Project/Area Number |
23K11814
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90110:Biomedical engineering-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大橋 一徳 日本大学, 歯学部, 助教 (90617458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 由香 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (10718547)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 血液脳関門 / 経頭蓋直流電気刺激法(tDCS) / 経頭蓋直流電気刺激法 |
Outline of Research at the Start |
本研究では頭蓋上に置いた経頭蓋直流電気刺激(tDCS)電極の極性を切り替えることで、標的領域における血液脳関(BBB)透過性の操作を試みる。これにより血中内容物の脳実質への漏出抑制、または一時的な促進効果の有無を検証し、臨床領域における中枢疾患の予防、治療の基盤技術として「開くことで薬剤を患部へ供給する」「閉じることで疾患の進行を妨ぐ」BBBの透過性を任意に操作する技術の確立を目指す。提案手法の実用性が実証されれば、BBB透過性の抑制、促進を電流極性の切替えで簡便かつ即座に実現する新たな技術を臨床現場へ提供することができる。
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Outline of Annual Research Achievements |
血液脳関門(BBB)は血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトによって構成される構造体であり、血液中の分子の脳実質への透過を厳密に制御することで、中枢の恒常性を維持している。近年、BBBの破綻は精神疾患や認知症など社会問題化している中枢疾患の共通の病態として注目されるようになってきたが、BBBの透過性が亢進した状態を元に戻すことは困難で、破綻の直接修復方法はほとんど報告されていない。そのため、多くの研究はBBB破綻に伴う有害反応の阻止や予防を目標としている。一方、臨床現場ではBBBが薬剤効果を低下させる一因となっており、一時的な機能解除が薬物治療の課題となっている。このようにBBBが関わる中枢疾患の予防と治療には、BBBの開閉という相反する2つの操作を場合に応じて任意に行える技術が必要とされている。経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)は電流極性依存的に異なる向きの電流を大脳皮質内に発生させることで、電極直下の皮質反応性を操作的に変化させる非侵襲脳刺激法である。近年、動物を用いて、その作用機序の研究が盛んに行われている中、tDCSが脳質構成細胞以外にBBBの構成要素である脳血管内皮細胞にも電流極性依存的に直接作用することが明らかにされた。本研究はtDCSによるBBB透過性の任意操作と臨床応用は可能かという問いを設定し、その可否を検証することを目的としている。今年度はtDCSがBBB透過性に影響するかを大脳皮質全体で評価し、電流極性に応じてBBBの透過性が有意に変化することを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はtDCSが電流極性依存的に脳血管内皮細胞に影響を及ぼすという現象を利用し、tDCSによるBBB透過性の任意操作と臨床応用可能性を検証することを目的としている。予備実験において、BBBの透過性がtDCSの電流極性に応じて変化する結果を得ていたが、少数動物を使用した局所での変化を確認したのみで、変化の統計的有意性や大脳皮質全体で透過性の変化が起こっているかどうかの検証は行っていなかった。そこで、今年度ではtDCSによるBBB透過性変化が大脳皮質全体のレベルで検出可能か定量的に評価した。まず、動物に蛍光色素を注入し、その後tDCSを適用した。tDCSから1時間後、経心腔的灌流を生理食水で行い血管内の色素を洗い流した皮質のホモジネートを作成した。BBB透過性の定量化はホモジネートの蛍光強度を検出することで行った。その結果、tDCSの電流極性を変えることでBBB透過性が大脳皮質全体のレベルで有意に増加/減少することが明らかとなった。 次に、本研究で使用している電流密度はヒトtDCSで使用されている強度より計算上1桁弱いが、tDCS適用部位に対応する大脳皮質に無害であるかどうかは不明であることから、tDCSの安全性を実際に組織染色を行うことで検証した。その結果、本研究で使用しているtDCS電流強度の範囲において大脳皮質における出血や細胞死など明らかな損傷は発生しないことが明らかになった。本結果はtDCSによるBBB透過性の任意操作の可能性を示唆しており、それゆえおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果より、tDCSによってBBB透過性を任意に操作することが可能であることが示唆された。次年度は影響の範囲とその操作性を検証する予定である。具体的には脳内のどの領域のBBBの透過性が変化したかを蛍光免疫染色により同定し、局所電極を使用することで、任意の脳領域のBBB透過性を操作可能かどうかを二光子顕微鏡を用いたイメージングによって評価する。また、検出されたBBB透過性の向上が生物学的に意味のあるものかどうかを明らかにするため、通常BBBを通過できず中枢神経系に作用しない薬物投与後、tDCSを適用することで中枢組織へ薬物を到達させることを試みる。中枢への薬物到達評価は組織染色または行動試験によって行う予定である。
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