Project/Area Number |
23K11449
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63040:Environmental impact assessment-related
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山口 一岩 香川大学, 農学部, 教授 (50464368)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 超高頻度観測 / 光環境 / 栄養塩類 / 植物プランクトン動態 / 光・栄養塩環境 |
Outline of Research at the Start |
本課題では,季節成層を成す瀬戸内海・香川県域内湾の岸沿い(岸壁)に定点を設け,光・栄養塩環境と植物プランクトン動態について,年間約300日の超高頻度観測を実施する。超高頻度観測を通じて,1年のうちに定点で起きる全ての不意の一過性イベントと,その時の水質状況を漏れなく捕らえることを試みる。以上を通じて,対象海域の光・栄養塩環境と植物プランクトン動態の周年変動の「実像」に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
香川県志度湾内の漁港岸壁に定点を設けて,年間300日以上の観測を実施した。表底層の水温・塩分,水中光環境(水中光消散係数の試算と天空光量子量の計測),表層栄養塩類濃度,植物プランクトン量の指標として表層クロロフィルa(Chl-a)濃度の経日変動を明らかにした。加えて,植物プランクトン群集組成に関する調査も月2回の頻度で実施した。 志度湾沖合定点(月1-2回頻度で観測)における水質データとの比較から,岸壁に設けた高頻度観測定点は志度湾沖合の様子を概ね反映していることを示した。但し,不連続的な塩分低下が時折生じると共に,最不足栄養塩・溶存無機態窒素(DIN)濃度が沖合より高めであることから,岸壁定点は沖合に比して陸域由来の淡水や窒素の新規供給をより敏感に表すことも明らかにした。 DINとChl-a濃度について1週間移動平均値を算出し,その経時変動を4月-9月中旬頃迄の「成層卓越期」と,それ以降の「混合期」の二期に分けて解析した。成層卓越期においては,塩分低下等を契機とするDIN濃度の上昇がChl-a濃度の上昇を生む傾向がしばしば認められた。一方,混合期の両者の消長は相反的で,Chl-a濃度の上昇がDIN濃度の低下を生む傾向が強かった。すなわち,成層卓越期は栄養塩の多寡が植物プランクトン量を支配しがちである一方,混合期は逆に植物プランクトンの多寡が栄養塩濃度の一主要支配因子である傾向が高頻度観測から示唆された。植物プランクトン群集組成の解析から,植物プランクトン量の変動は,突発的に生じた渦鞭毛藻綱によるブルームを除くと,珪藻綱の増減に強く依っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
漁港岸壁に設けた定点において,水中の光環境,栄養塩濃度,そして植物プランクトン動態という「三つ揃え」のデータセットを,年間300日以上の頻度で取得することができた。超高頻度での観測を実施したことにより,定点で起きた栄養塩や植物プランクトンに関する年間イベントは,ほぼ漏れなく捕らえることができたと考えられる。すなわち,1年間における定点の環境変動の「実像」を把握することに成功したと見做せるが,これは月1回程度の頻度での観測では達成し得ないことである。観測の結果,岸壁定点でのモニタリングが漁港周辺の局所情報に留まらず,主たる着目域である志度湾(沖合)の様子を解析する上で有効であることを支持するデータも得られた。特にDINに関しては,成層卓越期の沖合では常時枯渇しているためにその動態を追うことが困難なため,岸壁定点においてモニタリングを実施することも利点も見出された。 以上の諸点を踏まえて,本研究は現時点において概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では,光,栄養塩,植物プランクトン動態を1セットとして,定点で起きる全ての事象とそのときの水質状況を漏れなく捕らえることを意図している。また,この記録を3年にわたって取得し続けることにより,不定期イベント(の影響)を内包する形で,沿岸域環境の周年変動の特徴を捉え直すことを目指している(一部項目については本助成事業前の成果を加えると4年分)。この目的達成に向けて,研究2年目に当たる今年度についても,岸壁に設けた定点において1年目と同様の超高頻度観測を実施する予定である。 これまでのところ,各種環境データを順調に取得することができている点において,計画を順調に進めることができている。但し,現時点においては,高頻度観測を通じて捕らえることができた各イベントの成因・起りに関して,十分に説明することができない事象も多い。例えばその代表として,9月半ばに起き,その後数日で消滅したギムノディニウム目による赤潮現象が挙げられる。今後,一部の未分析項目の分析を進めると共に,取得したデータの解析や,丹念に進めていく予定である。また,植物プランクトン群集組成についても,珪藻類の優占性の変動や,出現する属組成の変化に着目した解析を進めていく予定である。
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