面積)を用いてスケールアップすることで、野外におけるベントス巣穴内部へのDIC放出速度を推定していく。また、人工巣穴を用いたDIC放出速度の測定を流域内の複数の地点(上流~中流~下流域)や複数の季節(夏季・冬季)で行うことで、環境要因とDIC放出速度の関係性についても検討を行っていく。
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