Project/Area Number |
23K12015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01020:Chinese philosophy, Indian philosophy and Buddhist philosophy-related
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
張 名揚 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (80850875)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 密教星供 / 「称名寺聖教」 / 紙銭 / 茶 / 羅漢信仰 / 喫茶文化 |
Outline of Research at the Start |
宋代中国では、羅漢信仰が広がるとともに、茶を羅漢に捧げる儀礼が盛んに行われていた。しかし、茶を羅漢に捧げる儀礼が、なぜ、どのように形成されたのかについては明らかになっていない。歴史的視点から見れば、羅漢信仰は密教が衰退していく唐末五代から盛んになっていく。この頃は、喫茶法が煎茶法から点茶法に変わっていく時期でもある。宗教的視点から見れば、唐代密教も茶を星宿に捧げ、また「仙」と称される星宿の神格は山林に住み神通力を持つとされる点も羅漢と一致している。本研究では、歴史と宗教という二つの視点から、羅漢信仰と類似した特徴を持つ密教星供を手掛かりに、茶を羅漢に捧げる儀礼の形成と展開の過程を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、以前から参加していた中央研究院歴史語言研究所「《続高僧伝》研読班」例会にて「隋京師静法寺釈智嶷伝四十三」「隋京師浄影寺釈道顔伝四十四」の訳注を発表した。また、称名寺所蔵資料に見える中世日本の密教星供に用いられる供物を考察し、その成果を論文「称名寺所蔵「本命星供略次第」に見える思想と文化」(実践女子大学文芸資料研究所編『年報』43、2024)として、一部の内容を「日本中世密教星供浅探―以「称名寺聖教」為例―」として中央研究院歴史語言研究所公開講座にて発表した。 称名寺所蔵「本命星供略次第」(「称名寺聖教」318函120号)には、密教星供に用いられる供物や、七日間にわたる本命星供を執り行う際に必要な物品が記されており、中世日本の星供の様相、また中国密教星供の日本における受容の実態も垣間見ることができる。同資料の「紙銭事」の部分では、本命星供で利用される紙銭は「貫」単位で数えられ、本命星供を行う際に年齢と同じ貫数の紙銭を使用すると述べており、中国に由来した作法であることがわかる。また同「三時行法供物事」には「後夜」に粥、「日中」に洗米(あるいは仏供)・菓子・汁、「初夜」に幡・幣・紙銭・蝋燭を使用するとあり、時間帯によって異なる供物を用いると記されている。そのうち「日中」に用いられる「汁」は茶を指し、中世日本の人々は調理された茶を「茶汁」、あるいは「汁」と称したことも明らかになった。さらに「御本命星供七箇日支度」に見える「荼一束」という語について、「称名寺聖教」には「茶」を「荼」と表記することが多く、また「御本命星供七箇日支度」に記される食品の種類などから、「荼一束」の「荼」も茶を指すと考えられる。その「一束」という量詞は、中世に消費される茶の形態を考察する手がかりとなるのでる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の精読を通じて新たな問題点を見出すことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
『続高僧伝』「感通篇」などに見える僧侶の多くは神通力を持ち、山林に住する聖僧の特徴を持っているが、これは羅漢と呼ばれる聖者、そして密教の「大仙」「仙人」と称される星宿の神格の特徴とも一致している。今後も僧伝の精読を通して、聖僧の特徴を整理し、唐代に最盛期を迎える密教の星供と、唐末以降盛んになる羅漢信仰と比較研究をしながら、聖僧らの特徴の関係について検証する。 また、供物について、これまで考察してきた茶だけではなく、中国の俗信に由来する「銭」も、密教星供でも羅漢信仰でも使用される。「銭」の形態はそれぞれ異なるが、仏教的ではない「銭」を用いる点も、両者の関係性を知る手がかりとなる。中国の密教星供に関する資料が少ないため、星供の供物に関して、今後は引き続き日本の密教寺院で伝わる聖教を考察する。羅漢信仰に用いられる供物は、日中に伝わる文字資料のみならず、羅漢会の場面を描く羅漢図などの図像資料も使用する。こうして密教星供と羅漢信仰における供物の関係性を検討していく。
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