腹腔内におけるフィブリンを介した癌細胞クラスターの形成機構
Project/Area Number |
23K06685
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Sasaki Foundation |
Principal Investigator |
宮崎 允 公益財団法人佐々木研究所, 附属研究所, 研究員 (20804131)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | がん転移 / 腹膜播種 / スキルス胃がん / 血液凝固 / 細胞クラスター / ホスファチジルセリン |
Outline of Research at the Start |
癌転移は患者のQOL悪化、予後不良の主因である。特に胃癌や卵巣癌、膵臓癌等で認められる腹膜播種については未だ有効な治療法が無く、新規治療法の開発にはその基盤となる分子機構の解明が必須である。申請者はこれまでの研究により、癌細胞は腹腔内において組織因子を介してフィブリン形成を誘導すること、フィブリンが細胞クラスター形成、腹膜への接着および多細胞性転移巣の形成に重要であることを発見した。本研究では癌細胞による組織因子を介したフィブリン形成機構およびクラスター形成に伴う癌細胞の性質変化について解析し、腹膜播種のより詳細な分子機構の解明を目標とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
胃癌や卵巣癌、膵臓癌等で認められる腹膜播種については未だ有効な治療法が確立されておらず、新規治療法の開発にはその基盤となる分子機構の解明が必須である。申請者はこれまでに、癌細胞は腹腔内においてフィブリン繊維を利用して塊(クラスター)を作ること、クラスター化した癌細胞集団が腹膜へ接着することで転移巣を形成することを見出した。本研究では、上述の癌細胞のクラスター形成を介した腹膜播種について、その分子機構の詳細を明らかにすることを目的とした。2023年度の研究成果の概要を以下に示す。 ①組織因子を介したフィブリン形成およびクラスター形成におけるホスファチジルセリン(PtdSer)の機能解析:癌細胞によるTFを介したフィブリン形成およびクラスター形成が、PtdSer結合分子により阻害されることを見出した。従って、癌細胞表面に露出したPtdSerが血液凝固系の活性化に重要であることが示唆された。次に、癌細胞表面のPtdSer露出量を人為的に変化させるとフィブリン形成能およびクラスター形成能へ影響するかを調べた。PtdSerを癌細胞表面へ強制的に露出させるために、恒常活性化型スクランブラーゼ安定発現させた株を樹立した。今後は、樹立した安定発現株のフィブリン形成能およびクラスター形成能について解析する。 ②フィブリンを介したクラスター形成により誘導される癌細胞の性質変化:癌細胞を移植したマウス腹腔内からクラスターおよびシングルセル癌細胞を回収し、網羅的な遺伝子発現解析を行なった。その結果、クラスター形成している癌細胞において発現変化している遺伝子群を同定した。今後は、同定した遺伝子群について腹膜播種との関連を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた研究計画をおおむね実施できたため上記の評価とした。以下にその概要を示す。 ①組織因子(TF)を介したフィブリン形成およびクラスター形成におけるホスファチジルセリン(PtdSer)の機能解析:まず、PtdSer結合分子であるMFGE8を用いて、癌細胞によるフィブリン形成およびクラスター形成の阻害を試みた。その結果、腹水により誘導される癌細胞のクラスター形成およびフィブリン形成が抑制されることを確認した。次に、PtdSerを癌細胞表面に強制的に露出させた際に、フィブリン形成やクラスター化および腹膜播種にどのような影響を与えるか明らかにするために、恒常活性化型スクランブラーゼ遺伝子のレンチウイルスベクターを構築した。構築したベクターを用いてレンチウイルスを産生し、そのウイルスを癌細胞に感染させることで、活性化型スクランブラーゼ安定発現株を樹立した。樹立した安定発現株についてAnnexin V/PI染色を実施し、親株に比べPtdSer露出量が大きく増加していることを確認した。 ②フィブリンを介したクラスター形成により誘導される癌細胞の性質変化:フィブリンを介してクラスター化した癌細胞(クラスター)とクラスター化していない癌細胞(シングルセル)について遺伝子発現プロファイルを取得した。具体的には、ヌードマウス腹腔内へ癌細胞を移植し、6時間後に腹腔洗浄液を回収した。さらに、腹腔洗浄液中の癌細胞について、セルストレーナーを用いてクラスターとシングルセルへ分画し、それぞれRNAを抽出しライブラリー作成へ使用した。RNA-seqにより遺伝子発現を定量し、クラスターとシングルセルの遺伝子発現を比較した。その結果、クラスター化に関連する発現変動遺伝子群(DEGs)を同定した。同定したDEGsについてGO解析およびIPAパスウェイ解析を実施し、クラスター化に関連するシグナル経路を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
①組織因子(TF)を介したフィブリン形成およびクラスター形成におけるホスファチジルセリン(PtdSer)の機能解析: 27種類の胃癌細胞株について、PtdSer露出量、フィブリン形成能およびクラスター形成能を調べ、それらの関連を検討する。樹立した恒常活性化型スクランブラーゼ安定発現株について、フィブリン形成能およびクラスター形成能を調べ、親株との比較を行う。 ②フィブリンを介したクラスター形成により誘導される癌細胞の性質変化:同定したクラスター化に関連する発現変動遺伝子群およびシグナル経路について、腹膜播種との関連を検討する。具体的には、siRNA/shRNA、CRISPR、阻害剤等を用いて候補遺伝子・シグナル経路を抑制した際の腹膜播種への影響を検討する。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)