Project/Area Number |
23K06287
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47060:Clinical pharmacy-related
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
小川 裕子 帝京平成大学, 薬学部, 准教授 (30267330)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 細胞外小胞 / 唾液 / LPS / マクロファージ / DPP IV / extracellular vesicles / saliva / macrophage / exosome |
Outline of Research at the Start |
ヒト唾液由来の細胞外小胞(LPS/DPP IV-EVs)は、免疫関連分子(DPP IV)と口腔内細菌由来エンドトキシン(LPS)を含有する。本EVsによるマクロファージ活性化は抑制されているが、EVs表面の外層(ムチン層)除去により活性化が惹起された。このことから本EVsは、口腔内では免疫作用を抑制し、腸管内ではムチン層が消化されて免疫賦活化作用を発現する新しい免疫調節機構を有する可能性が示唆された。 そこで本研究では、LPS/DPP IV-EVsの免疫系に対する機能を解明し、培養細胞株由来DPP IV発現EVsを人工唾液に添加することで、免疫賦活化作用を有する次世代型人工唾液の開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、申請者が見出したヒト唾液由来の細胞外小胞(EVs)による免疫賦活機構を解明し、本EVsおよびその構成成分を利用して、免疫賦活化作用を有する人工唾液を開発することを目的としている。本EVsは口腔内細菌の成分(LPS)および免疫活性化因子(ジペプチジルペプチダーゼIV;DPP IV)を含有する(LPS/DPP IV-EVsと称する)。本EVsのLPSによるマクロファージ(Mφ)活性化による一酸化窒素(NO)産生は抑制されていた。そこで、本EVsに存在するLPS結合タンパク質(LBPs)を同定し、NO産生抑制に関連するタンパク質を同定した。このNO産生抑制は、誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現抑制を介するものであった。一方、本EVsの外層を除去してDPP IVを露出させたEVのMφ活性化への影響を検討したが、NO産生に関しては効果が認められなかった。しかしながら本EVsのDPP IVが中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスのスパイクタンパク質に結合することから、DPP IVは感染防御に寄与する可能性が示唆された。 本EVsの細胞に対する影響を検討するために、蛍光標識EVsのMφ内取り込みを検討した。本EVsの細胞内取り込みはナイスタチン添加により半減したことから、カベオラ介在型エンドサイトーシスが半分程度関与することが示唆された。 LPS/DPP IV-EVsをより純度よく得るために、従来のゲルろ過クロマトグラフィーに加えて分画遠心を行った。得られた高純度LPS/DPP IV-EVsのプロテオーム解析で同定された膜タンパク質について、免疫沈降によりEV表面への結合を検討した。DPP IVは本EVsに強固に結合しており、本EVsの指標となることを確認した。得られたプロテオームデータより、今後Mφ活性化に寄与する因子の同定が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LPS/DPP IV-EVによる免疫調節機構の解明を行った。本EVsによるMφ活性化(NO産生)抑制に関わるLBPsとしてBPIFA2、CAP18、DEFA1、他3種のタンパク質を同定した。同定した各LBPsにLPSを結合させてMφに添加した結果、1種類のタンパク質がiNOSを介したNO産生を抑制した。本EVsは消化により外層が除去されると、膜表面のDPP IVが露出するので、EVsの外層除去がNO産生に及ぼす影響を検討した。外層除去LPS/DPP IV-EVsをMφに添加したが、NO産生能は外層除去前と比較して変化しなかった。しかしながら、本EVsのDPP IVはMERSコロナウイルスのスパイクタンパク質に結合したことから、デコイの受容体として感染防御に関わる可能性が示唆された。 本EVsの細胞への取り込み機構を解明するために、EVsを蛍光標識し、Mφへの取り込みを解析した。カベオラ介在型エンドサイトーシスを阻害するナイスタチンをLPS/DPP IV-EVsと共にMφに添加すると、EVsの細胞内取り込みが半減したことから、MφによるEVs取り込み経路の半分程度はカベオラ介在型エンドサイトーシスが関与することが示唆された。 ヒト唾液をゲルろ過クロマトグラフィー後に分画遠心し、得られた高純度LPS/DPP IV-EVsのプロテオーム解析を行った。同定された膜タンパク質について免疫沈降で結合を検討した。DPP IVは本EVsに強固に結合しており、唾液からDPP IV-EVsを免疫沈降により直接抽出できた。従って、DPP IVは本EVsを特徴づける分子であり、生体防御の観点からも人工唾液に必須の機能を有すると考えられた。 免疫活性化については当初の予測とは異なっていたが、別の活性化因子を見いだせるプロテオームデータが得られているので、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度以降は、NO産生を抑制するLBPsのLPS/DPP IV-EVs中での存在状態および安定性の解析を行う予定としている。同定したNO産生を抑制するLBPsの機能発現およびその持続時間は、LPS/DPP IV-EVsとの結合状態が重要な因子となる可能性が高い。本EVsとLBPsの結合性を免疫沈降法またはELISA法で解析し、EVsの外層にあるか、強固に結合しているかを明らかにする。LPS/DPP IV-EVsは唾液中から消化管内に移行し、そこで機能を発揮する可能性があるので、LPS/DPP IV-EVsを消化酵素(ペプシン/パンクレアチン)処理し、NO産生抑制LBPsの消化管内での安定性を検討する。 LPS/DPP IV-EVsの人工唾液への利用を検討するために、同様の機能を有するEVsの大量調製を試みる。既に、ヒト結腸癌由来培養細胞株Caco-2細胞からDPP IV発現EVsが培地中に分泌されることを確認している。Caco-2細胞由来DPP IV-EVsは培養細胞由来でLPSを含まないので、本EVsにNO産生を抑制するLBPsおよび外層タンパク質が発現していればLPSを添加後、エンドトキシンアッセイによりLPS結合能を評価する。発現していない場合はトランスフェクション法による強制発現を検討する。 唾液から本EVsをより純度よく高く得られる方法を構築し、プロテオーム解析を行った。免疫活性化作用についてはDPP IVによる寄与が確認されていないので、プロテオームデータから新たに候補となる分子を抽出する。実際にMφ活性化に寄与する分子が得られたら、培養細胞由来LPS/DPP IV-EVsでの発現を試みる。これまでは膜表面に存在するタンパク質について主に検討してきたが、今後は含有成分としてRNAにも着目して解析を行う予定である。
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