Project/Area Number |
23K10953
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 59040:Nutrition science and health science-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
香川 慶輝 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (30728887)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 膵がん / フェロトーシス / 長鎖脂肪酸 / 多価不飽和長鎖脂肪酸 / リノール酸 / アルファリノレン酸 / 薬剤耐性 / 多価不飽和脂肪酸 / 抗腫瘍効果 |
Outline of Research at the Start |
膵がんは膵管細胞に様々な遺伝子変異が重複することで発生する。膵がんは自覚症状がほぼないため、診断時に進行がんとして発見され、外科的治療で切除困難な状態が多く見られる。その場合、放射線療法と化学療法の併用が主流の治療法となっているが、化学療法では継続的な抗がん剤投与による薬剤耐性獲得が治療の限局化を引き起こすことが問題となっている。そのため、膵がん患者の5年生存率は10%以下で、膵がんの予防・治療成績向上は喫緊の課題である。 そこで本申請では、腫瘍が持つ独特のエネルギー産生機構及び脂肪酸嗜好性を利用して、フェロトーシスを介した難治性膵がんに対する予防・治療法を目指した研究デザインを提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
膵がんは膵管細胞に様々な遺伝子変異が重複することで発生する。膵がんは自覚症状がほぼないため、診断時に進行がんとして発見され、外科的治療で切除困難な状態が多く見られる。その場合、放射線療法と化学療法の併用が主流の治療法となっているが、化学療法では継続的な抗がん剤投与による薬剤耐性獲得が治療の限局化を引き起こすことが問題となっている。そのため、膵がん患者の5年生存率は10%以下で、膵がんの予防・治療成績向上は喫緊の課題である。 長鎖脂肪酸は食事摂取により体内に取り込まれる他、生体内の様々な代謝経路を経て新たに生合成される。長鎖脂肪酸は骨格炭素の二重結合の数により飽和脂肪酸 (Saturated Fatty acids; SFA)と不飽和長鎖脂肪酸に分類され、不飽和長鎖脂肪酸はさらに一価不飽和長鎖脂肪酸 (Mono-Unsaturated Fatty Acids; MUFA)、多価不飽和長鎖脂肪酸 (Poly-Unsaturated Fatty acids; PUFA)に区別される。SFAやMUFAは化学的に安定した物質で細胞膜や脂肪滴の構成成分の大部分を占める。一方、PUFAは膜脂質にも含まれ膜流動性機能を担う重要な物質であるが、不安定で酸化されやい特徴を持つ。そのため、PUFAは細胞内活性酸素により過酸化脂質に変換され、フェロトーシスと呼ばれる細胞死を誘導する起因となりうる。また近年、分子機構は不明なままではあるが腫瘍細胞はMUFAの細胞内取り込みが活発になっており、それがフェロトーシス耐性の誘導に加え、薬剤耐性獲得に重要な役割を果すことが報告された。これは、腫瘍の生存性確保にむけた脂肪酸嗜好性を強く示唆するものである。 そこで本研究では、腫瘍が持つ独特のエネルギー産生機構及び脂肪酸嗜好性を利用して、フェロトーシスを介した難治性膵がんに対する予防・治療法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト膵がん細胞株に対する抗腫瘍効果をもつ長鎖脂肪酸を同定するため、炭素鎖18の長鎖脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファリノレン酸)を添加し、細胞増殖に対する効果を検討した結果、リノール酸とアルファリノレン酸添加で顕著な細胞増殖の減少が観察された。タイムラプスイメージングにより、細胞の形態学的変化を追跡した結果、これらの脂肪酸添加によりネクローシス・フェロトーシス様の細胞死を示すことを見出した。分子生物学的解析により、リノール酸・アルファリノレン酸添加はネクローシス関連細胞内シグナリングの活性化を誘導すること、一方で、フェロトーシスインヒビターの共投与は細胞内シグナリングの活性を抑制すると共に細胞保護の役割を果たすことが明らかになった。この結果は「リノール酸・アルファリノレン酸はフェロトーシスを介して膵がん細胞の増殖を抑制する」という新規の腫瘍生物学的知見をもたらした他、「長鎖不飽和脂肪酸によるフェロトーシスとネクローシスの密接な関係性」を示す新たな細胞生物学的知見につながる。 さらにリノール酸・アルファリノレン酸の抗腫瘍効果を薬剤耐性膵がん細胞および他の腫瘍細胞株(脳腫瘍、肺がん、大腸がん、皮膚がん等)で検討した結果、細胞腫間で、その効果は違えるものの、抗腫瘍効果がみられた腫瘍細胞ではフェロトーシスを介した細胞死誘導であることが確認できた。これらの結果は、腫瘍細胞ごとの脂肪酸嗜好性を示す結果と考えられる。本研究の成果はScientific Reports.2024 Feb 22;14(1):4409.で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルの実験で得られた結果を生体へ反映するため、膵がん細胞株の異種移植モデルおよび膵がん自然発症モデルであるPDX1-KRASG12D;Trp53R172H/+マウスを用いて、膵がん病態の進行を抑制できる効果的な脂質投与方法の開発を目指す。 また、2023年度の結果で得られた「腫瘍細胞ごとの脂肪酸嗜好性」をさらに詳細に解明するために各種脂肪酸が細胞内脂質動態にどのような影響を与えるか検討する。
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