Project/Area Number |
23K08423
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 55060:Emergency medicine-related
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
磯村 直美 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (80647595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 直顕 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90402370)
谷口 千津子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任講師 (20397425)
秋永 智永子 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40402333)
伊東 宏晃 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70263085)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 羊水塞栓症 / 臓器特異的アナフィラクトイド反応 / 消費性凝固障害 / 線溶亢進 / アドレナリン / アナフィラクトイド反応 |
Outline of Research at the Start |
羊水塞栓症は胎児・羊水成分が母体循環に流入することが契機となり急激に呼吸循環不 全、弛緩出血、血液凝固障害を呈する産科救急疾患である。羊水塞栓症と診断された肺、子宮組織を非羊水塞栓症と比較すると羊水塞栓症では有意に補体系・肥満細胞が活性化していたことから「アナフィラクトイド反応が羊水塞栓症の病態の中心であり原因あるいは増悪因子である」と仮説を立てた。本研究では世界で唯一の羊水塞栓症血液・組織バンクとしてより詳細な臨床的・組織学的検討、血液・組織を利用したメタボローム・プロテオーム解析、動物実験を通じてアナフィラクトイド反応に関連する炎症・免疫関連因子を含めて効果的な急性期治療法を探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
1) 2010年~2022年に全国から羊水塞栓症血清補助診断事業に詳細な臨床情報が送られた患者数は55例であった。羊水塞栓症では常位胎盤早期剥離症例と比較し凝固活性化の程度に相関しない著しい線溶亢進があり関連する可能性のある線溶関連因子と共に論文発表した。 2) 羊水塞栓症群13例コントロール群とし妊産婦肺血栓塞栓症3例非妊婦若年女性病理解剖7例の計10例の組織検体(肺心筋子宮肝腎副腎)を用いC5a受容体染色トリプターゼ染色・c-kit染色を行った。現在CD68 (マクロファージ)Neutrophil elastase (好中球)染色を追加解析している。肺と子宮に有意な肥満細胞脱顆粒所見とC5a受容体の発現量の増加を認めこれら臓器がアナフィラクトイド反応のターゲットになっていると考えた。 3) 羊水塞栓症に対するアドレナリンの経気管投与についての論文は確認できなかった。気管支喘息重積発作による心停止に対し経気管投与し呼吸循環機能が回復した症例報告(Leibman JB. Should epinephrine be administered exclusively by the endotracheal route in respiratory arrest secondary to asthma Am J Emerg Med 1997;15:106‐7)や犬の心停止後心肺蘇生モデルにおいてアドレナリンの投与経路による自己循環回復率を比較した報告ではアドレナリン気管投与は静脈内投与と比べて遜色ない結果であった(hnel J, Lindner KH, Ahnefeld FW. Endobronchial administration of emergency drugs. Resuscitation 1989;17:261-72)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに13症例の全身の主要臓器を解析し、肺、子宮筋、心筋で特異的に肥満細胞が活性化しトリプターゼを分泌していることを見出した。肥満細胞にはプロテアーゼの違いからMCTCとMCTの2つのサブタイプがある。これらはアナフィラトキシンC5aを含む薬剤への反応性や各臓器での分布が異なる(Oskeritzian CA et al. J Allergy Clin Immunol 2005)。また抗アレルギー薬であるクロモグリク酸の受容体GPR35(Okayama Y et al. Clin Exp Allergy 1992)、アレルギーに関与するPlatelet activating factor (PAF)受容体(Kajiwara N et al. J Allergy Clin Immunol 2010)の発現も各臓器で異なる。治療に関連するこれら臓器特異的な発現の違いを主に免疫染色で同定する。さらに羊水塞栓症の対照として、妊産婦肺血栓塞栓症、若年女性の病理解剖症例の全身臓器(すでに各々3例、7例準備すみ)を用いて、羊水塞栓症特異的な反応かどうか検証する。こちらについて検討した。③救急現場における気管内アドレナリン投与の臨床的検討 すべての臓器に発現した肥満細胞を抑制する共通の薬剤としてアドレナリンが知られている。通常アナフィラキシーショックや心停止時にアドレナリンの筋肉内・静脈投与が推奨されている。一方で、ACLSプロトコルではアドレナリンの気管内投与も可能とされている(投与量は経静脈投与の2~2.5倍)。肺組織所見からは、経気管投与は経静脈投与より活性化した肥満細胞に直接影響する可能性が考えられ救急医療現場におけるアドレナリン気管内投与の実態を把握する。気管内投与と筋肉内・静脈投与の効果を文献的、臨床的に調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
Clarkらが2016年に報告した厳密な診断基準(Clark SL, et al. Am J Obstet Gynecol, 2016)に合致する羊水塞栓症に限定すると、2010年~2022年に全国から本学の羊水塞栓症血清補助診断事業に詳細な臨床情報が送られた羊水塞栓症患者数は55例であった。次年度に2023年に送付された症例分もあわせて呼吸循環関連データ、血算・血液凝固データ、治療内容データを死亡や神経学的予後不良との関連性について解析する。アナフィラクトイド反応の観点から解析した羊水塞栓症の全身主要臓器の組織学所見について論文発表する。その後、肺や子宮における肥満細胞サブタイプを免疫染色により同定する。血液検体を使用してメタボローム解析、パラフィンブロックを使用してプロテオーム解析を行いアナフィラクトイド反応周辺の炎症免疫関連因子を網羅的に解析する。ACLSプロトコルではアドレナリンの気管内投与も可能である(投与量は経静脈投与の2~2.5倍)。肺組織所見から経気管投与は経静脈投与より活性化肥満細胞に直接抑制的に作用する可能性を考え、文献を検索したが羊水塞栓症に対するアドレナリンの経気管投与について記述のある論文は確認できなかった。気管支喘息重積発作による心停止に対して経気管投与し呼吸循環機能が回復した症例報告や犬の心停止後心肺蘇生モデルにおいてアドレナリンの投与経路による自己循環回復率を比較した報告ではアドレナリンを気管投与すると静脈内投与と比べて遜色ない結果であった一方経気管投与はアドレナリン希釈液による末梢気道の物理的閉塞を起こす可能性や局所的な肺血管収縮を引き起こし循環へのアドレナリン自体の吸収を妨げる。以上からアドレナリンの経気管投与は症例報告あるいは動物実験ではある一定の効果が推測されるものの、臨床において積極的に勧めるエビデンスに乏しかった。したがって、今後の我々の動物実験モデルで検証する課題と考えた。
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