Project/Area Number |
23K11625
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80020:Tourism studies-related
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
紀平 知樹 兵庫県立大学, 看護学部, 教授 (70346154)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2026: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 実存 / 観光 / 滞在 / 技術 / 観光倫理学 / エートス / 真正性 / 現象学 |
Outline of Research at the Start |
コロナ禍で一時下火になったとはいえ、観光は現代社会において様々な面で重要な地位を占めている。本研究課題では、その観光という事象を取り上げ、それがどのような性格を持つものなのかを、特に倫理的観点から明らかにすることを目指す。 観光研究はこれまで観光を社会をその裏面から映す鏡として考察してきた。いまや観光は社会の表舞台に躍り出ており、その影響も大きくなってきているので、社会全体の倫理を考察するための手がかりとして適切な考察対象である。その考察を通して、観光の倫理とともに、観光が主役に躍り出た社会の倫理を明らかにすることが本研究課題が目指すところである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、観光のエートスを明確に示した上で、観光倫理学の構築を目指している。とくに本研究ではまずは現象学者の観点から観光のエートスを明らかにすることを課題としている。そこで2023年度は、ハイデガーの哲学を観光の哲学として読み直すことを試みた。従来の観光研究においてハイデガーは実存的真正性の哲学的基盤としてたびたび参照されてきた。しかしそこでの実存は、真なる自己や観光対象とは明確に区別されたものとしての観光経験のことを意味しており、必ずしもハイデガーの実存思想が的確に理解されているとは言い難い状況であった。そこで彼の実存概念と観光を結びつける別の可能性を探るために、ハイデガーのギリシア旅行記『滞在』を手がかりにした。ハイデガーがギリシア旅行で、滞在の可能性を奪われたと述べる一文から、観光が人間存在にどのようなあり方を強いているのかを明らかにしようとした。上記内容を観光学術学会第12回大会で発表した。またその内容を現在投稿準備中である。 さらに、ハイデガーの技術論を観光論として解釈する可能性を探った。ハイデガーは現代技術の例としてライン川の水力発電をあげているが、しかしライン川を徴用するのは水力発電だけではなく、観光産業もまたライン川を徴用することに言及している。そこから、観光はハイデガーのいう「技術」のひとつであると考えることができる。そして、そうであるとすれば技術の危機に対する救いとして芸術があげられているように、芸術としての観光というあり方を考えることもできるだろう。これは芸術を見る観光ではなく、観光そのものが芸術であるような観光である。こうした内容については、リアリティの哲学、時間・偶然研究会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度である2023年度の予定としては、主として文献研究によって観光のエートスを明らかにすることを目的としていた。そしてその結果、観光がハイデガーのいう技術の一種であることを見いだしたことは、大きな発見であるといえるだろう。その視点をとることで、観光のエートスを明らかにする足場を作ることができたといえるだろう。またその成果を予定していた観光学術学会で発表できたことで、当初の研究は概ね順調に進展していると評価できる。ただし、その成果を論文化する作業を行っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度以降も引き続き文献研究を行い、観光のエートスを明らかにしつつ、その成果を踏まえて観光倫理学の構築を図っていく。観光のエートスの解明に関しては現象学的な観点を基本とするが、観光研究の諸成果についても十分目配りをする必要がある。また観光倫理学の構築に向けては、先行する応用倫理学の特質、特にその対象や基本原理を吟味し、観光倫理学の独自性をどこにおくべきかを明らかにしたい。 文献研究と並行して、実際の観光経験の調査も行っていく必要がある。そのためには観光客(ゲスト)の経験とともに、ホストの経験も考察する必要がある。この調査については、ホストの経験は比較的着手しやすいが、観光客の経験については、どのように研究対象者を募るかを検討しておく必要がある。場合によっては様々な旅行記などを観光経験の分析のテクストとすることも考えられる。
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