Project/Area Number |
23K06445
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49020:Human pathology-related
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小山内 誠 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60381266)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | ビタミンA / レチノイン酸 / レチノイン酸代謝酵素CYP26 / 星細胞 / 腎メサンギウム細胞 / 糖尿病 / 糖尿病腎症 / 腎 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,腎星細胞である糸球体メサンギウム細胞を起点に,糖尿病性腎症の発症や疾患の進行を制御する基盤病態の理解をめざす.糖尿病では,レチノイン酸を枯渇する腎糸球体内で,活性化メサンギウム細胞が誕生する.その結果,血管内皮細胞とメサンギウム細胞で構成される星細胞機能ユニット内で,毛細血管にあるタイト結合のバリア機能異常がおこる.そのため,血管透過性が亢進し,滲出性病変を形成する.進行期では,メサンギウム細胞は,過剰な細胞外マトリックスを産生し,最終的に糸球体硬化症に至る.そこで,本申請では,糖尿病におけるメサンギウム細胞の機能異常を理解し,新しい治療戦略と予防法を創出するための基盤的情報を得る.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,腎糸球体メサンギウム細胞の機能異常が,糖尿病腎症の根本的な原因と考え,メサンギウム細胞を標的として,糖尿病腎症の発症機序を明らかにし,病態の進行を抑制する治療法の開発をめざす. レチノイン酸前駆物質であるビタミンAの約80%は,全身のビタミンA含有細胞,すなわち,星細胞に貯蔵されている.この細胞の働きは,細胞内レチノイン酸量に依存し,レチノイン酸欠乏状態で多様な病態をひきおこす.例えば,糖尿病では,レチノイン酸を枯渇する腎糸球体内で,活性化メサンギウム細胞が誕生する.その結果,血管内皮細胞と星細胞からなる機能ユニット内で,毛細血管にあるタイト結合のバリア機能異常がおこる.そのため,血管透過性が亢進し,糖尿病腎症の初期病変である糸球体内滲出性病変を形成する. これまでの実験結果から,1) 糖尿病腎症では,腎糸球体内のレチノイン酸が欠乏し,2) レチノイン酸不足の原因のひとつにレチノイン酸代謝酵素CYP26A1の発現異常があり,3) その結果,メサンギウム細胞を中心とする血管内皮細胞・星細胞機能ユニットへ影響を与え,血管内皮細胞のバリア機能の異常をひきおこす,との知見を得た. これまで,星細胞は,いわば,「脇役」であった.しかし,レチノイン酸を用いて,星細胞を起点に腎糸球体の機能異常を理解する試みは,これまで類がなく,さまざまな疾患病態を直接制御する「主役」の可能性がある.また,星細胞を中心とする機能ユニット全体を薬理学的に制御する戦略は,チャレンジ性の高い研究プロジェクトである.本年度以降も研究課題を継続し,糖尿病におけるメサンギウム細胞の機能異常を理解し,新しい治療戦略と予防法を探索したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の開始前に,すでに入手済みの腎メサンギウム細胞は,試験管内実験において,申請者の作業仮説と異なる反応性を示し,追加で予備実験をする必要があった.実際,いくつかの腎メサンギウム細胞は,生理的,および,薬理的濃度のレチノイン酸に対する反応性が乏しく,当該細胞の機能解析は困難であった(現時点で,詳細な原因は不明であり,機構を解析中である).しかし,新たに複数の細胞株の購入し,培養条件の設定や実験計画自体を立て直したため,当初の予定より計画が遅れた.現在,腎由来の血管内皮細胞との共培養系で,実験計画を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を引き続き実施し,糖尿病腎症におけるメサンギウム細胞の機能異常を理解する試みを継続したい.実際,以下の点を明らかにするため,各種の実験計画が進行中である.1) メサンギウム細胞が,血管内皮細胞間のタイト結合をパラクライン機構によって安定化し,血管内皮細胞のバリア機能を制御する分子機構,2) メサンギウム細胞のレチノイン酸不足の原因であるCYP26A1の発現異常と,メサンギウム細胞を中心とする血管内皮細胞・星細胞機能ユニットへの影響,3) レチノイン酸欠乏状態で誕生する活性化メサンギウム細胞の病態生理と,腎星細胞であるメサンギウム細胞の活性化機構の解明は,新しい治療手段を開発するための基盤的情報となる. 本研究室は,「星細胞機能ユニット」の概念を世界で初めて提案した.例えば,血管バリアの破綻に起因する糖尿病網膜症に対し,レチノイン酸投与による網膜星細胞機能の正常化が病状に好転をもたらすことを明らかにし,2件の知的財産権の獲得にも成功した.星細胞を標的とし,糖尿病腎症を治療,または,予防する戦略は,きわめて独創的であり,臨床的に重要である. 全透析患者の40%以上は,糖尿病腎症が原因である.透析を導入する基礎疾患としてもっとも多く,疾患の発症を制御する戦略の創出は,社会的に急務である.糖尿病腎症の初期変化を予防できれば,理論上,病態の進行を予防あるいは遅延化できる. 多くの病気は,一定程度進行してから診断される.しかし,病気によっては,診断できてからでは遅いものがあり,発症前の対策,すなわち,先制医療が求められる.星細胞標的療法は,病態の進行を制御するばかりか,病気の発症前に介入する,いわば,精密医療をめざす予防法である.
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