植物油由来機能成分を活用した肥満症に伴う認知機能低下機構の統合的解析と治療応用
Project/Area Number |
23K10891
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 59040:Nutrition science and health science-related
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
益崎 裕章 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 士毅 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40342919)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2025: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2024: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2023: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
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Keywords | エクストラバージンオリーブオイル / γ-オリザノール / 認知機能 / 肥満症 / 依存的行動嗜癖 |
Outline of Research at the Start |
中年期・壮年期の肥満はのちの人生で認知機能低下のリスクを高めることがわかってきた。病態モデルマウスを用いた私達の研究からは肥満に関連する認知機能の低下に動物性脂肪、アルコール、ニコチンに対する依存的行動嗜癖が関与している可能性が見えてきた。動物性脂肪に対する病みつきとお酒やタバコに対する依存が脳の中で似通った仕組みで形成されているとすれば、ひとつの依存を是正することで他の依存を軽減できるかも知れない。このような視点から、本研究では植物油の機能成分であるγ-オリザノールやエクストラバージンオリーブオイル(EVOO)を活用して肥満に伴う認知機能低下のメカニズム解明と治療法の確立を目指したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
中年期・壮年期の肥満がのちの人生における認知機能低下のリスクを増大させることが注目されており、病態モデルマウスを用いた研究代表者らの一連の研究により、肥満に関連する認知機能低下メカニズムの一部に動物性脂肪(ラード)、アルコール、ニコチンなどに対する依存的行動嗜癖が関与する可能性が明らかになりつつある。 このような背景を踏まえ、本研究では研究代表者らがこれまでに明らかにしてきた『植物油由来機能成分であるγ-オリザノール(米油)とエクストラバージンオリーブ油(EVOO)による動物性脂肪依存の改善効果、消化管免疫・消化管粘膜バリア機能の強化効果』を足掛かりにして植物油由来の食機能成分を活用した肥満症に伴う認知機能低下メカニズムの統合的解析と治療応用に向けた独創的基盤研究を進めている。特にγ-オリザノールにおいては、肥満症に伴う認知機能低下の改善に関わる新規脳メカニズムの解明を目指し、特に脳内アセチルコリン作用バランスに及ぼすγ-オリザノールの新規作用機構の検証を進める。依存的行動嗜癖の持続がのちの認知機能障害を招来するメカニズムが注目を集めており、一方、研究代表者らの先行研究から、後天的にアルコールに対する依存的嗜癖を誘導したモデルマウスに対するγ-オリザノール投与がアセチルコリン分解酵素(AChE)活性阻害を介してアルコール依存状態を効果的に改善することを新規に突き止めたことを踏まえ(アルコール依存症の予防薬及び治療薬並びにアルコール依存症の予防食品及び治療用食品:発明者代表:益崎裕章(特許:第7244002号,登録日:2023年3月13日) 、γ-オリザノールによる認知機能(空間認識能や新規物体認識能)改善にAChEの抑制が関与する可能性を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
γ-オリザノールが肥満に伴う認知機能低下を改善する新規の脳メカニズムの解析を進めており、特に脳アセチルコリン作用バランスに及ぼすγ-オリザノールの効果をマウス病態モデルの解析と転写調節実験の両面から検討している。 研究代表者らの研究からアルコールに対する依存的行動嗜癖を誘導したマウスに対するγ-オリザノールの投与がアルコール嗜好を効果的に改善することが明らかになり、発明代表者として新規に特許獲得に成功した(アルコール依存症の予防薬及び治療薬並びにアルコール依存症の予防食品及び治療用食品(特許:第7244002号:登録日2023年3月13日)。アルコール依存状態のマウス脳においては主要ドパミン産生部位である腹側被蓋野に対するコリン作動性神経の入力が顕著に減弱しており、ドパミン分泌が減少していることを突き止め、γ-オリザノールが報酬系ネットワークにおいてアセチルコリン分解酵素(AChE)の活性を阻害する新規機能を見出した。さらに、この効果がマウスの空間認識能・新規物体認識能の改善と密接に関連していることが明らかになったことを踏まえ、その転写制御機構を解析中である。 とりわけ、γ-オリザノールがAChEプロモーター領域において抑制性転写因子Egr1を含む巨大蛋白質複合体形成を促進することが新たに判明し、Egr1に結合する転写因子群を網羅的に探索するためにDIAプロテオーム解析を実施して約1300の候補因子を抽出し、Egr1と直接結合する橋渡し因子としてp300及びCREBBPを同定することに成功した。現在、これらの因子を介してEgr1と結合する候補因子の拡大解析を行い、計5つの候補因子を抽出することにも成功しており、特にγ-オリザノールに結合する可能性が高い受容体型転写因子に着目してノックダウンや強制発現系を組み合わせてターゲット因子の絞り込みを実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
γ-オリザノールに結合する可能性が高い受容体型転写因子に着目し、ノックダウンや強制発現系を組み合わせて、ターゲット因子の絞り込みを本年度中に完了させ、γ-オリザノールが肥満に伴う認知機能低下を改善する新規の脳メカニズム、特に転写調節機構の全体像を明らかにし、研究成果を英文論文として公表出来るように取り組む計画である。 EVOOが肥満に伴う認知機能低下を改善する新規脳メカニズムに関しては、対照として玄米と米糠を麹菌で発酵させたFBRA (Fermented Brown rice and Rice bran with Aspergillus oryzae)を用いてマウス病態モデルを用いた検証を開始する。 研究代表者らは肥満の病態において消化管粘膜バリアと血液脳関門に共通するバリア蛋白群の機能異常が炎症惹起物質の脳内移行を阻止出来ず、脳内炎症を悪化させて認知機能を低下させる可能性に注目しており、この仮説の検証のため、高脂肪食肥満高齢マウスにEVOOを経口投与し、定期的にY Maze Test・Novel Object Recognition Test等による短期記憶認知機能評価を行い、その後、海馬、前頭前皮質、視床下部の血管領域における一連のバリア蛋白群のmRNA発現や蛋白発現レベルを評価する計画である。さらに、ニューロン・グリア細胞の病態連関に対するEVOOの改善効果を検証するため、海馬、前頭前皮質、視床下部(陰性対照)におけるミクログリア炎症マーカー、ミトコンドリア由来酸化ストレスマーカー、Tau蛋白リン酸化マーカー、IL-1β組織内濃度の変動を統合的に解析し、分子機序の一端を明らかにする計画である。
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Report
(1 results)
Research Products
(35 results)