非結核性抗酸菌症の化学療法で頻発する糖ペプチド脂質の欠失機構と難治化の解明
Project/Area Number |
23K06554
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 49050:Bacteriology-related
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
藤原 永年 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (80326256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 岳彦 独立行政法人国立病院機構近畿中央呼吸器センター, その他部局等, 治験管理研究室長 (20974934)
前田 伸司 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (50250212)
綾田 稔 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (90222702)
中屋 愼 大阪公立大学, 研究推進機構, 客員研究員 (90736886)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 糖ペプチド脂質 / 非結核性抗酸菌 / Mycobacterium abscessus / 血清型 |
Outline of Research at the Start |
非結核性抗酸菌症は、罹患率が上昇傾向にある重篤な慢性呼吸器感染症で、近年、血清型を規定するGPLが欠損した臨床分離株が散見される。菌側因子のGPL欠損が治療中に誘起され、治療や予防に重大な影響を与える。我々は、『抗菌薬ストレスを伴う長期の化学療法により、GPL生合成遺伝子の特定部位で変異が頻繁に起こり、GPL欠損株が出現、形態のrough型化を誘起する。宿主免疫応答機序からの逃避、生体内での長期生存を可能にし、強毒株として淘汰・集約され難治化する』と仮説を立て、①長期化学療法により宿主内でGPL欠損株が本当に頻発するのか、②GPLによる宿主免疫応答からの逃避機序の2点を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
非結核性抗酸菌症は、罹患率が上昇傾向にある重篤な慢性呼吸器感染症である。主要起因菌M. avium, M. intracellulareに加え、M. abscessusの感染が増加している。ワクチンや治療薬の開発など早急な対策が希求される。抗酸菌は、細胞表層が強固な脂質成分に富むことが第一の特徴である。宿主感染時に最初に出会うこれら脂質分子は、宿主感染防御に多大な影響を与える。抗酸菌感染症において細胞表層脂質分子を排除した感染防御論は成立しない。非結核性抗酸菌は、結核菌に存在しない特徴的な糖ペプチド脂質(glycopeptidolipid, GPL)抗原を発現している。 近年、血清型を規定するGPLが欠損した臨床分離株が散見され、由々しき事態である。我々は、『抗菌薬ストレスを伴う長期の化学療法により、宿主内で菌側の変異がGPL生合成の特定部位で頻繁に繰り返され、GPL欠損株が出現し、形態がrough型に変化する。宿主免疫応答機序からの逃避、生体内での長期生存を可能にし、強毒株として淘汰・集約され難治化する』と仮説を立て、順次実証している。本研究において、現段階で未解明な①長期化学療法により宿主内でGPL欠損株が本当に頻発するのか、②GPLによる宿主免疫応答からの逃避機序の2点に焦点を絞り、臨床分離株を用いて解明する。漸増・難治化する非結核性抗酸菌症の動向変化を理解し、GPLを標的とした斬新な脂質免疫学的治療・予防戦略の基礎を提案する。非結核性抗酸菌症の制圧に貢献できる研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1990年代及び2000年以降の非結核性抗酸菌症の起因菌であるMycobacterium avium, M. intracellulareの臨床分離株各100株について培養、アルカリ安定脂質画分の抽出を行い、薄層クロマトグラフィー(TLC)で血清型特異GPLの検出を試みた。2000年以前の臨床分離株に比べ近年の臨床分離株はGPLの検出できない欠損株が優位に上昇していた。近年増加傾向にあるM. abscessus症の臨床分離株で同一患者から分離された形態が異なる臨床分離株が散見し、感染初期のsmooth型菌、治療後期のrough型菌を同一患者臨床分離株として4症例入手した。これら計8株について脂質生化学的解析を網羅的に解析した。死菌体からForch法に準じて総脂質画分、アルカリ加水分解によりミコール酸画分を分取した。種々の展開溶媒系でTLCを実施して、網羅的に2株の差異を検討した。抗酸菌に特徴的なミコール酸はサブクラスがα, α’のみが検出された。ミコール酸糖脂質等には菌株間で優位な差はなかった。そこで、総脂質画分を弱アルカリ加水分解し、アセトン抽出、Sep-pakカラム処理でGPL画分を抽出し、GPLの存否をTLCで確認した。全てのrough型菌がGPL欠損株であることが明らかとなった。GPLは細胞表層に存在する糖脂質抗原であり、smooth型菌が宿主内で化学療法の治療中にGPLが脱落し、形態がrough型菌に変化したことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
M. abscessus rough型菌のGPL欠損原因遺伝子を解析する。我々は、M. smegmatis J15cs株がGPLを欠損していることを既に報告している(PLoS One 10:e0126813;2015)。同様にrtfA遺伝子をターゲットにGPL生合成遺伝子群をクローニングし、smooth型菌、rough型菌のGPL生合成遺伝子の比較からGPL欠損の原因遺伝子を同定する。想定しているmps1-2を中心に変異部分を模索する。GPL欠損rough型菌にsmooth型菌から変異部分の遺伝子をpVV16ベクターに繋ぎ、プラスミド性補完株を作製する。補完株はGPLの発現を回復し、コロニー形態のsmooth型菌への変換が期待される。同一患者由来のsmooth型菌、rough型菌が患者内での変異によるもので、本来同一株であるか、時期を異にした2菌株の重複感染かを検討する。M. abscessusの基準株ATCC 19977T株は、既に全ゲノム配列が公開されている。次世代シークエンサーによるsmooth型菌、rough型菌の全ゲノム比較から3株の系統樹解析を行い、一塩基多型(SNP)、反復配列多型(VNTR)から個体間の近縁性を検討する。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)
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[Journal Article] An Experimental Study on the Addition of Bacteria to Residual Anticancer Drugs: Evaluation of the Effect on Bacterial Growth2024
Author(s)
Kikuchi K, Miyauchi R, Yamaguchi T, Sugiura H, Nogami T, Inoue Y, Sato H, Sato H, Fujiwara N, Maeda S.
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Journal Title
Japanese Journal of Infectious Diseases
Volume: 77
Issue: 2
Pages: 61-67
DOI
ISSN
1344-6304, 1884-2836
Year and Date
2024-03-29
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Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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