Project/Area Number |
23K06803
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 51030:Pathophysiologic neuroscience-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 輝幸 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (10246647)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | CDKL5 / 活動依存性マンガン造影MRI / 神経回路 / 発達障害 / キナーゼ / てんかん |
Outline of Research at the Start |
CDKL5の機能喪失は、乳児期発症の難治てんかんと著しい精神運動発達遅滞を特徴とする発達性てんかん性脳症を来す。効果的治療法はない。これまで私はCdkl5 ノックアウト (KO) マウスを作製し、情動・記憶 の異常、脳の興奮性の異常、海馬シナプスの異常などを同定した。しかしCDKL5によるリン酸化の喪失がどのようなシグナル伝達と脳神経回路活動の異常を介し、乳児期よりてんかんと精神運動発達遅滞を生じるか、その機序は未だ不明である。本研究は、CDKL5機能喪失による難治てんかんと精神運動発達遅滞の基盤にある、タンパク質リン酸化と脳神経回路活動の異常の機序と治療標的の同定を目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度はCDKL5欠損症の主な症状である乳児期てんかんの発症機序の解明を目的とした研究を行った。てんかんは神経系の興奮/抑制(E/I)バランスの亢進によって起こり、グルタミン酸による興奮性の増強かGABAによる抑制性の減弱またはその両方が原因である。我々はGABAシグナリングが発達期に興奮性から抑制性へと変化することに注目し、GABAの作用変化の障害によりE/Iバランス亢進が生じるという仮説を立て、Cdkl5キナーゼ活性欠損KIマウス(KI)を用いて検証した。まずactivation-induced manganese-enhanced MRI (AIM-MRI)を用いて、KIと野生型マウス (WT) の全脳で神経活動の差を検証した。神経活動亢進領域について、神経細胞でGABAの作用を制御するCl-トランスポーターNKCC1とKCC2の発現量およびKCC2の機能制御因子Serine 940 (S940)とThreonine 1007 (T1007)のリン酸化を評価した。 結果:AIM-MRIでは、P20の右海馬でKIマウスのMn2+取り込みが有意に高かった。P19の右海馬サンプルのwestern blottingで、T1007リン酸化KCC2/KCC2の値がKIで有意に低かった。NKCC1とKCC2の発現量とS940のリン酸化には右半球および右海馬の両方でKIとWTの間に有意差は認められなかった。 考察: AIM-MRIによってP20のKIマウスの右海馬で神経活動亢進が明らかとなった。P19のKIマウスにおいてKCC2がT1007で脱リン酸化傾向となっていることが示された。T1007の脱リン酸化はKCC2の活性を高め、GABAを抑制性に働かせることから、KIではグルタミン酸シグナリングの異常により興奮性が増加し、恒常性可塑性の作用でKCC2がGABAの抑制性亢進に働いた可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、乳仔期のCdkl5キナーゼ活性欠損マウスにおける、脳全体の活動とCl-トランスポーターの発現およびその機能に関わるリン酸化の評価を行った。AIM-MRIの解析により、乳仔期のKIでは右海馬で活動が増加していることが明らかとなった。またwestern blottingにより、乳仔期のKIの右海馬においてKCC2の活動を促進させる働きを持つT1007におけるリン酸化が減少していることが示された。これらの結果により、Cdkl5キナーゼ活性を欠損すると乳仔期に右海馬で興奮性が高まるが、これは少なくともKCC2活性が落ちたことでGABAシグナリングの抑制性が弱まったことによるものではないことが示唆され、今後のグルタミン酸シグナリングの研究の必要性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
CDKL5機能欠損による、海馬及び全脳レベルでの神経回路の活動性とダイナミクスの異常を定量的に捉える必要があり、そのための生理学的解析を、成体と乳仔期のノックアウトマウス、キナーゼ欠損ノックインマウスを用いて進める。
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