Project/Area Number |
23K05968
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 46010:Neuroscience-general-related
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
堀 哲也 沖縄科学技術大学院大学, 細胞分子シナプス機能ユニット, グループリーダー (70396703)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | シナプス / 神経伝達物質 / シナプス小胞 / 中枢神経系 / パッチクランプ |
Outline of Research at the Start |
中枢神経系のシナプス放出部位においては、シナプス小胞は神経伝達物質を開口放出した後、エンドサイトーシスによって回収され、開口部位へとリサイクリングされる。リサイクリングの過程でシナプス小胞は神経伝達物質を最充填し、新たな開口放出に備える。小胞への神経伝達物質充填に必要な時間は小胞の再利用に必要な時間を規定しシナプス伝達強度を修飾しうる可能性があるものの、測定の困難さが技術的制約となり詳細な研究が行われていない。本研究課題では、神経伝達物質充填速度の普遍性、あるいは部位特性を解明することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
シナプス結合は神経ネットワークの最小単位であり、計算機としての脳の基本素子である。シナプス結合部においては、前シナプス終末は神経細胞の電気信号を化学信号に変換し後細胞に情報伝達を行う重要器官である。特に、化学シナプスにおいて化学伝達の根幹を担う超微細構造であるシナプス小胞は、神経情報処理の素量、つまり「1bit」に相当し、その正確な信号伝達の理解はブレインコンピューティング解明に必須である。このため本研究課題では、海馬や小脳回路を構成する様々なシナプスで、個々のシナプスにおける神経伝達物質のシナプス小胞への取り込み時間を組織、部位ごとに個別に測定し、シナプス素量成立時間の神経伝達への影響を直接観察することで、素量成立時間がシナプス伝達強度を変動させる可能性とその多様性を解明し、生理学的意義を理解する事を最大の研究の目的とする。 研究実施計画としては、上に述べた海馬と小脳における主要細胞間のシナプスにおいて、シナプス前終末での素量成立時間の計測と、その生理学的意義を解明する研究計画を立案し研究活動を実施した。具体的には、電気生理学的手法と光学的手法を組み合わせて用い、神経伝達における素量成立時間の重要性について研究を遂行した。特に、発現するグルタミン酸輸送体のほぼすべてが1型グルタミン酸輸送体である海馬での素量成立時間の測定を、本研究課題における最優先事項と定め、重点的に遂行した。 この研究目的を達成するため、令和5年度においては、海馬オータプス培養細胞系における素量成立時間計測技術の確立と安定化を目指した実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は特に、海馬オータプス培養神経細胞実験系の確立に主眼をおいた研究計画を実施した。海馬オータプス培養細胞でシナプス前終末―後細胞同時パッチクランプ電気記録を適用し、シナプス前終末細胞質中に光分解伝達物質を導入し、電気生理学的手法と光学的手法を組み合わせて、神経伝達におけるシナプス素量成立時間を計測する実験方法の確立を行った。1型グルタミン酸輸送体を主に発現する海馬シナプスでの実験系を確立する事で、脳幹でのこれまでの研究知見と、小脳や海馬のそれぞれのシナプス間における神経伝達物質充填速度を比較し、●素量成立時間は部位を超え均一なのか、それとも部位特異的に異なるのか、●脳幹で得られた1型グルタミン酸欠損シナプスにおける研究結果を踏まえ、素量成立時間決定の主要因は発現する輸送体のイソ型に依存するのか、それとも単位小胞あたりの発現数に依存するのか、また、●素量成立時間の不均一性の生理学的な意義とはなにかを考察し、検討する目的で研究を遂行した。 より具体的には、令和5年度においては、海馬オータプス培養技術の安定化を目的とした実験を行った。培養技術の開発においては、当初の研究協力機関である福岡大学との共同研究に加え、オータプス神経細胞培養の卓越した技術を持つシャリテーベルリン医科大学神経生理学研究室の協力のもとオータプス培養条件の安定化の件等実験を行った。オータプス培養技術では、培養細胞の足場となるマイクロアイランドの安定した生成が重要であるが、シャリテー ベルリン医科大学神経生理学研究室が持つマイクロアイランドスタンプ技術を導入する事で、マイクロアイランドの安定化と、培養神経細胞の数や健康状態、生成するシナプスの数を適正に制御できる培養条件を整備した。 この進捗状況をふまえ、研究代表者は本研究課題が当初の計画どおりおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度以降は引き続き海馬オータプス培養神経細胞での研究を継続しつつ、小脳及び海馬回路を構成する異なるシナプスの計測技術確立を進め、申請者が既に報告した脳幹における素量成立時間との比較を試み、神経伝達物質充填速度の部位特異性とその生理学的意義の解明を継続して遂行する計画である。 まず第一に、令和5年度の研究計画において確立したオータプス培養細胞技術を用い、シナプス前終末―後細胞同時パッチクランプ電気記録を行い、シナプス前終末細胞質中に光分解伝達物質を導入し、電気生理学的手法と光学的手法を組み合わせて、神経伝達におけるシナプス素量成立時間の計測を行う計画である。 第二に、オータプス培養海馬神経細胞以外のシナプスにおける電気生理学的実験計画の実施に向けて更なる研究計画の推進を目指す。具体的には、小脳や海馬のス急性ライス標本を用い、小脳苔状巨大神経軸索終末ー顆粒細胞間シナプス、あるいは海馬苔状繊維巨大軸索終末ーCA3野錐体細胞間シナプスにおける当該実験手法の確立を目指す。 これらの実験手法を確立することで、脳幹でのこれまでの研究知見と、小脳や海馬のそれぞれのシナプス間における神経伝達物質充填速度を比較し、●素量成立時間は部位を超え均一なのか、それとも部位特異的に異なるのか、●脳幹で得られた1型グルタミン酸欠損シナプスにおける研究結果を踏まえ、素量成立時間決定の主要因は発現する輸送体のイソ型に依存するのか、それとも単位小胞あたりの発現数に依存するのか、また、●素量成立時間の不均一性の生理学的な意義とはなにかを考察し、検討することを今後の研究の推進方策の最大の目標とする。 なお、本研究計画目標の達成が困難である場合、シナプス素量成立時間の観察に留まらず、シナプス素量決定に寄与するシナプス小胞動態に関する様々な因子の観察の研究の実施も視野に入れ、研究課題を推進する予定である。
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