Project/Area Number |
23K12022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
法貴 遊 京都大学, 文学研究科, 京都大学人文学連携研究者 (90823344)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | イスラーム思想 / ユダヤ思想 / カラームの学 / カイロ・ゲニザ / マイモニデス / アブー・フサイン・バスリー / ユースフ・バスィール / カライ派 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「カラームの学(ilm al-kalam)」と呼ばれる学問を対象とする。この学問は、しばしば日本語で「イスラーム神学」とも呼ばれるが、イスラームに特殊なものではなかった。カラームの学は、古典アラビア語文法学に基づく言語分析を公式の方法として採用したため、アラビア語圏のユダヤにも影響を与えた。アラビア語圏においてはユダヤもイスラームも、各々のしかたで言語が提起する問いに取り組んでいたのである。この学問が提示した言語思想の系譜を辿ると、「ユダヤ思想史」と「イスラーム思想史」という枠を横断する「アラビア語圏の思想史」を構想することができるだろう。
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Outline of Annual Research Achievements |
しばしば「イスラーム神学」と日本語に訳されるカラームの学という学問は、古典アラビア語文法学に基づく言語分析を公式の方法として採用した一種の言語思想である。カラームの学が提示した言語観は、ムスリムのみならず、アラビア語圏のユダヤ人にも甚大な影響を与えた。本研究は、イスラームとユダヤのカラームの学が提示した言語的規範に注目し、両宗教を横断する言語思想の系譜を辿ることを目的とする。今年度は、古典的なカラームの言語分析を批判したムスリムであるアブー・フサイン・バスリーの思想と、彼に反論し、古典的カラームの方法論を弁護したユダヤ人であるユースフ・バスィールの思想を主に研究した。 アブー・フサインは、アラビア語の文法構造と現実の世界の構造が一致するという、古典期カラームの存在論・認識論を、アラビア語を話すアラブ人にしか通用しないものとして退けた。彼はこれに代わり、認識論や存在論におけるアラビア語の規範性を弱め、より直感的な認識論・存在論を提唱した。この研究成果は、日本オリエント学会第65回大会での発表「アブー・フサイン・バスリーのエピステモロジー」でまとめられた。 次に、アブー・フサインの古典期カラーム批判に反論したユダヤ人ユースフ・バスィールの思想を、同時代のユダヤ・カライ派の文脈や、バスラのムウタズィラ学派の文脈から研究した。ユダヤとイスラームの文脈にユースフ・バスィールを位置づけると、彼はマジョリティのアラビア語文化の中で、マジョリティ以上にアラビア語文化を身に付け、マジョリティの論客と対等に論争しあうマイノリティの知識人であったことが明らかになった。彼にとってアラビア語文化は、マイノリティであるユダヤ人が自らの立場を主張するために必要な枠組みだったのである。この研究成果は九州史学会大会での発表「ユダヤ教カライ派知識人ユースフ・バスィールと同時代のムスリムたち」でまとめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に必要な史料はほぼ全て入手済みであり、必要な部分は読解済みである。研究計画に記された限りでの研究内容については、ある程度の見通しがついている。具体的に言うと、古典期カラームの言語思想の研究と、アブー・フサイン・バスリーによる古典期カラームの言語観に対する批判については、研究計画に関連する限りで、およそ把握できた。後はユダヤ人ユースフ・バスィールの言語思想についてはあと少し研究を要する。 大部分の研究成果は既に口頭発表でまとめられたので、2年目は海外ジャーナル等に論文として投稿したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、1年目の研究内容を2本の論文にまとめ、海外ジャーナルに投稿することを予定している。1つめのテーマは、アブー・フサイン・バスリーによる古典期カラームに対する批判と、彼の新たなエピステモロジーになるであろう。2つめのテーマは、ユースフ・バスィールによる古典期カラーム擁護になるであろう。 このれらの論文執筆と並行して、次の研究対象の研究も始める。新たな研究対象とは、ユースフ・バスィールによるアブー・フサイン批判/古典期カラーム擁護に反対し、アブー・フサインの新たな学問体系を受け入れたユダヤ人サフル・イブン・ファドル・トゥスタリーの思想である。サフル・イブン・ファドルの著作群の写本を収集し、読み始める。その研究成果の一部を、宗教学会大会等の学界発表でまとめる。3年目にこの研究内容を論文にまとめることを目標とする。
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