Project/Area Number |
23K11993
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮田 晃碩 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (80973643)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | ハイデガー / 言語 / 語り / エコクリティシズム / 石牟礼道子 / ナラティブ・アプローチ |
Outline of Research at the Start |
私たちは日常的に「誰が語りの主体なのか」を特に問わず、話し手や書き手が語りの主体であると受け止めている。しかしそれは自明のことではない。実際、文学研究や臨床実践についての研究ではその点が問われている。さらに「誰」の問いのみならず「語りの主体とは何か」までもが問われうる。 本研究ではこの点について、ハイデガーの言語論を手がかりに考えてゆく。「人間が語るのではなく言語が語るのだ」というラディカルな主張が再考の鍵である。石牟礼文学やナラティブ・アプローチについての具体的な研究から語りの主体についての問いを立ち上げ、それに答える形でハイデガーの言語論の内実と意義を明らかにすることが目的である。
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Outline of Annual Research Achievements |
1年目(2023年度)はまず石牟礼のテクストに関して、「聞き書き」の文体のみならず、テクストの語り手による他者の描写においても、単に個人を語りの主体とみなす言語観に抗うものを見出した。特に様々な原因から言葉を奪われた他者と対面する場面で動植物の形象が比喩的に用いられるところには人間の言語能力を超えた訴えが表されており、語り手の言葉がその外部の呼びかけに応ずるものとして記されていることが見て取れる。この検討は一部を国際学会において口頭発表し("Dis/affinity with plants and animals," Network of Asian Environmental Philosophy, 2023年11月)、また論文として成果を発表した(「他者を描くことの倫理」『文学と環境』第27号、2024年6月[予定])。加えて本年度は石牟礼のテクストにおける様々な資料からの引用に着目し、資料調査を行った。 ハイデガーの言語論に関しては、それが風土の「価値」についての私たちの語りを理解する際に示唆を与えることを明らかにした。風土についての語りは、自律的な評価主体が風土を客体として評価するのではなく、むしろその語り自体が風土(ないし「大地」)に支えられつつその語りにおいてはじめて風土が立ち上がるという相互的なものでありうる。この内容はワークショップにおいて口頭発表した(「川の「価値」についての語りをどう聞くか」水と空気を考える会、2023年11月)。 以上の成果はエコクリティシズムにおける石牟礼研究に貢献するとともに、ハイデガーの言語論の示唆を具体的な諸事例に即して明らかにするものであり、その点で文学と哲学を架橋しながらハイデガー研究を進展させるものであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目から2年目にかけては、後期ハイデガーの言語論が「語りの主体」に関していかなる示唆をもたらすのかを、石牟礼道子の文学テクストの読解に即して展開することを計画していた。当初の計画ではまずハイデガーの言語論に関する研究を進め、つづいて石牟礼のテクストの検討に取り組む予定であったが、実際研究を進めるにあたってまず理論よりも具体的なテクストに取り組む必要を感じ、順序を逆にして取り組んだ。その結果1年目である本年度は石牟礼のテクストの検討に関しては計画以上に進み、ハイデガーの言語論に関しては計画より遅れているが、総合的に見ればおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる来年度はハイデガーの言語論が文学研究および批評の文脈でいかに受容・展開されてきたかを検討し、その示唆を明らかにしたい。1年目に得た成果とあわせて検討することで、ハイデガーの言語論が「語りの主体」に関していかなる示唆を与えるのかを石牟礼のテクストに即して明らかにするという目標を達成する。この成果について年度内あるいは次年度の頭に論文の形で発表することを目指す。 また3年目以降には社会学における「語り」の研究を取り上げ、そこでの洞察に照らしてハイデガーの言語論を検討する予定であるが、そのことを視野に入れて調査に取り組む。
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