Project/Area Number |
23K05943
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Koriyama Women's Junior College |
Principal Investigator |
佐々木 達矢 郡山女子大学短期大学部, その他部局等, 講師 (30965116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 豊 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, 非常勤研究員 (00348905)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 互恵性メカニズム / 協力の進化 / 進化ゲーム / 間接互恵性 / アップストリーム互恵性 / ダウンストリーム互恵性 / 直接互恵性 / 社会秩序 / 進化ゲーム理論 |
Outline of Research at the Start |
生物の世界では、助け合いや恩返し、報酬と罰など、様々な互酬的な仕組みが共存し、協力的な関係が保たれている。しかし、互酬性が協力の進化に及ぼす影響の大きさにも関わらず、その多様性を扱えるモデルはこれまで知られていない。 本研究では、多様な互恵性メカニズムを統合する理論的枠組みを新たに提案する。特に、直接互恵性(顔見知り同士の助け合い)、ダウンストリーム型互恵性(良い評判の相手には協力する)、アップストリーム型互恵性(恩を受けたら別の人へ送る)という、主要なメカニズムが初めて統合される。これを基に、互恵性の統合が協力の進化に与える影響と、大規模協調が成立する際の統合の条件やダイナミクスを分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
この研究では、協力の進化に関わる主要メカニズムの中でも、直接互恵性と間接互恵性、特にはダウンストリーム型互恵性、及びアップストリーム型互恵性という、異なる互恵性メカニズムを統合する新しい理論枠組みの開発に取り組みました。この理論枠組みは、大規模で安定的な多様性社会の進化を理解するための強力なツールとなることが期待されます。主要な研究成果には、国際学術雑誌Gamesにおける2件の論文発表が含まれ、それぞれが間接互恵性理論の新たな側面を明らかにしました。 特に、メインモデルの成果を発表した、Sasaki et al. (2024. The Evolution of Cooperation and Diversity under Integrated Indirect Reciprocity. Games, 15(2), 15) では、従来の間接互恵性の理論研究では見られなかった、全面裏切り戦略と協力的互恵性戦略との安定的な平衡点を発見することができました。 また、もう一方の、Uchida et al. (2024) では、理論研究でこれまで課題であった、アップストリーム型互恵性の進化困難性について、プロスペクト理論に基づいた認知的歪みを考慮することで解消されることを、初めて示しました。 また、2024年の夏にオーストリア・ウィーン大学で開催される国際会議Mathematical Models in Ecology and Evolution(July 15-18, 2024, Vienna, AUSTRIA)での発表も既に受理されており、学術界における新しい潮流をもたらすことが期待されています。これらの成果は、多様な構成員からなる社会が協力的かつ包摂的に進化する可能性の理解を深めるものであり、今後のさらなる研究の発展が期待されています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由から概ね順調に進展していると判断する。 ・まず、今回のプロジェクトのメインの一つである、アップストリーム型とダウンストリーム型の間接互恵性を統合する理論について、モデルの構築と分析を予定通り進めることができている。そして、その結果についても国際的なジャーナルから出版することができている。 ・アップストリーム型の間接互恵性については、プロスペクト理論を考慮することにより、従来の理論的予測に比べ進化可能性が改善することが確認できた。 ・また、引き続く、直接互恵性との統合に関しては、コストのかかる懲罰的アクションを導入した分析が進んでおり、概ね予定通りである。 ・加えて、一般的なN人ゲームへの拡張についてもモデリングが進んでおり、互恵性メカニズムの一般的な統合モデルの構築に資するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究においては主に以下の点について推し進める予定です。 ・まず、間接互恵性の進化の数理的研究において、2者間givingゲームのレプリケータダイナミクスにおいて現れる内部平衡点の特異的な連続体の解消は、これまで大きな理論的な課題の一つであった。今回のメインモデルにおいても同様な特異点の連続体が観察されており、引き続きレプリケータダイナミクスの解析を推進し、本研究の理論的基盤の強化を図ります。 ・我々はこの課題に対して、Sasaki et al. (2024) ではアセスメントルールの高度化で対応してましたが、今後は別の角度(公共財ゲームなど多人数ゲームへの拡張等)からも分析を行います。 ・上記のような多人数ゲームへの拡張を考慮することは、これまで計画していた直接互恵性との統合モデルの構築に際して、より多様なインセンティブ要素(rewardsとpunishments等)へモデルを拡張することを可能にします。これにより、既存研究(インセンティブ付き公共財ゲームモデル等)との大きなシナジー効果が期待されます。 ・そして、解析的手法に加えて、エージェントベースシミュレーションによる数値計算的アプローチにより、行動や評価ルール集合の網羅的分析や、ネットワーク互恵性メカニズムとの統合、多様なルールで構成される生態系モデルへの拡張などに取り組む予定です。
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