脂質代謝による翻訳制御を標的とした横紋筋肉腫の革新的治療法の開発
Project/Area Number |
23K08678
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56020:Orthopedics-related
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
板野 拓人 岡山大学, 大学病院, 医員 (40966652)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 英二 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (10649304)
藤村 篤史 岡山大学, 医歯薬学域, 研究准教授 (10771082)
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40294459)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
|
Keywords | 横紋筋肉腫 / がん幹細胞性 |
Outline of Research at the Start |
横紋筋肉腫は、筋組織中の筋芽細胞を起源とする希少がんである。本研究課題の目的は、翻訳開始制御機構阻害剤の作用機序の解明と横紋筋肉腫に対する創薬標的としての薬効、安全性を確認すること、薬剤の感受性や抵抗性の分子機構を解明することである。我々は、複数の候補薬剤を既に選定しており、細胞レベルでの検証にとどまらず、動物レベルでも有効性を実証し、治癒率の高い治療法の開発を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
横紋筋肉腫は、筋組織中の筋芽細胞を起源とする希少がんであり、AYA世代の軟部腫瘍の中で最も発症頻度が高く、全身のあらゆる部位に発症する軟部腫瘍である。診断時に転移有する例や再発例においては、5年生存率が30%まで低下するとされている。また、発生部位やサイズによっては、 手術による機能損失が著しく、外科的完全切除が望ましくないケースもあり、このような症例に対して有効な抗癌剤の開発が強く望まれる。横紋筋肉腫の治療を困難にしている元凶の一つは、他の癌種でも指摘されているように、がん幹細胞集団であると考えられている。2023年度の我々の研究において、横紋筋肉腫のがん幹細胞性を維持する機構の一つとして翻訳制御機構関連因子の翻訳後修飾が重要であることが明らかとなった。翻訳後修飾データベースから修飾標的となる塩基配列および、翻訳後修飾に作用するタンパクA、Bも特定し、各種横紋筋肉腫細胞株における発現をWestern Blottingで確認した。各種タンパクを生成し、タンパク質間相互作用を検証した。またタンパクA、Bのknock down実験および、アミノ変異株を用いたrescue実験をおこない、特定のアミノ酸配列へのタンパクA、Bの作用が細胞増殖、がん幹細胞性維持に必要であることを示した。また、タンパクA、Bに対する阻害剤ががん幹細胞性維持を阻害すること、抗悪性腫瘍薬耐性株では、タンパクA、Bの発現が亢進していることを発見した。この翻訳制御機構関連因子とタンパクA、Bの相互作用は過去に報告がなく、治療抵抗性の横紋筋肉腫に対し、新たな治療標的となる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
翻訳制御機構関連因子の翻訳後修飾を解析する過程において、In vitroでがん幹細胞性に関与する翻訳後修飾と治療の標的となりうるタンパクを特定し、既報では報告されていないタンパク質間相互作用を発見した。上記タンパクA、Bのknock down実験による抗腫瘍効果と、アミノ酸変異株を用いたrescue実験により翻訳制御機構関連因子の機能維持に重要な配列を特定したことで新たな創薬標的が実証された。上記内容を学会発表予定としている。また、当研究の過程において作成した薬剤耐性株においても我々が特定したタンパクA、Bの発現が亢進していることも確認され、翻訳制御機構関連因子の翻訳後修飾ががん幹細胞性維持に重要であるという仮説を支持するものであった。組織アレイを用いた免疫染色では、がん幹細胞性の指標とされるタンパクと、上記タンパクAとの発現に相関が見られており、患者の腫瘍組織内においてもタンパクAが腫瘍増殖能の亢進および幹細胞性の維持に影響を与えているものと考えられた。 翻訳制御機構関連因子による翻訳開始制御機構を評価するために作成したレポーターアッセイからスクリーニングを行い選択した高脂血症治療薬は、研究開始時に想定していた通り幹細胞中核転写因子の発現を低下させることは確認できたが、高濃度での処置が必要であり、より腫瘍選択性の高い投与方法が必要と考えられた。今後、上記スクリーニングで得られた候補薬剤とタンパクA、Bとの関連も確認する予定としている。
|
Strategy for Future Research Activity |
得られた研究結果を基に論文報告を作成中である。論文と並行して、国内学会、国際学会での発表も予定している。2023年度の研究において翻訳制御因子とタンパクA、Bが細胞内で隣接し翻訳後修飾を生じることは明らかとなったが、本研究で認められた事象が横紋筋肉腫の他の細胞株および、横紋筋肉腫以外のがん種において実証可能か、複数の細胞株を用いて検証する必要がある。また、タンパクA、B自体の翻訳後修飾についても評価予定とし、腫瘍細胞内での翻訳後修飾の活性化に関連する因子を明らかにし、翻訳後修飾に重要となる配列部位を特定する予定である。 実臨床での使用を見据え、タンパクA、Bの阻害剤を用い、現行の横紋筋肉種に対する化学療法VAC療法(Vincristine, Actinomycin D, Cyclophosphamide)との対純比較および、併用レジメンの可能性について検討する。 In vivoでは、タンパク相互作用の確認や阻害剤による抗腫瘍効果の評価、合併症、転移等の評価を行う。また、耐性株の性状や非耐性株においても、腫瘍増殖および転移の発生率等の違いを評価し、薬剤耐性のメカニズムとタンパクA,Bの連関を確認する。 single cell RNA-sequencingや臨床データベースを用いた検討を行い、既存の治療薬剤との併用も含めた新規治療の開発を検討していく。また、当院倫理委員会の承認および、患者本人の同意が得られた場合には、本研究で同定したタンパクが肉腫の治療経過(初回の針生検、手術、化学療法、放射線療法前後の検体)で変化が生じるかを確認し、将来的な予後予測モデルの作成も検討している。
|
Report
(1 results)
Research Products
(2 results)