成長因子に着目した胃壁細胞におけるエストロゲン産生機構のシグナル解析
Project/Area Number |
23K06314
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48010:Anatomy-related
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小林 裕人 山形大学, 医学部, 准教授 (40588125)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 胃 / 壁細胞 / Aromatase / エストロゲン / TGFα / アロマターゼ |
Outline of Research at the Start |
胃酸分泌を担う壁細胞は女性ホルモンであるエストロゲンも産生していることが知られており、その役割は血中脂質の調整であることが示唆されている。一方、エストロゲンは胃癌関連因子の一つであることが報告されており、胃癌の進行や予後への影響が考察されている。このように胃におけるエストロゲン産生は幅広い波及効果が期待されるが、その実態、とりわけ発現調節機構については未だ明らかとなっていない。このことから、本研究は胃で合成分泌されるエストロゲンの医学的意義のさらなる解明のため、制御因子やシグナル経路を培養細胞株や実験動物を用いて探索することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
壁細胞はAromataseを有し、エストロゲンを多量に産生する。女性ホルモンとして知られるエストロゲンは胃癌関連因子の一種であることに加え、胃で産生されるエストロゲンは血中脂質の調整役であることも示唆されており、胃におけるエストロゲン産生は幅広い波及効果が期待される。しかしながら、その制御因子や発現調節機構については未だ明らかとなっていない。本研究は胃で産生されるエストロゲンの医学的意義のさらなる解明のため、制御因子やシグナル経路を探索することを目的とした。 ラットの生後発生過程において胃のAromataseは生後20日齢頃から発現し始めることが知られている。そこで、16日齢から21日齢までTransforming Growth Factor Alpha (TGFα) を腹腔内投与したところ、対照群と比較して胃のAromatase発現が亢進し、リン酸化Extracellular signal Regulated Kinase (ERK) 1/2も増強されることが明らかとなった。また、胃粘膜上皮におけるTGFα発現を経時的に観察した結果、Aromataseと同時期の20日齢から発現し始め、40日齢まで持続することが確認された。さらに、TGFαが結合するEpidermal Growth Factor Receptor (EGFR) の阻害剤を16日齢から24日齢まで投与した結果、胃のAromatase発現が抑制された。 以上の結果から、生後発生過程における壁細胞のAromatase発現は、20日齢頃に胃粘膜上皮に発現し始めるTGFαがEGFRに結合することによって惹起されることが示され、そのシグナル経路はMitogen-activated Protein Kinase (MAPK) によって制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生後発生ラットを用いたTGFαによるAromatase制御機構の機序解明は、その阻害剤の影響も含めて概ね良好な結果を得ることができ、本研究結果はInternational Journal of Molecular Sciences誌に掲載された。既にTGFαは胃底腺幹細胞の表層粘膜細胞への分化、成長を誘導することが報告されているが、本研究結果からTGFαは壁細胞の分化やAromataseの発現にも関与していることが示唆された。 一方、TGFαは胃底腺峡部に存在する幹細胞からオートクライン、パラクラインで作用するとされているが、生後20日齢頃のTGFα発現が何によって惹起されているのかは未だ明らかではない。また、TGFα投与による胃のAromatase発現の惹起が間接的な、生体全体の成長促進の結果である可能性も考えられる。さらに、ヒト胃癌由来細胞株MKN45を用いたin vitroの研究では有用な結果が得られておらず、シグナル経路の解析はin vivoの結果をもってMAPKシグナル経路と推察するに留まっている。 これらのことから、胃のAromatase発現の制御因子の端緒を得たことで一定の成果を得ることができたものの、未だ不明な点が残されていることから、今後もさらなる探求を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
生後発生過程において胃粘膜上皮のTGFα発現は早期離乳によって促進されることが報告されている。ラットにおいて生後20日齢は離乳時期であり、早期離乳は母ラットから授乳期にある仔ラットを強制的に離隔し、固形飼料を与える実験系である。これまでの結果から、早期離乳によって胃粘膜上皮のAromatase発現も惹起されることが推察される。また、強制的な離乳によって胃のTGFαやAromataseの発現が惹起されるのであれば、これらの制御因子の一つに胃への機械的な刺激が考えられる。 以上の推考から、今後の研究の推進方策として引き続き生後発生ラットを用い、早期離乳や強制授乳など離乳時期を調整することによる胃への機械的刺激がAromatase発現に及ぼす影響を検討したい。また、成体ラットを用いて、絶食に伴う胃のAromatase発現と産生されるエストロゲン量の検討に加え、栄養価を含まない固形食等で機械的刺激を与えることも検討中である。また、in vitroでの実験系も引き続き行い、胃に発現するAromataseのプロモーター解析も検討中である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)