Project/Area Number |
23K12007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
小松原 織香 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 客員研究員 (20802135)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 環境 / アート / コミュニティ / 記憶 / 語り継ぐ / 修復的正義 / 水俣 / 東北 / 対話 |
Outline of Research at the Start |
本研究は〈記憶を媒体とするコミュニティ〉の世代交代について、新たなフレームワークを提示する。戦争、災害、環境破壊等の厄災(disaster)後の服喪追悼の場で発生する人々のつながりを、本研究では〈記憶を媒体とするコミュニティ〉と呼ぶ。他方、生存者の高齢化が進むと〈死者の記憶〉の世代間継承が必要となる。そこで申請者は、〈記憶を媒体とするコミュニティ〉の世代交代の可能性を探求する。最終的に、本研究は〈記憶を媒体とするコミュニティ〉の世代交代がいかにして行われ得るのかについての枠組みを示すだろう。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究の初年度ということもあり、水俣地域を中心に積極的にフィールドワークを行い、資料収集に努めるとともに、次年度以降の調査に向けて現地の人的ネットワークの強化に力を入れた。第一に、水俣病センター相思社に滞在しフィールドワーク行った。特に、水俣病被害者の支援活動に取り組む小泉初恵(水俣病センター相思社)、奥羽香織(水俣病を語り継ぐ会)の両氏にインタビューを行い、〈当事者ではない立場〉から水俣病の記憶を語り継ぐ困難と可能性についてお話を伺った。その成果については、岩波書店発行の『世界』で上で、2本の論考で報告を行った。 第二に、報告者がアートプロジェクトの主催者となり、伊勢志摩と水俣で「貝を拾う会」を実施した。これは二つの地域の浜辺で、研究者、アーティスト、活動家、地域住民などが、地域の歴史について学んだあとに自然に触れながら環境について考えるという、感性的な側面に重きを置いた活動である。知識としての環境破壊を学ぶのではなく、体験的に人間と自然の関係を再考することを目的とした。その成果は次年度のEuropean Forum for Restorative Jusitceの年次大会(2024年6月)でポスター報告する予定である(採用決定済み)。 第三に、東北大学災害科学国際研究所主催のMemory and Disasterの国際会議に、水俣の活動家とともに参加し、研究報告・意見交流を行った。水俣地域に限らず、厄災後に〈記憶を媒体としたコミュニティ〉が生成されていることを確認したとともに、各地域ごとの特性・独自の課題に注意を払う必要性に気づいた。この国際会議をきっかけに、他地域についての研究者との交流ネットワークを構築する端緒についた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究をスタートさせたばかりであるので、積極的にアイデアを国際学会で報告し、参加者からのフィードバックを得ることで、具体的な研究デザインの発展と修正を行った。第一にオランダ・ユトレヒトで開催されたGreen Crimes and Ecojustice Conference で報告したセッションは、最新の科学技術による自然破壊の問題が欧州で中心的に議論されるのに対して、アジア・アフリカの研究者から発展途上国の昔からある古典的公害が放置されているとの指摘があった。環境破壊におけるグローバルノース・サウスの視点を、本研究に取り入れるアイデアを得ることができた。 第二に、東北大学災害科学国際研究所主催の国際会議ではDisaster and Memory の報告では、国内の地域における厄災後の記憶の語り継ぎ活動の共通点・差異点が浮かび上がった。個別の地域を深く研究するとともに、他地域の研究者との交流を積極的に行い、水俣での研究を相対化・精緻化していく必要に気づくことができた。 第三に、今年度はクリタ水・環境科学研究優秀賞を受賞し、表彰式でスピーチをする機会を得た。参加者の多くは理系の最新技術の大学・企業の研究者であり、人文学者として積極的な意見交流を行った。環境問題においては文系・理系の共同での研究が欠かせないことを再認識したとともに、個別の理系の研究者とのネットワーク形成をスタートできた。 以上から、本研究の領域横断的、地域横断的研究の重要性を確認し、新たな研究ネットワークの中で発展させていくためのプランを描くことができた。そのことから、次年度の向けて順調にステップを踏んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、本年度に引き続いて、積極的に水俣地域でのフィールドワークに取り組みたい。被害者関係者、活動家はもちろん、水俣にかかわるアーティストとも交流を行い、亡くなった水俣病の被害者の記憶をどのように引き継いでいくのかについての感性的試みを記録し、分析を行い、アートの表現者と受容者の関係を掘り下げて研究する。 同時に、次年度の課題は理論的研究の基礎固めに着手したい。本年度のフィールドワークの成果をもとに、慰霊、記憶の継承をキーワードにしながら、コミュニティ研究やアート研究の文献を収集し、情報を精査していく。 さらに、次年度から東北大学に異動するため、東北大学災害科学国際研究所との連携を強化することは不可欠である。宗教学者、人類学者、文学研究者などとともに、人文学のアプローチにより、厄災後のコミュニティについて学際的に研究していく。
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