Project/Area Number |
23K09088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56070:Plastic and reconstructive surgery-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
下仲 基之 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (30277272)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | エクソソーム / 創傷治癒 / 灌流培養 / miRNA / 血管内皮細胞 |
Outline of Research at the Start |
創傷治癒の過程は,血管内皮細胞,平滑筋細胞,線維芽細胞と血液成分との間で時間的・空間的に密接に関連づけられながら制御されている。しかし現在この過程を制御する機構を詳細に解明する有効な実験系は,ほとんど存在しない。 本研究は,本研究申請者が新たに確立した,in vitroでin vivoの条件を再現することができる灌流培養系を用いて,血管構成細胞由来のエクソソームがそれらの細胞の損傷修復に及ぼす影響とその詳細な機構を解明することで,創傷治癒過程の制御機構に対する細胞間コミュニケーションの役割を明らかにすることを目指している。
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Outline of Annual Research Achievements |
創傷治癒過程は,細胞外マトリックスや血液中の成分,そして血管内皮細胞をはじめとする血管構成細胞間の多次元的な相互作用に加え,それらの細胞が分泌するエクソソームがオートクライン的あるいはパラクライン的に作用することで制御されると考えられている。特にエクソソームに内包されるmiRNAが,標的細胞の遺伝子発現やタンパク質発現に影響を及ぼすことで創傷治癒過程を制御する可能性が注目されるようになってきた。本研究は,線維芽細胞の3D培養に血管内皮細胞の2D培養を組み合わせた灌流培養を行うことでex vivoの創傷治癒モデル系による細胞間の相互作用を解析するとともに,それぞれの細胞から分泌されるエクソソームの創傷治癒に及ぼす影響を検討することで,エクソソームの新たな生理機能を探索し,in vivoにおける創傷治癒過程のメカニズム解明を目指すものである。 本年度は,まず灌流培養系において,血管内皮細胞由来のエクソソームが血管内皮細胞の増殖と遊走に及ぼす影響を検討した上で,回収したエクソソームからmiRNAを精製し,同様に血管内皮細胞に及ぼす影響を検討した結果,いずれの場合も増殖能と遊走能を促進することが明らかになった。回収したエクソソームのmiRNAの配列解析を行ったところ,NF-κBシグナル経路に関与するlet-7ファミリーmiRNAが多く含まれていることがわかった。またエクソソーム添加により,標的細胞において細胞運動を制御するRhoファミリータンパク質の早期発現が誘導されることが明らかになった。 以上のように本年度は,灌流培養を用いて創傷治癒過程におけるエクソソーム内のmiRNAの重要性を見出すことができた。次年度以降は,二細胞灌流培養系を用いてそれぞれの細胞由来のエクソソームおよびmiRNAの影響を詳細に検討するとともに,その作用発現のメカニズムの解明を試みていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,血管内皮細胞由来のエクソソームが血管内皮細胞の増殖と遊走に及ぼす影響を検討した。48時間無血清培地で培養した血管内皮細胞から,連続超遠心分離法を用いてエクソソームを調製し,灌流培養系においてスクラッチアッセイを行うことで,創傷治癒に及ぼす影響を検討した。 ミヌシート上でコンフルエントになった細胞を培養チャンバーにセットして灌流培養を開始し,24時間後に細胞に引っかき傷をつけ,継時的に傷が修復する様子を観察した。ここに回収したエクソソームを添加して灌流培養を行ったところ,損傷回復が促進されることが明らかとなった。また,細胞増殖アッセイの結果,エクソソームが血管内皮細胞の増殖を促進することがわかった。続いて,回収したエクソソームからmiRNAを精製して灌流培養系に添加したところ,血管内皮細胞の遊走能を促進することが明らかとなり,同様に増殖能も促進することがわかった。次に回収したエクソソームのmiRNAの配列解析を行ったところlet-7ファミリーmiRNAが多く含まれていることがわかり,NF-κBシグナル経路が創傷治癒の制御に関与していることが示唆された。更に未同定のmiRNAも複数含まれていたことから,これらのRNAが創傷治癒過程に及ぼす影響についても今後検討を行なっていく。 また血管内皮細胞における細胞運動関連シグナル伝達タンパク質Rac1/2/3,Cdc42,RhoAの発現パターンを解析したところ,いずれのタンパク質もエクソソームの添加により発現のタイミングが早まることが明らかになった。ところが,これらのタンパク質の上流因子であるAktの発現量と活性化状態についての変化は認められなかった。 以上のように,本年度は次年度以降実験を行うための基盤となる実験を行い,良好な結果を得ることができたことから,ほぼ順調に研究が進行していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度に得られた結果をもとに,コラーゲン担体に線維芽細胞を播種した3D培養体に血管内皮細胞の2D培養系を組み合わせて灌流培養を行う創傷治癒のex vivoモデル培養系を用いて,培養系に存在するエクソソームが細胞増殖の制御や細胞外マトリックスの合成・分解等にどのような影響を及ぼすかを明らかにするとともに,赤血球や血小板由来エクソソームとの関連を評価することで,瘢痕形成に重要な影響を与える細胞増殖期と組織再構築期における細胞間コミュニケーションの動的変化を解析する。 具体的には,線維芽細胞の3D培養装置の上流に血管内皮細胞の2D培養装置を直列に接続した二成分灌流培養系を構築する。この装置を用いた灌流培養条件下で血管内皮細胞に損傷を与え,血管内皮細胞が損傷から回復する過程に応じて線維芽細胞の増殖能や遊走能,マトリックス成分の蓄積,細胞内シグナル伝達因子の発現パターン等がどのように変化するかを検討する。ここで現れた変化に対するエクソソームの関与を明らかにするために,構築した二成分灌流培養系の流路内にエクソソームを吸着させるトラップを設置してエクソソームの流れを遮断し,どのような影響が生じるかを検討する。続いて,それぞれの細胞から分泌されたエクソソームをトラップから回収し,それらのエクソソームに存在するmiRNAの解析を行う。 合わせて,赤血球および血小板からエクソソームを回収し,同様にmiRNA解析を行う。解析したこれらのmiRNAの標的となる分子を特定して発現量の変化を検討することで,miRNAと標的タンパク質との相互作用について検討する。得られた解析結果をもとに候補となるmiRNAを選択し,二成分灌流培養系にそれらのmiRNAを添加して線維芽細胞に対しどのような影響を及ぼすかを検討することで,エクソソームに存在するmiRNAの役割を明らかにしていく。
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