Project/Area Number |
23K07044
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 52030:Psychiatry-related
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
岩井 孝志 北里大学, 薬学部, 講師 (90339135)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
|
Keywords | ストレス / GABA / 抑うつ症状 / うつ病 / 海馬 |
Outline of Research at the Start |
うつ病患者やうつ病モデル動物の脳において、GABA神経の減少が認められているが、うつ症状の発症との関連は明らかになっていない。我々は、ストレスによるものと同程度のGABA神経細胞死が、うつ病様の行動である「無快感」を誘導することを見出した。本研究では、海馬GABA神経の減少が快感・報酬に与える影響とそのメカニズムを明らかすることで、うつ症状の発症メカニズムを解明する。本研究は、従来のモノアミン系を介したものとは異なる発症メカニズムに焦点をあてており、その成果は新たな治療法の開発につながることが期待できる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
うつ病患者やうつ病モデル動物の脳において、GABA神経の減少が認められているが、うつ症状の発症との関連は明らかになっていない。本研究において、我々はストレス負荷と同程度のGABA神経細胞死(30%程度の減少)をsaporin標識抗GABA transporter 1抗体 (GAT1sp)の腹側海馬局所投与により誘導し、短期および長期記憶に影響を及ぼさなかったが、無快感を誘導することを見出した。GAT1sp投与群では、快感・報酬に重要な側坐核においてリン酸化ERKの発現を増加させた。一方、ストレスに対する適応に重要な転写調節因子として報告されているFosBの発現は、顕著な変動を示さなかった。一方、GAT1sp背側海馬に対する局所投与は、学習記憶障害と無快感を生じる傾向が認められた。これらのことから、海馬GABA神経障害は、うつ病の症状である無快感や認知機能の低下に関わることが示唆された。さらに、快感・報酬に重要な側坐核の神経活動に影響を及ぼす可能性が考えられる。 うつ病の発症には、ATP受容体の一つであるP2X7受容体が関わることが知られているが、GABA神経障害を仲介するか否かは明らかになっていない。我々は、P2X7受容体作動薬BzATPを脳室内に持続投与したところ、無快感を生じる傾向が認められた。投与2週間後の海馬におけるGABA神経細胞数をカウントしたところ、 有意な減少は認められなかった。したがって、P2X7受容体の刺激単独では、ストレス様のGABA神経障害の誘導には不十分であり、異なるメカニズムで無快感を生じると考えられる。ただし、GABA合成酵素の減少やシナプス構造の異常のような詳細な変動やBzATPの濃度や投与期間に関する検討が不十分であるため、今後の検討課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、予備検討段階で見出したGAT1spによるGABA神経細胞死や行動異常を誘導し、側坐核におけるシグナル変動を明らかにした。しかし、海馬GABA神経障害後に影響を受ける海馬内神経細胞の同定、側坐核への投射神経におけるGABA神経終末のコンタクトの減少、報酬系の神経伝達に対する影響について十分に検討することができなかったためやや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前述したように、海馬GABA神経障害後に影響を受ける海馬内神経細胞の同定、側坐核への投射神経におけるGABA神経終末のコンタクトの減少、報酬系の神経伝達に対する影響について十分に検討することができなかった。海馬内の神経は、GAT1sp投与後に顕著なFosファミリー蛋白質の変動が見られなかったため、CREBやATFなどの別のシグナルと側坐核への逆行性色素との併用により側坐核への投射神経の影響を検討する。側坐核内においては、リン酸化ERKの変動が見られたため、その上流または下流で変動している可能性のある脳由来神経栄養因子(BDNF)およびその転写調節に関わるCREBの変動について検討することで、以前より報告されているストレスによる側坐核の異常の上流に海馬GABA神経障害が関わるか否かを明らかにする。 また、側坐核内におけるシグナルの変動は神経活動を変調させている可能性を示唆する。そこで、側坐核および海馬に電極を留置し、GABA神経障害後の両領域における神経活動の変化について検討を行う。
|