Project/Area Number |
23K06372
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48030:Pharmacology-related
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
坪田 真帆 近畿大学, 薬学部, 講師 (90510123)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | シュワン細胞 / 血液凝固因子 / 神経障害性疼痛 / トロンビン / HMGB1 / 血液凝固系因子 |
Outline of Research at the Start |
がん化学療法や糖尿病で高頻度に認められる神経障害性疼痛(NP)の機序は不明な点が多く、効果的な治療法も確立されていない。NPの発症にシュワン細胞(SC)が形成する髄鞘の損傷、すなわち脱髄が関与するが、最近、脱髄後のSCにおいて数種の血液凝固因子の発現が増加することが示された。我々の研究室において血液凝固の最終段階で働くトロンビンがNPを抑制的に調節しているとの知見を得ていることから、本研究では、SCにおける凝固系因子の発現量と酵素活性の変化が、NPの発症および持続にどのように関与するのかを解明することで、抗がん剤治療の継続や糖尿病の合併症軽減に有効な新しい治療戦略を提案したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
がん化学療法の副作用や糖尿病の合併症として高頻度に発症する神経障害性疼痛(neuropathic pain, NP)は、その発症メカニズムが明らかになっておらず有効な治療薬もほとんどない。我々は、抗がん剤のパクリタキセルやオキサリプラチンなどによる化学療法誘起末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy, CIPN)の発症に、マクロファージやシュワン細胞(SC)などから細胞外へ放出される核内タンパクhigh mobility group box 1(HMGB1)が寄与することを報告しており、また最近、血液凝固第Ⅱ因子のトロンビン(TB)が、血管内皮細胞に発現するトロンボモジュリン(TM)と協働して、細胞外に放出されたHMGB1を分解することでCIPNの発症を抑制的に調節していることを見出した。さらに、TBの受容体であるプロテアーゼ活性化受容体-1(protease-activated receptor-1, PAR1)の活性化は、炎症性疼痛に対して抑制的に働くことも示されている。これらの知見から、TBは痛みに対して抑制的に働いていることが強く示唆される。興味深いことに、マウスの坐骨神経や培養SCでは、血液凝固因子のプロトロンビン、第Ⅶ因子(FVII)、FX、組織因子(TF)の発現が認められ、また、損傷した神経組織ではTB活性が劇的に増加することが示されている。本研究では、各種抗がん剤や高血糖に暴露した培養SCおよびNPモデルマウスを用いて、SCにおけるTBを含む凝固系因子の発現量と酵素活性の変化が、NPの発症および持続にどのように関与するのかを解明するため、その変化と下流の標的分子、寄与する細胞、細胞内シグナルについて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初めに、培養シュワン細胞(SC)として新生ラット坐骨神経(rat sciatic nerve, rSN)から単離したSC(rSN-SC)および新たに購入したマウス由来SC株IMS32細胞を用いて、抗がん剤のパクリタキセル、オキサリプラチン、ビンクリスチン(VCR)の各種血液凝固因子および成熟SCマーカーのmyelin basic protein(MBP)のmRNA発現量に対する効果、およびHMGB1の細胞外放出を検討した。その結果、rSN-SCではいずれの抗がん剤によってもHMGB1の細胞外放出の増加、MBP発現低下、組織因子(TF)の発現増加が見られた。IMS32細胞においてもVCR刺激によりHMGB1放出の増加傾向が見られた。これらの結果より、抗がん剤処置はSCの脱分化を誘導するとともにHMGB1放出と凝固系カスケードの促進を引き起こすことが示唆された。 VCR刺激によりSCから放出されたHMGB1を含む細胞上清にトロンビン(TB)を添加して37℃でインキュベートすると、Western blot法で検出したHMGB1の通常のサイズの27 kDaのバンドはTBの濃度依存性に減少し、逆にその分解産物である低分子の位置のバンドが増加したことから、TBが実際にSC由来のHMGB1を分解することが確認できた。 マウスを用いた実験では、単独では化学療法誘起末梢神経障害(CIPN)を発症させない用量のVCRを反復投与する際に、TB阻害薬のアルガトロバンを投与すると顕著なCIPNの発症が見られたことから、このモデルでも内因性のTBはCIPN発症を抑制的に調節していることが示唆された。一方、TBの受容体PAR1の阻害薬ボラパクサールは、VCRによるCIPNに対して増悪も抑制も示さなかったことから、TBによるPAR1活性化はVCRによるCIPN発症の調節には寄与しないことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
シュワン細胞(SC)を用いた実験において、パクリタキセル(PCT)、オキサリプラチン(OHP)、ビンクリスチン(VCR)などの抗がん剤刺激により成熟SCのマーカーであるmyelin basic protein(MBP)のmRNAが有意に減少し、脱分化が起きていることが示唆されたことより、次に、これら抗がん剤を投与して神経障害性疼痛(NP)を発症したマウスの坐骨神経におけるMBP発現量をRT-PCR法、Western blot法および蛍光免疫染色法などにより測定し、培養SCと同様にマウス坐骨神経のSCにおいても脱分化が起きるのかを検討する。 予備実験において、SCをPCT、OHPあるいはVCRで刺激すると外因系の血液凝固カスケードの引金となる組織因子(TF)の有意なmRNA増加が見られ、さらに、TFがHMGB1と同様に細胞外へ放出されることを示す知見が得られたことから、マウスの坐骨神経におけるTFの発現量におよぼす各種抗がん剤投与の影響を検討する。明らかなTF発現量の増加が認められた場合は、マウスの血漿に坐骨神経のホモジネート上清を添加し、TB活性におよぼす影響についてTBの蛍光基質Boc-Asp(OBzl)-Pro-Arg-AMCを用いて検討を行う予定である。 培養SCを用いた実験では、各種抗がん剤刺激による核内タンパクHMGB1の細胞質移行を蛍光免疫染色法により観察しており、明らかなHMGB1の細胞質移行の増加が見られた系についてTBの効果を検討する。新規購入したIMS32細胞における検討があまり進んでいないため、これまでラット坐骨神経から単離したSCで検討したものと同じ実験をIMS32細胞で行っていく予定である。
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