Project/Area Number |
23K09123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 57010:Oral biological science-related
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
千葉 紀香 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00468050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松口 徹也 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (10303629)
大西 智和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (30244247)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | マスト細胞 / 低酸素 / サイトカイン / 骨芽細胞 / hypoxia / 骨再生 |
Outline of Research at the Start |
難治性骨折や歯周病の治療法として、サイトカインやマトリックスデリバティブを用いた骨再生療法が開発され一定の効果を挙げているが、長期の治療に伴う副作用によるQOLの低下が問題となる。本研究では、骨再生におけるニッチ(組織微小環境)の役割に注目し、全身あるいは局所環境における酸素濃度が骨芽細胞による骨の再生に与える影響を、以下の2点に着目して解明することを目的とする。 1.低酸素環境下の骨ニッチにおけるマスト細胞の役割 2.マスト細胞/骨芽細胞のクロストーク 本研究によって得られた知見は、骨欠損の予防や骨再生療法における新規の治療法の開発や創薬に繋がると期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、感染や骨折による炎症にて発生する低酸素環境においてマスト細胞の細胞応答性がどのように変化し、またそのことが骨形成・骨再生にどのように影響を与えるかを解明することをゴールとしている。マスト細胞は細菌由来成分に反応して各種サイトカインを分泌することが知られているが、低酸素下での反応についての詳細は今まで報告がない。そこで本年度は細菌性内毒素であるリポ多糖(LPS)に対するマスト細胞の免疫応答についてまずin vitroでの解析を主として行った。 マスト細胞細胞株であるMC/9を酸素濃度2%(低酸素)の環境下にて培養したところ、低酸素誘導因子(HIF)の増加を確認した。次に、MC/9を酸素濃度それぞれ20%(大気)または2%にて一定時間静置した後にLPSの刺激を行い、誘導される細胞内シグナルとサイトカインの遺伝子発現を解析した。HIF1αの上昇は低酸素でのみ見られ、LPSの有無による有意な変化はなかった。また、細胞接着に関与する分子として知られる接着斑キナーゼ(FAK)のリン酸化が低酸素により促進されていることを確認した。興味深いことに、FAK阻害剤によってHIF1αの量が低下するが、HIF1αの阻害剤ではFAKのリン酸化は阻害されなかった。つまり、FAKのリン酸化はHIF1αよりも上流のイベントであることが分かる。これは報告のあるヒト臍帯血由来間葉系幹細胞とは異なる結果となった。LPSにより誘導されるサイトカインのうち、IL-6やTNF-αの炎症性サイトカインは酸素濃度により変化しないが、骨形成にも関わるIL-13やIL-33の発現量は有意に増強されていた。また、この増強作用はFAK阻害剤、HIF1αノックダウンにより失われることも確認した。以上より、低酸素がマスト細胞内でFAKリン酸化を誘導、HIF1αを増加させ、サイトカイン特異的に産生を増強することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マスト細胞に低酸素が与える影響についてはin vitroにおいて解析を進めた。まずはマスト細胞の低酸素に対する応答性を確認し、その後LPSによる産生されるサイトカインのうち、低酸素はIL-13、IL-33のサイトカインの遺伝子発現を特異的に増強し、炎症性サイトカインに分類されるIL-6やTNF-αの産生には影響しないことを確認した。また、その細胞内シグナル伝達分子として各種MAPキナーゼ、AktといったToll-like receptor 4(LPSのパターン認識受容体)の下流に存在することがよく知られている分子の活性化を確認したが、サイトカインの遺伝子発現のパターンに合致した変化は確認されなかった。そのため、過去に他の細胞種で低酸素に応答して活性化(リン酸化)がみられるという報告のあるFAKのリン酸化を確認したところ、低酸素刺激で増強されていることを確認した。さらに、間葉系幹細胞などの他の細胞種において報告されている現象とは異なることから、マスト細胞では低酸素に対する応答性に細胞特異性が存在することが示唆されている。以上の本研究で得られた成果の一部はすでに南九州歯学会(口頭発表)、歯科基礎医学会学術大会(ポスター発表)で発表しているとともに、現在は英文雑誌(査読あり)への投稿準備を進めている。動物を用いるin vivo実験については、当初に購入予定であった機器が世界情勢や円安などの影響により配布基金額を大幅に超過したため代替機器の模索に時間を費やしたが、最終的に機能面では劣るものの研究計画の実施に使用可能な代替機器を手配完了した。次にはこれらの機器類を使用し、in vitroの研究結果を踏まえてin vivoの研究を進め、またin vitroに関してもさらに詳細を探求していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでマスト細胞細胞株であるMC/9を主に用いて細胞の応答やシグナル伝達を解明してきたが、初代培養細胞である骨髄由来マスト細胞も用いる形で現在確認されている知見に基づいてさらに詳細なメカニズムについての探索を行う。特に、すでに報告のある細胞種との違いについて、その差が何に基づいているのかなどを解明していく。同時に、低酸素によるマスト細胞の応答性の変化が骨芽細胞に及ぼす影響についても共培養系を用いたin vitro、各種マウスを用いたin vivo両方の観点から注意深く調べていく。
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