Project/Area Number |
23K11393
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63010:Environmental dynamic analysis-related
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
一宮 睦雄 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30601918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小針 統 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (60336328)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 珪藻コロニー / 黒潮 / 動物プランクトン / 赤潮 / コロニー形成性珪藻 / 植物プランクトン / 仔魚 |
Outline of Research at the Start |
黒潮と沿岸のフロント域では、数cmに達する大型珪藻コロニーが発生する。コロニー発生海域と回遊性魚類の産卵場はよく一致することから、コロニーを起点とした食物連鎖があると予想される。しかし、コロニーは極めて脆弱であるため、常法では定量が困難であった。本研究では黒潮が接岸する薩南海域でコロニーを非破壊的に採集することにより、「黒潮-沿岸フロント域における珪藻コロニーの発生機構」および「珪藻コロニーを起点とした食物連鎖の解明」に挑戦する。コロニーの発生メカニズムおよび餌資源としての重要性を評価し、「海の砂漠」である黒潮に出現する「巨大珪藻のオアシス」という新たなメカニズムを提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
[珪藻コロニーの発生機構] 黒潮と沿岸域の境界(フロント)域で大発生する珪藻コロニーの発生要因を明らかにするため、黒潮由来の暖水による影響を受ける水俣湾においてコロニー形成性珪藻Thalassiosira diporocyclusの季節変動を調査した。その結果、T. diporocyclusは11月にブルームを形成し、他の季節には現存量が低くなることを見出した。夏季には現存量は低くなるものの、本種が周年にわたって栄養細胞として湾内に分布することが明らかとなった。 T. diporocyclusの増殖特性を明らかにするため、水俣湾に分布するT. diporocyclusの細胞をピックアップし、培養株を確立した。様々な環境要因で室内培養実験を行った結果、T. diporocyclusは水温15-27℃、塩分25-35の範囲で増殖できることを確認した。水俣湾の海洋環境はほとんどの場合この範囲であることから、T. diporocyclusは常に増殖できる環境にあると推察された。一方で、T. diporocyclusを含むコロニー形成性珪藻の最大増殖速度は、他の他の沿岸域の珪藻類よりも低いことが明らかとなった。
[珪藻コロニーを起点とした食物連鎖の解明] 黒潮分枝流が流れる薩南海域において、珪藻コロニーの発生機構を明らかにするため、鹿児島大学南星丸2月および3月航海に参加した。鹿児島湾口から黒潮分枝流域にかけて、海洋調査をおこなった。このとき、生物へのダメージを少なくするよう設計された飼育用プランクトンネットを用い、非破壊的にコロニーを採集することに成功した。 珪藻コロニーの主要な捕食者を特定するため、南星丸2月および3月航海において、動物プランクトン自然群集を採集した。このとき、採集された珪藻コロニーを用いて、船上で動物プランクトンへの摂餌実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水俣湾におけるT. diporocyclusの季節変動を調べることによって、本種が周年に渡って栄養細胞が見いだされた。これまで、本種の非増殖期における研究は少なかったことから、生残戦略は不明であった。本研究によって、本種は常に湾内に分布することが初めて明らかとなった。さらに、確立された培養株を用いて、T. diporocyclusの増殖特性を明らかにすることができた。T. diporocyclusは最大増殖速度が低いにもかかわらず、多くの沿岸域で赤潮を形成することから、コロニー形成は動物プランクトンに対する捕食抵抗の戦略であることを示唆することができた。 鹿児島湾周辺海域の分布調査において、非破壊的に珪藻コロニーを採集することに成功した。本成果によって、より定量的にコロニーを計数することができ、摂食実験に用いるコロニーを効率的に採集することができた。 本年度の調査・研究で得られた成果により、すでに国内学会3回、国際学会10回の学会発表を行っている。さらに、珪藻に関する論文を国際誌Progress in Oceanographyに受理されるとともに、水俣湾におけるT. diporocyclusの季節変動と増殖特性に関する論文を作成し、国際誌Plankton & Benthos Researchに論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
[珪藻コロニーの発生機構] 次年度以降は、引き続き水俣湾で調査を行い、サンプル処理およびデータ解析をすすめる。コロニー現存量と環境要因との関係を解析し、珪藻コロニーの発生機構解明をすすめる。また、確立された培養株を用いて、コロニー形成過程を明らかにする。様々な培養条件化で室内実験を行うことによって、コロニー形成を促進する環境要因を明らかにする。
[珪藻コロニーを起点とした食物連鎖の解明] 南星丸2月および3月航海で採集したサンプル処理およびデータ解析をすすめる。動物プランクトン自然群集の消化管内容物の観察およびDNA解析によって、コロニーの主要な捕食者を特定する。コロニーの主要な捕食者と特定された動物プランクトンのコロニーに対する被食速度を明らかにする。2025年度南星丸航海に乗船し、コロニーの採集、培養株を用いた摂食実験を行う。 昨年度に取得した成果をNorth Pacific Marine Science Annual meeting およびプランクトン学会等等で発表するとともに、論文化に着手する。
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