教理概念の分類等からなるアビダルマの本質的機能の解明:『舎利弗阿毘曇論』の研究
Project/Area Number |
23K12012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01020:Chinese philosophy, Indian philosophy and Buddhist philosophy-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
横山 剛 筑波大学, 人文社会系, 助教 (10805211)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | インド仏教 / 部派仏教 / アビダルマ / 説一切有部 / 舎利弗阿毘曇論 / 大乗仏教 / インド仏教最後期 / 教理概念の分類 |
Outline of Research at the Start |
インド仏教では仏滅後に「アビダルマ」と呼ばれる初期経典の教説に対する整理・分類・体系化・解釈・注釈などからなる知的な営為が開始され、教理体系の構築が始まった。本研究では、原初的な営みであるという理由でこれまで顧みられることがなかった、教理概念の分類などの教理体系構築の根底を為す行為に注目するとともに、思想的に複数の部派を横断する文献である『舎利弗阿毘曇論』を用いて、部派仏教というより広範な地平でアビダルマの機能を解明する。さらに、アビダルマという営みを大乗仏教やインド仏教最後期の文献における教理と比較することで、インド仏教におけるより普遍的な視点から、その機能の特性を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
インド仏教では仏滅後に、初期経典の教説に対する分類・整理・体系化・解釈・注釈などの行為が開始された。このような多岐にわたる活動からなる知的営為は「アビダルマ」と総称される。そしてこの営みは仏教の教理体系が構築される際の原動力となった。本研究の目的はこのアビダルマという営みの根底にある本質的な機能や特性を明らかにすることにある。そのために、インド仏教の部派の中でとりわけ大きな勢力を誇った説一切有部(以下、有部と略)の教理を研究の中心に据えながらも、思想的に複数の部派を横断する『舎利弗阿毘曇論』を主要文献として読解し、その内容を分析することで、部派仏教というより広範な地平でアビダルマの機能の解明に取り組んだ。また『中観五蘊論』などの文献を用いてアビダルマという営みを大乗仏教における教理の構築や展開と比較するとともに、『牟尼意趣荘厳』や『有為無為決択』などの文献を用いてインド仏教最後期への教理の継承や総括と比較することで、インド仏教におけるより普遍的な視点からその特性の解明を試みた。以上の研究に取り組む際には、数ある教理の中から(1)カテゴリー論、(2)知識論、(3)宇宙論という三つのテーマに注目し、これらの点から掘り下げた分析と考察を行った。本研究を進める中で得られた成果については、順次、諸学会の学術大会などにおいて報告するとともに(3件)、論文にまとめて学術雑誌に発表した(単著3本、共著1本)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要文献である『舎利弗阿毘曇論』については、第一巻「問分入品」と第二巻「問分界品」の読解と内容の分析に取り組んだ。これと並行して、(1)カテゴリー論、(2)知識論、(3)宇宙論の三点からアビダルマの機能と特性について検討を行った。 (1)では、『中観五蘊論』における音声理解に注目して、有部から大乗中観派、さらにインド仏教からチベット仏教への音声理論の継承と展開を追った。その成果については、令和5年度密教研究会学術大会において報告し、その内容を論文にまとめて『密教文化』(第251号あるいは第252号、採録決定、印刷中)に発表した。 (2)では、有部が説く智の分類に注目して、『牟尼意趣荘厳』と『有為無為決択』を用いて、その説がインド仏教の最後期に伝えられる際の教理的な変容について分析を行った。ここで得られた成果については、日本印度学仏教学会第74回学術大会において報告をするとともに、その内容を論文にまとめて『印度学仏教学研究』(72巻3号)に発表した。また『有為無為決択』については、有部のダルマの体系を解説する第九章(後半部)のチベット語訳校訂本をBulletin of the International Institute for Buddhist Studies(Vol. 6, 採録決定済, 印刷中)に発表した。 (3)では、『牟尼意趣荘厳』が説く有情理論(有情世間)を用いて、有部説からの教理的な展開を検討した。ここで得られた成果については、李学竹氏(中国蔵学研究中心)と加納和雄(駒澤大学)との共著論文として、『インド学チベット学研究』(27号)に発表した。また、有部の宇宙形状論(器世間)の要点について、The Conference of Heavens and Hells(2023年7月, University of Tokyo)において報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第二年度である令和6年度は、主要文献である『舎利弗阿毘曇論』の研究を進め、第三巻「問分陰品」ならびに第七巻「非問分界品」の読解と分析に取り組む。また、前年度の方針を引き継いで、(1)カテゴリー論、(2)知識論、(3)宇宙論の三点からアビダルマの機能や特性に関して、詳しい分析と考察を行うことを予定している。(1)については、有部教学の代名詞となっている「五位七十五法」が担う機能の再考を行う。(2)については、主に『二万五千頌般若経』に説かれる智の教説を用いて、有部から大乗仏教への教理的な展開、ならびに大乗仏教内での教理的な展開について分析を行う。(3)については、『牟尼意趣荘厳』が説く有情理論の分析を継続するとともに、『有為無為決択』第二章が伝える有部の宇宙形状論を新たに考察の対象とすることで、インド仏教最後期へのアビダルマ的教理の継承について検討することを予定している。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)