Project/Area Number |
23K12000
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
蓮澤 優 九州大学, キャンパスライフ・健康支援センター, 准教授 (80963446)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | メンタルヘルスケア / 新自由主義 / ミシェル・フーコー / 学校保健・産業保健 / 認知行動療法 / 学校・産業保健 |
Outline of Research at the Start |
哲学者ミシェル・フーコーは、精神医療や刑罰制度を横断的に研究し、そこに3つの基礎的権力形態の、近代を通じた継起を見出している。すなわち①規律(19世紀)、②安全性の装置(19世紀末~20世紀)、③新自由主義的統治(20世紀終盤~)である。フーコーはその厳しい精神医学批判によって知られているが、それは主として①②のモデルによる分析に基づくものであった。本研究では、フーコーが充分には展開しなかった新自由主義的統治というモデルを発展させつつ、これに基づいて今日のメンタルヘルスケアシステムの全体を分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哲学者ミシェル・フーコー(1926-1984)が提唱した、新自由主義的統治性という権力モデルに基づいて、今日のメンタルヘルスケアシステムを批判的に分析することを目的とする。便宜上、①司法精神医学領域、②学校/産業保健領域、③一般精神医学領域という三つの側面から、このシステムにアプローチする。報告者は精神科臨床医であるとともに、「ミシェル・フーコーと精神医学」を主題とする研究で哲学博士号を取得した。こうした基盤のうえに本研究を遂行する。 今年度は『フーコーと精神医学』(青土社)およびL'autre tour de folie (L’Harmattan)という二冊の書籍を刊行した。これらは哲学博士論文をベースとして、それぞれに異なった編集、加筆を行ったものである。加筆の過程において、司法精神医学領域におけるリスク管理という、本研究課題と関連する内容を盛り込んだ。治安上のリスク管理のため、司法的・医療的手段のハイブリッドによっていかなる主体形成がなされているかを論じ、特に日本における近年の動向についても論及した。出版した書籍に関するシンポジウム等で発表を行い、当該領域の論者たちと有意義な討論を行うことができた。 これと並行して、学校/産業保健領域の問題についても分析を深めることができた。報告者の、大学における学校医/産業医としての実務のなかで最近、問題化している事例から出発し、具体的に分析を展開した。そのうえで、新自由主義社会のなかでの大学の役割の変遷に伴い、大学における精神保健的リスク管理の在り方がどのように変化してきているかを論じた。研究成果については複数の学会において随時、報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進め方については、当初の計画からやや変化しており、今年度は司法精神医学領域のみに特化することなく、他領域に関する分析も同時並行して進めた。このように、手順のうえで若干の変更が生じたものの、他方では、当初予定していなかったフランス語書籍の出版が実現するなど、研究成果達成・発信の面で計画段階より早まった部分がある。このため全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで未刊であったフーコーの草稿が、近年、次々に公刊されており、これらを研究してゆく必要がある。報告者自身もそのうちの1冊を邦訳し、2024年度中に刊行の予定である。フーコー思想における精神医学の問題の理解にあらたな光をもたらす著作であり、本研究遂行のうえでも重要な意義がある。 また現在、新自由主義のもとでの心理療法の意義の変容に関する総説的論文を執筆している。これとは別に、年度内の国際誌への投稿も計画している。 研究推進に伴い、関連領域の専門家や臨床家とのネットワークもできてきている。学会等で有意義な討論を重ねてきており、得られた知見を論文にも反映していきたい。最終的には本研究課題に関するシンポジウムの開催も検討する。
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