Project/Area Number |
23K06358
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48030:Pharmacology-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
永井 裕崇 神戸大学, 医学研究科, 助教 (30814587)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ストレス / うつ病 / 中央代謝系 / シナプス / 前頭前皮質 / マウス / うつ病モデルマウス / 内側前頭前皮質 |
Outline of Research at the Start |
社会や環境より受ける過度のストレスは脳内において炎症性サイトカインやストレスホルモンの亢進による認知情動変容を生じうつ病のリスクとなる。しかし、これらの分子が神経細胞内部の分子シグナルや代謝、神経グリア相互作用を介して局所・広域神経回路を変容させる機序は殆ど不明である。本研究においては超微細な細胞生物学的解析とマルチオミクス解析を組み合わせることにより、脳代謝リモデリングの実態と機序、意義を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
社会や環境より受ける過度のストレスは脳内において炎症性サイトカインやストレスホルモンの亢進による認知情動変容を生じうつ病のリスクとなる。しかし、これらの分子が神経細胞内部の分子シグナルや代謝、神経グリア相互作用を介して局所・広域神経回路を変容させる機序は殆ど不明である。本研究では、マウスうつ病モデルである社会挫折ストレスモデルを用いて前頭前皮質に生じる代謝変化の実態や意義、そして機序を解明することを目的とする。今年度は質量分析イメージングを行い、ストレスによる認知情動変容の程度と酸化還元分子の発現量が相関することを見出した。前頭前皮質における糖輸送体の発現抑制によりストレスによる認知情動変容が抑制できることは既に見出していたが、同操作によりストレスによる酸化還元分子の発現量変化が抑制できることを新たに見出した。これらの知見は、ストレスによる脳代謝リモデリングがレドックスバランスを変化させ認知情動変容を招くことを示唆する。さらに、ミクログリア選択的に蛍光タンパクを発現する遺伝子組み換えマウスを用い、神経細胞の糖輸送体発現抑制を行った上でミクログリア特異的なトランスクリプトーム解析を実施することで、神経細胞における代謝変容がミクログリア活性化の一部を担うことも見出しつつある。また、また、並行して実施した解析によりストレスが骨髄や脾臓において免疫細胞の動態変化を生じる際に、抗炎症性脂質メディエーターの減少を伴うことを明らかにした。今後は、代謝変容によるレドックスバランス破綻やミクログリア活性化が担う意義や機序の解明を進め、代謝に基づく新規の抗うつ薬創薬標的候補の創出に資する研究を展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においてはストレスにより前頭前皮質に生じる中央代謝系変化の実態とその機序、さらには中央代謝系変化が局所・広域神経回路に与える影響とその機序の解明を行う。本年度は質量分析イメージングと脳領域特異的遺伝子発現操作を組み合わせることにより、ストレスによる中央代謝系変化がレドックスバランスの破綻を介して認知情動変容を生じる可能性を示唆することができた。また、ストレス病態において脳内炎症の重要性が指摘されてきたものの、代謝変容と脳内炎症の間の関連性は不明であった。ミクログリア特異的なトランスクリプトーム解析により前頭前皮質神経細胞の代謝変化が同領域のミクログリア活性化に寄与することを見出すことができた。この知見は、ストレス病態における神経-代謝-炎症軸の重要性を世界に先駆けて示唆するものである。シナプスとミクログリアの間の相互作用についても画像解析系を立ち上げ、慢性ストレスによりシナプス-ミクログリア間相互作用の亢進を見出しつつある。 また、並行して実施した解析によりストレスが骨髄や脾臓において免疫細胞の動態変化を生じる際に、抗炎症性脂質メディエーターの減少を伴うことを明らかにした(J Pharmacol Sci 2024)。 脳領域特異的な代謝解析の結果に基づき、前頭前皮質と海馬がストレスにより共通の代謝変化を示すことに着想を得て、同回路特異的に糖輸送体の発現抑制を実施したところ、ストレスによる認知機能低下を抑制することができた。すなわち、特異的神経回路における代謝変容がストレスによる行動変化を担うことを示唆することができた。 以上の理由により、本研究は当初の計画通り順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレスによる代謝変容がレドックスバランスの破綻を生じることを見出したものの、その病態における意義は不明である。従って本年度はレドックスバランスを正常化することが知られる分子操作を行い、ストレスによる認知情動変容が抑制できるか調べる。また、ストレスによる代謝変容を担う機序として、糖質コルチコイドホルモンの関与が予想される。従って糖質コルチコイドホルモンの受容体を薬理学的に阻害し、認知情動変容や脳代謝変化に与える影響を調べる。 また、神経細胞の代謝変容がミクログリア活性化の一部を担うことは見出されたものの、その全容は未だに不明である。パスウェイ解析や遺伝子オントロジー解析、タンパク-タンパク相互作用解析などを行い、ミクログリア活性化における代謝変容の意義について解明を進める。ストレスによりシナプス-ミクログリア間相互作用が亢進することを見出したので、糖輸送体発現抑制も組み合わせて同解析を実施し、シナプスーミクログリア間相互作用における代謝変容の意義を明らかにする。 以上の計画に基づき、ストレスによる脳代謝リモデリングの実態とその機序、意義の解明を推進する。
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