Project/Area Number |
23K11996
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
Jannel Romaric 京都大学, 人文科学研究所, 京都大学人文学連携研究者 (10972151)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 京都学派 / 主体 / 主体性 / 環境 / 三木清 / 西田幾多郎 / 今西錦司 / 和辻哲郎 / 主観 / 自然 |
Outline of Research at the Start |
日本哲学史に関するこれまでの研究は、京都学派における「無」「絶対無」「空」といった観念に注目してきた。だが、京都学派の哲学者らがこのような概念を使用するようになったのは、そもそも人間(個物)と環境(その世界)との問題を明らかにするためであった。本研究の目的は、京都学派を人間と環境との問題を中心とした哲学運動として再解釈することである。そのために、京都学派を「主観・主体/自然・環境」を中心とした哲学運動として記述する。人間が環境において行う諸々の実践を今までない新たな方法で理解できるようになることを目指す。この新たな理解によって環境問題の解決に寄与する新たな視座を提示することが目標である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究を開始するにあたって、まずは本研究の中心的テーマである京都学派における「主観-主体/自然-環境」の四概念について考察を行うための、土台作りを行う必要があった。そこで本研究初年度である2023年度は、京都学派における主体(性)概念の哲学史を辿ることに注力し、特に、三木清がどのような過程において主体または主体性概念を導入したか、そして彼がなぜこの概念を導入しなければいけなかったのかを明らかにすることを課題とした。この課題に取り組むにあたって、本研究は、三木哲学を二つの側面から検討した。すなわち、(1)三木によるマルクス哲学の受容と、(2)ハイデッガーの「存在論的」と「存在的」の区別を起点とする歴史性問題に関する三木の考察である。 また、今年度の研究は、三木清の哲学に留まらず、西田幾多郎、田辺元、和辻哲郎の各哲学を対象とし、また、今西錦司の思想における主体(個人)と環境(自然)との関係を解明することにも取り組んだ。 研究成果は、国際哲学コレージュ(College international de philosophie)で担当する講座や、国際シンポジウム、招待講演と行った機会を通じて、日本語、フランス語、英語で報告した。また、三木清『哲学入門』の「人間と環境」というテキストの仏訳にも取り組んだ。この翻訳は2024年度中に、フランスの哲学雑誌Philosophie上で掲載される予定である。また、この1年間で行った研究の研究成果は、一冊の研究書の一部として発表するつもりである。 また、本年度は、本研究の成果をもとに、現代社会における具体的問題の解決に貢献することにも取り組んだ。10月18-19日には、Matthieu Gaulene氏とともに、東北大学災害科学国際研究所 (IRIDeS)にて、国際シンポジウム「災害と記憶」を共同開催し、そこでフッサールの時間論と三木清哲学における主体性と主観性との区別を結びつけつつ、災害と記憶との関係につい検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始年度である2023年度の目的は、三木清の哲学における主体(性)概念の形成過程を明らかにすることであった。そのために、具体的に言えば、三木清の最初の著書である『パスカルにおける人間の研究』(1926)から、三木の主体性概念が完成された状態で使用されている『哲学入門』(1940年)まで、三木の著書と学術論文とを精読し、「主観-主体/自然-環境」の四概念内容と相互関係を分析した。また、この分析を進めつつ、他の同時代京都学派哲学者の考察と比較した。その際注目したのは、西田幾多郎、和辻哲郎、そして今西錦司による主体(性)概念の利用の仕方だった。 以上の作業の結果、「主体」(性)概念を巡って、1920年代後半から1930年代にかけて京都学派には、「環境展開」(environmental turn)と呼べるような現象があることが明らかになった。この環境展開は、ヨーロッパ哲学の日本受容、特にマルクス思想の日本受容、ハイデッガーの日本受容、そしてヨーロッパ地理学思想の日本受容に繋がっている。本年度は、この環境展開の原動力・中軸が、三木清によるマルクス思想のだったという点を明らかにするため、証拠を収集した。資料としては、全集よりも哲学史研究に相応しいと思われる、学術雑誌で発表された京都学派の哲学者らの学術論文を集中に取り上げた。国際哲学コレージュ(College international de philosophie)の担当講座、国際シンポジウム、招待講演などの機会に、研究成果を発表し、また他の研究者からのコメントや質問を本研究にとって重要なインプットとして扱った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、田辺元と今西錦司の各思想に注目しながら研究を行い、研究報告や学術論文や本などの執筆準備を進めたいと思う。田辺と今西に集中したい理由は、前者が「社会存在論」的分析、後者が生物の世界に関する分析を行った研究者であるのに加え、彼らもまた、「主観-主体/自然-環境」の四概念を利用したからである。彼らの考察を三木の考察や西田の哲学と比較しながら、彼らの見方とその意義について考えたい。また、主体性問題は欧米の哲学でも重要な課題であり、特に戦後のフランス現象学において問題にされていた。例えば、ミシェル・アンリが主体性概念に対するハイデガーの批判に関して議論した。本研究が扱う問題をもっと深く把握するために、フランス現象学における主体性問題の最新研究を、三木を始めとする京都学派の哲学と比較したい。研究報告は今のところで日本語とフランス語で行う予定であり、日仏哲学の専門家と交流することによって、本研究をもう一層深めてゆくつもりである。
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