Project/Area Number |
23K11306
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 62010:Life, health and medical informatics-related
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
藤原 伸一 鳥取大学, 医学部, 准教授 (00362880)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 結合自由エネルギー / pH依存性 / タンパク質 / アミノ酸 / 分子動力学 / MM/GBSA / プロトン化状態 / 分子シミュレーション |
Outline of Research at the Start |
タンパク質-リガンド複合体の形成を考える上で結合親和性は極めて重要であり、その結合親和性は溶液のpHにより異なりうる。本研究では、このpH依存的な結合親和性(結合自由エネルギー)を分子シミュレーションにより求める方法の確立を目指す。分子シミュレーションには、様々なpH条件下での立体配座を効率的に発生させることのできるレプリカ交換分子動力学シミュレーション(pH-REMD法)を用いる。本研究で提案する結合自由エネルギー計算法の有用性と限界を、複数のpHで結合親和性(実験値)が報告されているモデル複合体(barnase-barstarシステム)を用いて検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、タンパク質-リガンド複合体形成に関わる結合自由エネルギーの、pHの影響をとりいれた計算法の確立である。そのために、自由エネルギー計算用の立体配座を、複数のpH一定の分子動力学シミュレーション(CpHMD)を並行して行うpHレプリカ交換分子動力学シミュレーション(pH-REMD)により発生させることを提案している。 当該年度は、pH-REMD計算の実施に先立ち、結合自由エネルギー計算(MM/GBSA)の結果を統計学的に評価する方法を確立した。この評価法を用いて、pHの影響をとりいれた結合自由エネルギー計算法(CpHMD計算に基づく方法)の有用性を検証した。具体的には、エノイルレダクターゼを標的とした一連の化合物群を対象として解析を行い、CpHMD計算から得られる立体配座群のデータをMM/GBSA計算に用いる方法では、従来法に比べて実験値との相関が高いことを確認した。並行して、エノイルレダクターゼの分子モデルを用いて、CpHMD計算における溶媒の扱い方を検討した。水を陰溶媒として扱う方法(implicit)に比べて、分子として明示的に扱う方法(explicit)のほうが実験値との相関が高いことを確認した。 また、本研究において、pH-REMD法を利用した結合自由エネルギー計算法の検証に用いる分子モデル(barnase-barstar分子複合体)の構築に着手した。具体的には、初期構造の選定、プロトン化状態を考慮すべきアミノ酸残基の絞り込み、CpHMD計算におけるpH値など計算条件の設定を行った。 並行して、本研究で用いているCpHMD計算をタンパク質構造・機能解析に応用した。具体的には、ヒトヘモグロビン分子を対象にCpHMD計算を行い、ヘモグロビン分子のT/R立体配座のとりやすさに、一部のヒスチジン残基のプロトン化状態が関与している可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 結合自由エネルギー計算における統計学的評価法の確立:本研究では、結合自由エネルギー計算法(MM/GBSA)において方法間の比較を行うが、結合自由エネルギー計算値が計算回ごとに異なることを経験した。この状態では方法間の比較が困難であるため、その対策について文献調査した。その過程で、複数回の結合自由エネルギー計算結果を統計的に処理し、ロバストな評価を行う方法を見出した。この方法をエノイルレダクターゼを対象とした解析にとりいれ、結合自由エネルギー計算における方法間の比較検証が可能であることを確認した。 2. 溶媒の扱い方の確立:上述1において結合自由エネルギーにおける方法間の比較検証法を確立したことにより、溶媒の扱い方についても比較検証が可能となった。エノイルレダクターゼを対象とした一連の結合自由エネルギー計算を通して、水を陰溶媒として扱う(implicit)方法に比べて分子として明示的に扱う(explicit)方法のほうが実験値との相関が高いことを確認した。以降のbarnase-barstar複合体の解析では水をexplicitに扱う方針が定まった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、プロトン化状態をとりいれたpH依存的結合自由エネルギー計算の有用性と限界を明らかにすることである。そのために、前年度に構築したbarnase-barstar分子複合体モデルを対象に、以下の3通りの計算法を実施する。 1. プロトン化状態が不変の従来法:アミノ酸残基のpKa値とpHからプロトン化状態を一通りに定めて分子動力学(MD)計算を行う 2. CpHMD計算による方法:各pH条件でアミノ酸残基のプロトン化状態を変化させながらCpHMD計算を行う 3. pH-REMD計算による方法;各pH条件でpH-レプリカ交換を行いながらCpHMD計算を行う 各方法について、それぞれ立体配座とプロトン化状態に関する情報が得られる。この情報をもとに結合自由エネルギー計算を行い、実験値との比較や方法間の比較を行う。一連の解析を通して、本研究計画で提案している方法(上記3)の有用性と限界を明らかにする。
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