Project/Area Number |
23K08636
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56020:Orthopedics-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
玉井 孝司 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (30711824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺井 秀富 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20382046)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 禁煙 / 燃焼式タバコ / 加熱式タバコ / 骨癒合 / 骨折 / 喫煙 |
Outline of Research at the Start |
燃焼式タバコと比べ安全性が高いとされる加熱式タバコが普及しており、現在では喫煙者の30%が加熱式タバコを使用している。しかし、我々は先行研究にて、加熱式タバコも燃焼式タバコと同様に骨分化や骨癒合の阻害をもたらすことを明らかにした。一方で、急な禁煙は体重増加・血糖コントロールの増悪・2型糖尿病の罹患率増加などが起こると報告されており、骨折治療中や骨癒合を要する手術前の加熱式タバコ禁煙効果を疑問視する声もある。本研究では加熱式タバコエアロゾルの曝露「中断」効果について検証し、骨癒合における加熱式タバコの禁煙効果について基礎レベルから評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
世界的なシェアが大きい2つのタバコ製品である燃焼式タバコと加熱式タバコ製品(HTP)は、骨治癒に悪影響を及ぼすことが分かっている。しかし、骨折後の禁煙が骨癒合に有益かどうかは不明である。本研究では、喫煙による低下した骨折治癒能が、手術直後からの禁煙によって回復するのかを検討した。燃焼式タバコおよびHTPから、タバコ抽出液(それぞれcCSE、hCSE)を生成した。in vitroでは前骨芽細胞にCSEを暴露させた。CSE曝露を継続した群(cCSE継続群、hCSE継続群)、他方CSE曝露を中止した群(cCSE中止群、hCSE中止群)を作成した。その後、ALP活性、ALP染色、RT-PCR、Scratch assayで細胞の遊走能を観察した。In vivoでは8週齢の雄のSDラットに3週間5日ごとにcCSE1mlまたはhCSE1mlを腹腔内投与した。11週齢で大腿骨骨折治療モデルを作成し、術後ラットをCSE継続群とCSE中止群に分けた。術後6週目(17週齢ラット)にμCTと生体力学試験(3点曲げ試験)を行い、骨折部位の骨癒合、力学的強度を評価した。CSE中止群とCSE継続群において、ALP活性と骨分化マーカーの遺伝子発現には有意差は認められなかった。一方Scratch assayにおいて、cCSE中止群とhCSE中止群で前骨芽細胞の遊走能が継続群と比較して有意に改善した。μCT評価では、骨折部位の皮質骨密度と骨塩量がcCSE中止群でcCSE継続群より有意に高く、骨癒合スコアも高かった。生体力学的評価では、cCSE中止群の骨折部位の弾性は、cCSE継続群よりも有意に高かった。骨折直後の禁煙は骨折治癒を促進し、骨折部位の強度を増加させる。整形外科医は、特に燃焼式タバコ喫煙者において、骨折直後の禁煙を推奨すべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
燃焼式タバコ(cCSE)およびHTP(hCSE)から、過去の我々の研究の通りに生成した。生成したCSE濃度が一定であることを確認した。 In Vitro実験では、マウス由来前骨芽細胞株(MC3T3-E1)に対して、cCSEまたはhCSEへの曝露期間を2つに分けた。前半はcCSEまたはhCSEへの曝露期、後半はさらに、cCSEまたはhCSEへの曝露を継続する群と、cCSEまたはhCSEへの曝露を中止する群に分けた。結果、CSE継続群と中止群のALP陽性面積、及びALP活性レベルは、どのCSE濃度でも有意差はなかった。さらに、cCSEおよびhCSEの継続群と中止群のALP、OCN、Runx2発現レベルは継続群と中止群の間に有意差はなかった。遊走能に関しては、cCSE継続群の24時間移動率が、cCSE中止群よりも有意に低かった。hCSE継続群の24時間移動率も、hCSE中止群よりも有意に低かった。 In vivo実験では8週齢の雄のSprague-Dawleyラットを使用し、1 mLのcCSE、hCSEを腹腔内注射にて5日ごとに3週間投与した。手術は大腿骨骨幹部に横骨折を作り、K-wireによる髄内ピン固定をした。術後はcCSEおよびhCSEを継続、中止の群に無作為に割り当てた。手術後6週間で固定された大腿骨を回収し、μCTによる骨癒合評価と3点曲げ試験による力学強度を測定した。μCT評価による骨癒合スコアは、cCSE中止群の方がcCSE継続群よりも高かった。一方、hCSE投与後の骨癒合スコアには有意な差は見られなかった。また、cCSE中止群の皮質骨密度および骨量が、cCSE継続群よりも有意に高かったが、hCSE群間には差がなかった。力学試験では、cCSE中止群の弾性率はcCSE継続群よりも有意に高かった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、in vivoおよびin vitroの実験により、手術直後の禁煙の効果を検討した初めての研究である。in vitro実験では、cCSEまたはhCSEへの曝露を中止しても、ALP評価および遺伝子発現に基づく骨芽細胞活性は改善しなかったが、cCSEまたはhCSEへの曝露を中止すると骨芽細胞の遊走能が改善した。in vivoの実験では、cCSEの曝露を中止することで、皮質骨の質、骨折治癒率、骨折部位の機械的強度が向上することが示された。統計的に有意ではなかったが、hCSE曝露を中止すると、わずかな改善が観察された。 骨折や外傷の緊急手術に対する禁煙に関する具体的な推奨事項は確立されていない。この研究は、手術直後からであっても禁煙が骨折治癒に有効であることを示唆している。さらに、骨折の保存的治療においても同様の効果が期待できる。これらの知見は、骨折管理の外科的および保存的アプローチにおいて禁煙を実施することの意義を支持するものである。整形外科医は骨折直後に禁煙、特に燃焼式タバコの禁煙を勧めるべきである。 研究は概ね順調に進んでおり、以上の内容を論文にし報告することが今後の課題である。一方、現時点での研究結果の限界点として、タバコに含まれる複数の物質が骨癒合に悪影響を及ぼすため、単一の物質を特定できていない点、症例数が少なく、特にhCSEの実験では、βエラーが生じた可能性がある点が挙げられる。今後の課題はこれらを検討していくことと考える。
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