Project/Area Number |
23K11713
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80040:Quantum beam science-related
|
Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
木村 敦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (60465979)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
|
Keywords | 量子ビーム / ペプチド / ナノ粒子 / がん診断薬 / がん治療薬 / ナノセラノスティクス / 量子技術 / 架橋 / 生体材料 |
Outline of Research at the Start |
生体適合性が高く組成制御が可能なペプチドを母材として選択し、量子ビーム(放射線)により薬剤送達性と薬剤徐放性を精密に制御したナノ粒子を創製することで、診断と治療を一体化した新規ナノ・セラノスティクス薬剤の開発を目的とする。本研究により、量子ビーム架橋技術を基盤とした医療・創薬応用研究の更なる進展を促し、健康長寿社会の実現に貢献する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞接着性、分配係数制御、表面電位制御、量子ビーム改質部位でそれぞれ構成された独自のペプチドを分子設計・合成し、量子ビームにより薬剤送達性と薬剤徐放性を精密に制御した粒子を創製することで、新規ナノ・セラノスティクス薬剤の研究開発を目的とする。 令和5年度は、新規ナノ・セラノスティクス薬剤の母材となるペプチドの合成と量子ビームによる粒子化を行った。分子軌道計算を利用してペプチドの安定状態における分配係数を計算するとともに、適切な表面電位・細胞接着性・芳香族アミノ酸残基の含有量を有するペプチドを分子設計・合成した。合成した各種ペプチドの水溶液に量子ビームの一種であるγ線を照射して、ペプチドナノ粒子を作製し、動的光散乱法、電気泳動動的光散乱法より、その粒径と表面電位を評価した。 また、ペプチドナノ粒子の薬剤送達性を評価するため、作製した量子ビーム架橋ペプチドナノ粒子を難治性がんであるすい臓がん細胞PANC1と共培養することで、粒子の細胞集積性(=薬剤送達性)を評価した。各種ペプチドナノ粒子に配位子であるDOTAを修飾し、トレーサーとしてガドリニウムイオンを担持した。ナノ粒子をすい臓がん細胞集積後に湿式熱超音波処理を行って細胞及びタンパク質を分解し、遊離したガドリニウムイオンをICP-MSで分析することにより、細胞内への粒子の集積量を正確に定量分析した。 さらに、ペプチドの薬剤徐放性制御要因の解明の一環として、パルスラジオリシス法により、ペプチドの架橋部位由来の吸収スペクトルの時間変化を直接観測することで、ペプチドの架橋反応速度を評価した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、独自に分子設計したペプチドを合成し、量子ビームにより薬剤送達性と薬剤徐放性を精密に制御した新規ナノ・セラノスティクス薬剤の研究開発を目的とする。この大目標を達成するために、令和5年度では(1)ペプチドの合成と量子ビームによる粒子化、(2)ペプチド粒子の薬剤送達性制御要因の解明、(3)ペプチド粒子の薬剤徐放性制御要因の解明に関する実験を開始した。 (1)ペプチドの合成と量子ビームによる粒子化については、独自に分子設計したペプチドに量子ビームを照射することで、粒径約50 nm、負の表面電位、粒径安定性、生分解性を有するペプチドナノ粒子の作製に成功した。この粒子は蛍光色素やMRI造影能を有するガドリニウムを担持することもできたため、がん診断薬として利用可能である。 (2)ペプチド粒子の薬剤送達性制御要因の解明に関する実験では、(1)で開発したペプチドナノ粒子を実際のすい臓がん細胞に導入し、その集積率を評価した。その結果、ペプチドナノ粒子ががん細胞内に集積した様子を蛍光顕微鏡で観察することに成功した。さらに、質量分析によりペプチドナノ粒子のがん細胞内への集積量を定量することに成功した。 (3)ペプチド粒子の薬剤徐放性制御要因の解明に関する実験では、協力研究者の協力を得て、東京大学原子力専攻のLINAC照射施設において、ペプチドの架橋部位由来の吸収スペクトルの時間変化を直接観測することで、ペプチドの架橋反応速度を評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進行しており、令和5年度では(1)ペプチドの合成と量子ビームによる粒子化を完遂することができた。次年度以降は(2)ペプチド粒子の薬剤送達性制御要因の解明、(3)ペプチド粒子の薬剤徐放性制御要因の解明をさらに進める予定である。 具体的には、架橋密度の異なるペプチド粒子を量子ビームにより作製し、コラゲナーゼなどの酵素とともに37℃、PBS中で数日間共培養し、酵素分解速度を評価する。これにより、ペプチド粒子の架橋密度と生分解性=薬剤徐放性の相関を明らかにすることで、薬剤徐放性に優れたペプチドナノ粒子を開発する。 さらに、量子ビームで開発したペプチドナノ粒子にがん診断薬を担持し、さらにがん治療薬の一種であるシスプラチンを担持することで、診断と治療を同時に実現するナノセラノスティクスを開発する。開発したナノセラノスティクス製剤を実際のがん細胞に投与し、集積率や薬理効果を評価する。
|