Project/Area Number |
23K08878
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56040:Obstetrics and gynecology-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小松 篤史 日本大学, 医学部, 准教授 (90463851)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 子宮頸癌 / HPV / 癌ワクチン / 粘膜免疫 / 子宮頸部高度上皮内腫瘍 / 第I/II相医師主導治験 / E7発現乳酸菌製剤 / コンパニオン診断 / ヒトパピローマウイルス / 子宮頸部異形成 |
Outline of Research at the Start |
子宮頸癌にはヒトパピローマウイルス(HPV)の癌蛋白質E7が恒常的に発現しており、E7は癌ワクチンの標的分子(癌抗原)と言える。我々は乳酸菌ベースのHPVE7 ワクチン(E7発現乳酸菌製剤)を開発、これを子宮頸部高度扁平上皮内病変症例への経口投与により病変を退縮させることを示したが、同時にこの薬理効果には個体差があることも示された。その有効性はE7蛋白質の発現量や免疫学的因子(PD-L1など)が関連していると考えられた。本研究ではE7発現乳酸菌製剤の有効性がより高くなる患者を同定する個別化(コンパニオン診断)を試みるために、本薬の臨床効果と相関するバイオマーカーを探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
我々が開発した治療的HPVワクチン(癌ワクチン)IGMKK16E7のコンパニオン診断薬を開発し、治療効果を増強することを目指している。IGMKK16E7の第I/II相医師主導治験に参加した165例のHPV16陽性CIN2/3患者を対象とした解析を実施した。これまでの研究では、実施施設のうち、日本大学で登録された患者を対象とした解析であった。今年度行った治験参加の全症例においても、日本大学での結果と同様の結果を得た。すなわち、子宮頸部でのE7特異的T細胞の免疫反応を阻害する因子としてCD86高発現を同定した。 用いた臨床検体は、治療前の子宮頸部細胞であり、一般的な頸がん検診で用いる器具、Thinprep(70%アルコール)に保管した細胞である。CIN2/3病変から擦過されており、子宮頸部局所の細胞であり、IGMKK16E7で誘導されたリンパ球のエフェクター相の細胞集団である。免疫因子としてFoxp3、PD-L1、PD-1、CD8、CD4、CD28、CD80、CD86、CTLA-4、CD103の発現量とIGMKK16E7の有効性の相関を調べた。CD86低発現群では有意にIGMKK16E7に臨床効果が高くなることを見出した。IGMKK16E7高用量のCR率は、症例全体で30%だったのに対して、CD86低発現群では55%となった。CD86 高発現群では0%であった。CD86とCTLA-4の発現量は正の相関があった。CTLA4+Treg細胞を活性化することによって免疫抑制状態を導くと考えられた。この状態では、IGMKK16E7によって誘導されたE7特異的T細胞の免疫反応が阻害され、臨床効果が得られなかった可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第I/II相臨床試験が終了し、最終的な解析を経て子宮頸部でのE7特異的T細胞の免疫反応を阻害する因子として、CD86高発現を同定できた。 そこで、臨床効果と子宮頸部微小環境の相関性を検討するに至った。子宮頸部擦過細胞は、一般的な頸がん検診で用いる器具を使い、Thinprep(70%アルコール)に保管した状態で回収した。上皮細胞、リンパ球、マクロファージ等が含まれている雑多な細胞集団である。これらはCIN2/3病変から擦過されており、子宮頸部局所の細胞であり、IGMKK16E7で誘導されたリンパ球の実効現場の細胞集団と考えた。免疫因子として次の9種を検討した。Foxp3、PD-L1、PD-1、CD8、CD4、CD80、CD86、CTLA-4、CD103である。これらの発現をRT-PCRで確認した。CD86低発現群では有意にIGMKK16E7に臨床効果が高くなることを見出した。すなわち、IGMKK16E7高用量のCR/PR率は、症例全体で43%だったのに対して、CD86低発現群では73%となった。CD86 高発現群では0%であった。CD86はCTLA4+Treg細胞を活性化することによって免疫抑制状態を導く。この状態では、IGMKK16E7によって誘導されたE7特異的T細胞の免疫反応が阻害され、臨床効果が得られなかった可能性が考えられた。CD86の発現を調べるための抗体や試薬の選択・検討を慎重に行うため、これらの実験用品購入のための消耗品費を繰り越すこととした
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Strategy for Future Research Activity |
HPV16 陽性CIN2/3 において、治療前の子宮頸部CD86 低値(CD86-low)が、治療用経口HPVワクチンIGMKK16E7 に対する反応性の予測バイオマーカーであることを見出した。子宮頸部局所微小環境においてCD86 高値の患者は、高用量のIGMKK16E7 によって腸管粘膜にE7 特異的T細胞が誘導されても、組織学的CR を示す可能性は低かった。CD86-低ステータスで選択された患者では、IGMKK16E7 によるCR 率は50%に増加し、したがって、IGMKK16E7 内服後に最適な臨床効果を実現する可能性が最も高い患者を選択するための有用な診断バイオマーカーとなる可能性がある。 CD86-CTLA-4 の高遺伝子発現が子宮頸部でのT 細胞抑制による非CR をもたらすと仮定するとと、抗CTLA-4 抗体による免疫チェックポイント阻害は、特にCD86 高発現患者に対するIGMKK16E7 の有効性を高める可能性がある。悪性腫瘍に対するがんワクチンと抗CTLA-4 抗体との併用療法は、数多くの臨床試験の対象となっている。IGMKK167 は、腫瘍抗原であるHPV16E7 を標的とするがんワクチンと考えることができる。IGMKK16E7 と抗CTLA-4 抗体の併用療法が、浸潤性子宮頸癌や他のHPV 関連癌に対して抗腫瘍効果を示すかどうかも検討していきたい。
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