Project/Area Number |
23K11482
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64020:Environmental load reduction and remediation-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
竹内 謙 東京理科大学, 教養教育研究院北海道・長万部キャンパス教養部, 教授 (80339134)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ホタテ貝殻 / 非晶質 / コンピュータシミュレーション / ストロンチウム / 吸着機構 / 原発汚染水 |
Outline of Research at the Start |
本申請者は、これまで大量に廃棄されるホタテ貝殻を資源化することを目的に研究を行なってきた。その過程でホタテ貝殻の粉末がストロンチウム(Sr)を吸着することを世界で初めて見いだした。本申請者の最終目標は、この貝殻を原料とする放射性Sr吸着材を開発し、稼働中の原発周辺にその吸着材を埋設することで、万が一の事故の際のSrの漏出を防止し、原発の安全に寄与することである。しかし、漏洩防止に役立つレベルまで吸着能を向上させるためには、吸着機構を知る必要がある。そのため、研究費受給中の達成目標は、高エネルギーX線散乱、中性子散乱、シミュレーションを用いて、ホタテ貝殻粉末のSr吸着機構を解明することである 。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請者は、大量に廃棄されるホタテ貝殻を資源化することを目的に研究を行なってきた。その過程でホタテ貝殻が粉砕時に非晶質化し、ストロンチウムを吸着することを見いだした。しかし、その吸着機構は未だに不明である。そこで、中性子とX線による散乱測定と、Molecular Dynamics(MD)法とReverse Monte-Carlo(RMC)法のコンピュータシミュレーションにより、非晶質炭酸カルシウム内でのストロンチウムの位置と、取り込まれる過程を解析し、ホタテ貝殻によるストロンチウムの吸着機構を解明することが、本研究の目的である。 2023年度は、まだ本科学研究費の助成を受ける1年目であり、大きな成果を挙げるというよりは2年目と3年目に向けて、着実に準備を進める期間として捉えている。 2023年度は、京都大学に赴き、MD法とRMC法の計算に供するアプリケーションのうち、どのタイプのものが中性子散乱とX線散乱の結果の解析に用いるのが適当であるかを研究協力者と議論し、その計算に最適なコンピュータの機種の選定を行った。 この議論は、Oak Ridge National LaboratoryのSpallation Neutron Sourceの中性子散乱結果と、高輝度光科学研究センターSPring-8の高エネルギーX線の散乱測定結果を用いて、MD法とRMC法を行うためには必須のものであり、吸着機構解明のためには極めて重要である。 その議論に基づき、シミュレーションに特化したコンピュータを購入した。また、計算結果をグラフィック化し、解析をするためのコンピュータの購入もおこなった。さらに、結晶や非晶質の構造をグラフィック化するためのアプケーションを購入した。これらは、吸着機構解明のためのシミュレーション実行には必須である。これらを用いて2024年度と2025年度に本格的なシミュレーションを行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は2023年度の学生長期休暇期間中を利用し、国内外で測定や結果解析も行うことを念頭においていた。しかし、その休暇期間に入る直前に本申請者が新型コロナ感染症に罹患し2ヶ月程度、体調不良の状態が続いたため、国内外で測定に関しては、来年度以降に延期することとした。それとともに、最終年度に主に行う予定だったコンピュータシミュレーションを前倒しで開始することとした。したがって、当初の予定とは順序は異なるものの、研究期間の3年間をトータルで見た場合、大きな遅れは生じていないと考えている。 2023年度は、これまでにOak Ridge National LaboratoryのSpallation Neutron Source で測定した中性子散乱と、高輝度光科学研究センターSPring-8の高エネルギーX線の散乱測定結果に関して、京都大学に赴き研究協力者と議論を行なった。また、Molecular Dynamics(MD)法とReverse Monte-Carlo(RMC)法の計算に供するアプリケーションのうち、どのタイプのものが中性子散乱とX線散乱の結果の解析に用いるのが適当であるかをこの研究協力者と議論した。また、その計算に最適なコンピュータの機種の選定を行った。本申請者の本務地から京都大学までの移動に本科学研究費を用いた。 研究協力者との議論に基づき、シミュレーションに特化したコンピュータを購入した。また、計算結果を実際に詳細にグラフィック化し、解析をするためのコンピュータの購入も行なった。さらに、結晶や非晶質の構造をグラフィック化するためのアプリケーションの購入も行った。これらのコンピュータとアプリケーションの購入に本科学研究費を用いた。これまでに得られた結果を基に、炭酸カルシウムの結晶と非晶質の構造、および、その一部がストロンチウムに置換した構造に関して、グラフィック化を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前項の「現在までの進捗状況」にも記した通り、研究遂行の順番は変更になり、当初計画では2023年度に行う予定だった各種散乱測定は、2024年度以降に行うこととした。一方で、当初計画では2025年度に行う予定だったMolecular Dynamics(MD)法とReverse Monte-Carlo(RMC)法によるコンピュータシミュレーションを前倒しし、2023年度と2024年度にも行うこととした。ただし、当初は2025年度にコンピュータシミュレーションを行うつもりだったために、シミュレーション用のアプリケーションの購入などが、2023年度中は間に合っていない。そこで2024年度には、このシミュレーション用のアプリケーションを購入し、計算を本格化する予定である。 また、2024年度と2025年度は米国渡航し中性子散乱測定と解析を行いたい。ただし、中性子散乱では水素は非干渉性散乱をするので使用できず、吸着実験では重水を使用する必要がある。この重水と2024年度と2025年度の渡航の際の旅費を本助成金で賄いたい。 2024年度と2025年度には、SPring-8およびORNLで得た散乱の詳細なG(r)を得、そのG(r)を再現するRMC法シミュレーションを行う。ここから、ホタテ貝殻粉末上の非晶質の微視的構造を可視化しストロンチウムの位置を特定する。さらに、MD法シミュレーションにより、ストロンチウムの非晶質へ固体内拡散過程を明らかにする。以上のようにして、2025年度末までには、非晶質炭酸カルシウム内でのストロンチウムの位置と、取り込まれる過程を解析し、原子レベルでストロンチウムの存在位置(Where)と、ストロンチウム水溶液から非晶質CaCO3にストロンチウムが入る様子(How)を明らかにすることで、ホタテ貝殻が希薄なストロンチウム水溶液からストロンチウムを吸着する機構を解明する。
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