Project/Area Number |
23K06107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47030:Pharmaceutical hygiene and biochemistry-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
浅野 真司 立命館大学, 薬学部, 教授 (90167891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 高徳 立命館大学, 薬学部, 助教 (70844281)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 線毛運動 / 上衣細胞 / 脳機能 / 線毛 |
Outline of Research at the Start |
脳室表面を覆う上衣細胞は運動性の線毛をもち、脳脊髄液(CSF)を流動させる。老化にともなって線毛運動の低下が起こるとCSFが滞留して脳クリアランスが低下し、脳機能低下のリスクが上昇する。本研究では、上衣線毛運動を活性化する化合物を探索し、脳機能を改善させる可能性について検証する。①新生仔マウス脳から未分化なグリア細胞を調製し、フィルター上で無血清培養して、線毛を持つ上衣細胞に分化させる。②高速度カメラで線毛運動を観察する。③候補化合物を添加して、線毛運動を活性化する物質を探索する。④線毛運動の促進物質を高齢マウスに投与し、自発行動量の変化を通じて脳機能改善を評価して、脳機能改善薬の開発を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
脳脊髄液(CSF)は脳室内の脈絡叢で作られて、脳や脊髄内を循環して毛細血管に吸収され、この間に有害物質の除去や神経細胞の栄養化などに働く。脳室の内表面を覆う上衣細胞は、その細胞表面には多数の線毛があり、線毛運動はCSFを流動させて脳・脊髄の環境維持に働く。老化にともなってCSF産生量や線毛運動の低下が起こると、CSFが滞留して脳クリアランスが低下し、認知症をはじめ脳機能低下のリスクを上昇させるという報告がある。従って、フレイルや老化などによって線毛運動が低下しても、薬物で運動機能を活性化させて、CSFの流動性、クリアランスを高めることによって、脳・脊髄の環境を良い状態に保ち、脳機能の低下を防ぐことが期待できる。これに対して、本研究では簡便に線毛運動を観察するために、マウス脳由来の上衣線毛細胞の初代培養系を構築して、最適化する。さらに、高速度カメラで線毛運動を観察し、線毛運動の指標として周波数を計測する系を開発する。候補化合物を還流液に添加して、線毛運動を活性化する物質を探索する。このように化合物を検索し、線毛運動を活性化する化合物や内因性の因子を探索・同定する。さらに、化合物の線毛運動活性化に至る分子機構を明らかにする。最後に、高齢マウスに対して上記の線毛運動を活性化する候補化合物を投与して、行動量の変化を通じて脳機能改善を評価する。このような形で、新規の脳機能改善薬の創出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はマウス脳室上衣線毛細胞の分化および運動を阻害する因子の探索を行った。実験系として平尾らが確立した培養系を用いた(Hirao et al. Biol. Pharm. Bull. 46: 111-122, 2023)。新生仔マウスの脳をトリプシンおよびDNaseで酵素消化して分散させ、未分化なグリア細胞を調製した。これをウシ胎仔血清(FBS)の存在下で増殖させた後に、多孔性のフィルター(Transwell)上において3週間極性培養した。Upperチャンバーを無血清状態にすると、a-チューブリン抗体で染色される線毛を持つ細胞に分化した。線毛細胞を培養したフィルターを切り出してマイクロチャンバーにセットして、溶液を灌流し、高速度カメラと接続した倒立顕微鏡で線毛運動を観察した。線毛運動を画像解析して、線毛運動のパラメーターとして運動周波数(CBF)を測定して定量化した。灌流液に候補化合物を加えて線毛運動に対する影響を観察した。 候補化合物のうちで、アデノシンを灌流液に加えたところ、濃度依存的に線毛運動の活性化(CBF値の上昇)が観察された(ED50, 5 uM)。この線毛運動の活性化は、アデノシンA2B受容体に対するアンタゴニスト(MRS1754)によって特異的に阻害された。また、A2B受容体に対する抗体を用いて蛍光抗体染色を行ったところ、A2B受容体は線毛上に発現することが確認できた。さらに、アデノシンによる線毛運動の活性化はプロテインキナーゼA(PKA)に対する阻害剤を加えることによって消失した。以上のことから、アデノシンは線毛上に発現するA2B受容体と結合し、PKAを介したシグナル伝達経路を経て、線毛運動を活性化することが明らかになった。この研究成果を取り纏めて論文発表した(Kawaguchi et al. Biol. Pharm. Bull. in press)。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、線毛運動を活性化させる化合物の探索を行う。アデノシンとは別にアドレナリン誘導体を灌流液に加えた場合にも、濃度依存的に線毛運動の活性化が観察された。この線毛運動の活性化は、アデノシンbeta2受容体のアゴニストによって増強されて、アデノシンbeta受容体のアンタゴニストによって阻害された。今後の実験では、誘導体の構造活性相関や、細胞内のシグナル伝達経路について検討を進める。 一連の化合物の探索ののち、3年目を目処に、線毛運動の活性化物質を高齢マウスに投与し、自発行動量の改善を評価する。24週齢の高齢マウスを対象にして、オープンフィールドテストや十字迷路テストなどを行って自発的な行動量を測定する。脳室上衣線毛運動を活性化する候補物質の脂溶性や脳内への移行性を考慮して経口、腹腔内、または脳室内に投与して、運動機能の改善を評価する予定である。
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