内在性カテコラミン合成経路を標的とした悪性末梢神経鞘腫瘍の新規治療方法の確立
Project/Area Number |
23K08698
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56020:Orthopedics-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片山 晴喜 岡山大学, 大学病院, 医員 (00962242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 英二 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (10649304)
藤村 篤史 岡山大学, 医歯薬学域, 研究准教授 (10771082)
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40294459)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 悪性末梢神経鞘腫瘍 / アドレナリン / 内在性カテコラミン合成経路 |
Outline of Research at the Start |
悪性末梢神経腫瘍(MPNST)は若年成人に発生し、切除不能例では治療に難渋することが多い悪性腫瘍として知られている。 近年、腫瘍伸展に影響を与える因子としてカテコラミンの重要性が指摘されており、本研究では、MPNST細胞自身が新たにカテコラミン合成経路を持ち、それが治療標的となり得るかということを検証する。 予備実験により、MPNST細胞内にカテコラミン合成酵素とアドレナリンが確認できた。 今後はMPNST細胞株においてカテコラミン合成酵素を抑制することで腫瘍の幹細胞性低下を確認する。次にカテコラミン合成酵素に対する阻害剤を用いて、実際に腫瘍の幹細胞性が低下するか否かを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度はMPNST細胞株を使用してTyrosine Hydroxylase (以下TH)を除くカテコラミン合成酵素であるDopa Decarboxylase(以下DDC)、Dopamine beta-Hydroxylase(以下DBH)、Phenylethanol-N-methyltransferase(以下PNMT)を標的としたshRNAを導入することによるMPNSTのがん幹細胞関連因子であるYAP/TAZと幹細胞性の低下を確認することができた。またこれらの合成酵素のshRNA導入により、免疫染色においてMPNST細胞株内のアドレナリン(以下Ad)シグナルが低下することが示された。細胞内でのカテコラミン合成、貯蔵に必要なVesicular Monoamine Transporter(以下VMAT)に関しても同様の結果が得られた。 また実際に岡山大学病院で切除された患者検体を用いて転移の有無で2郡に分けて免疫染色を行い、転移がある予後不良群ではDDCのシグナルが有意に高いという結果が得られた。このことよりDDCに着目し、DDCに対するshRNAを導入したMPNST細胞株を免疫不全マウスに移植することにより、shRNAを導入した細胞ではコントロールと比較して腫瘍形成能が低下していた。 以上より、MPNSTが細胞内でのAd合成を行い、それが自身のがん幹細胞性に関わっており治療標的となり得ることが考えられた。 これらの結果に基づき、カテコラミン合成経路に対する阻害剤であり、すでに他疾患の治療薬として製品化されているベンセラジド(DDC阻害剤)、ネピカスタット(DBH阻害剤)、レセルピン(VMAT阻害剤)の3剤を用いて細胞レベルでの検証実験を行った。 これらの3剤によりMPNST細胞株のがん幹細胞関連因子であるYAP/TAZとがん幹細胞性の低下を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年度までの研究においては、In vitroに関してWestern Blotting、免疫染色、Sphere Formation Assay、Clonogenic Assayなどを中心に実験を行った。これらの実験に必要な器具は当施設にある機器を用いながら必要に応じて購入したが、購入の際にも大きなタイムラグが無く届き、実験を止めることなく進めることができた。 阻害剤に関しては一部購入が必要なものもあったが、当施設に一部残っているものも使用しながら実験を進めた。必要な阻害剤を早めに決めて注文することで、それぞれの阻害剤を並行して使用しながら腫瘍細胞に対する抑制効果を調べることができた。 使用した細胞株の中には理化学研究所バイオリソース研究センターより購入した細胞株もあるが、一部細胞株は他大学・研究室から譲渡してもらうことによって、当施設でも早めに安定して使用開始することができた。 In vivoの実験においては、カテコラミン合成に関わる全酵素のshRNAの使用も考慮されたが、臨床検体での免疫染色の結果で予後不良に関連しているDDCに着目することができ、残りの酵素に関しては予後に関連しないため不要という結論に至った。そのため、早く効率的にカテコラミン合成経路を阻害することによる腫瘍形成能の著名な低下のデータを示すことができた。 上記のような理由から、時間のロスなく研究を進めることができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今回用いた阻害剤がMPNSTの治療薬として使用できるかをxenograftモデルマウスで検証するとともに、それぞれの阻害剤の有効濃度、安全性などについても引き続き細胞レベルとマウスを用いて検証していく。今後の臨床応用に前向きな結果が得られれば、積極的に製薬会社にアプローチして、臨床研究に必要な事項を検討するとともに、実行に必要な研究資金の獲得に着手する。 もし単剤での臨床応用が難しいと考えられる場合には、現在MPNSTに対して使用されている化学療法と併用した際の相乗効果の可能性についても検証していきたい。 MPNST細胞内で新たに合成されたカテコラミンがどのようにシグナル伝達に関与するのだろうか?という難題に対して我々は、細胞内小胞がそのシグナルの起点になるのではないかと考えた。すなわち、細胞内で合成されたアドレナリンが、細胞内小胞の内側から細胞質側へシグナルを発する起点となるという仮説である。実際にMPNST細胞はカテコラミンの細胞内小胞への輸送を担うVMAT1/2を発現していることを確認しており、この仮説の各ステップを、shRNAや阻害剤を用いて分子生物学的に検証する。もし細胞内小胞を起点とする内在性カテコラミンシグナルの作業仮説がうまく実証できない場合には、de novoに合成されたカテコラミンがparacrineおよびautocrine的に働くという仮説を立て直して再度検証に取り組む予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)