ATP受容体による島皮質グリア細胞-抑制性シナプス増強で生じる抗疼痛-不安作用の解明
Project/Area Number |
23K09129
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 57010:Oral biological science-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山本 清文 日本大学, 歯学部, 講師 (30609764)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 島皮質 / D-serine / GABA作動性 / アデノシン三リン酸 / プリン受容体 / グリア細胞 / astrocyte |
Outline of Research at the Start |
末梢性の神経損傷がアストロサイトを活性化させるとシナプスにリモデリングが生じ,下歯槽神経切断でも島皮質(IC)の神経回路でリモデリングが認めらる。さらにLTPの誘発機序により興奮性シナプスが増強し,アロデニアなどの神経障害が生じることで,これが急性から慢性疼痛への悪化と,それに不随する負の連鎖の一端を担うと想定される。そこで本研究は,先行研究にて見出した,「アストロサイト-GABA作動性抑制性シナプスにおけるシナプス増幅作用」を強化することで「負の連鎖反応」を断つことを最終目的とし,第一目標として,「アストロサイト-GABA作動性抑制性シナプスにおけるシナプス増幅作用」の詳細な機序を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
末梢部位の神経損傷は時として神経因性疼痛を引き起こし,その多くに不安障害を併発し病状が悪化する,所謂,「負の連鎖」が報告される。齧歯類の下歯槽神経を切断したモデルでは,島皮質(insular cortex, IC)内でシナプスのリモデリングが示され,またICの興奮性ニューロンを選択的に刺激すると著明な不安応答を生じることが示されたことから,ICが「疼痛」や「不安」に影響し,「負の連鎖」を助長する可能性が示唆される。原因の1つに,活性化したアストロサイトがシナプスのリモデリングならびに興奮性シナプスの長期増強を増長し,これが「負の連鎖」を増悪化するアクセルの役目を果たす可能性が浮上した。一方,我々の先行研究では,アストロサイトに豊富に発現することが知られるP2X受容体の作動薬で抑制性シナプス微小電流が増強した。したがって,同細胞はGABA作用性シナプス伝達の増幅作用によるブレーキ機能を有し,これが破綻すると障害性疼痛や「負の連鎖」が増悪すると考えた。そこで,IC内の「アストロサイト-GABA作動性ニューロン」連関による抑制性シナプス増強メカニズムを解明し,選択的にこの経路を亢進する可能性を検討することで,神経因性疼痛と不安障害による「負の連鎖」を断ち切る方法の確立を目的とした。第1段階として,ICを含む急性スライス標本を作製し,電気生理学的手法にて抑制性シナプス微小電流(mIPSC)を記録する。ATP受容体,特にP2X受容体の作動薬を投与した際に生じる電流応答の振幅値と発生頻度を解析し,本現象がシナプス前終末の放出機構,あるいはシナプス後側の受容体の感受性の変化に起因する可能性を推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本実験では麻酔下(5%イソフルラン)のマウスから脳を摘出し,ICを含む急性スライス標本を作製し,電気生理学的手法にて抑制性シナプス微小電流(mIPSC)を記録する。ATP受容体,特にP2X受容体の作動薬を投与した際に生じる電流応答の振幅値と発生頻度を解析し,本現象がシナプス前終末の放出機構,あるいはシナプス後側の受容体の感受性の変化に起因する可能性を推定する。また,P2X受容体はアストロサイトに豊富に発現し,先行実験で認められた本現象が,D-serine,グリシンやグルタミン酸などグリオトランスミッターに起因する可能性が強く示唆されている。同じく抑制性シナプス微小電流を記録し,応答の頻度と振幅値の解析からD-serine-NMDA受容体あるいはグルタミン酸-NMDA受容体連関で生じるGABA作動性シナプスの増強,特にGABAA受容体の感受性の増加におよぼすNMDA受容体グリシン結合部位遮断薬の影響など,薬理学的手法にて検討した。アストロサイトの代謝を特異的に抑制するフルオロ酢酸をインキュベーションしたスライス標本では,ATP作動薬で誘発される本応答が誘発されなかった。これらの結果が,アストロサイトに由来する応答,特に同細胞から放出されたD-serineが本応答を誘発させる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
IC内アストロサイト活性化による神経障害性モデルの検討と,IC内アストロサイト活性化による神経障害性モデルの検討を計画する。ICを含む急性スライス標本を作製し,Ca2+蛍光指示薬をバルグ負荷法あるいは直接パッチ電極を介してICのアストロサイトに微量注入する。パッチクランプ装置を装備した共焦点レーザー顕微鏡によって,Ca2+蛍光観察とパッチクランプ記録を同時に行う。P2X受容体作動薬を灌流投与した際のCa2+蛍光強度変化を測定する。また,ICの錐体ニューロンから同時にmIPSCを記録し,アストロサイトの変化とニューロンの電流応答の関連性を検討する。神経障害性モデルにおける活性化アストロサイトは,疼痛悪化のアクセル役にもブレーキ役にも成り,シナプスに異常をきたすのか,あるいはそれを阻止するかは未だ不明である。そこで次年度および最終年度では,アデノ随伴ウイルスをベクター(AAV)として、IC内アストロサイト選択的にhM3Dq受容体を発現させる。回復後,外因性リガンドであるクロザピン N-オキシド(CNO)を腹腔内投与し,Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs(DREADD)手法にてICのアストロサイトを選択的かつ持続的に活性化する。神経障害で生じるアストロサイト活性化プロセスをDREADD法にて再現し,神経損傷を生じていない無処置の動物の痛み閾値の変化を評価することで,神経障害性疼痛の発展におよぼすアストロサイトの影響を検討する。また,高架式十字迷路を作製し,CNO投与中のモデル動物における不安行動の変化について検討する。なお最終年度より,繁冨英治准教授を連携研究者に迎え,特定遺伝子の発現ならびに疼痛モデル作製,行動実験の評価に参画する計画である。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)