Project/Area Number |
23K12057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
石井 悠加 四国大学, 文学部, 講師 (10881518)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 中世絵巻 / 夜・闇 / 詞書 / 照明 / 火 / 平治物語絵巻 / 石山寺縁起絵巻 / 西行物語 |
Outline of Research at the Start |
物語や説話・伝記類が積極的に夜を描写し、詩歌が闇の中で先鋭化される感覚を描写する一方で、絵巻が夜景を昼景と描き分ける技法は近世に入るまでほぼ未発達であった。 その理由を問うことは絵巻の制作・享受の在り方の本質への大きな問題提起となる。 本研究は「闇」というテーマを中心として、中世絵巻のテキストとイメージの表現の相関性について追及し、その翻案・受容の様態の特徴を新たに浮かび上がらせるものである。 またそのデータの形成・公開により、近年のデジタル人文学推進の動きとともに公開範囲が拡大しつつある日本古典籍のうち、最も一般や海外からの関心が高い絵巻作品の学術情報へのアクセス性の向上も企図したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古典文学の研究領域での関心が近年高まりつつある「闇」「夜」というテーマを中心として、中世各期の絵巻作品群におけるテキストとイメージの表現の相関性について追究し、その翻案・受容の様態の特徴を新たに浮かび上がらせるものである。 中世日本の絵巻には、「闇」「夜」の描写技法を得た形跡が乏しい。その理由として、①作品が鑑賞される時間帯そのものが主に夜間であり、照明具の下で披見するものであったこと、②絵巻制作の目的が作品世界の図示であり、そのため詳細が俯瞰できる必要があったこと、③「詞書」というテキストによる語り=「絵解き」と併せて鑑賞される絵画であったことなどが挙げられる。こうした描かれなかった「闇」と「夜」という視点から、絵と文章の共同作業の技法を再検討することにより、従来の絵巻表現史の研究の視点では得られなかった新知見を得ることを目標としている。 その目的達成のための研究計画として、(1)全体像の把握(絵巻研究のプラットフォーム構築)と、(2)個別の作品のサンプルリサーチの2点を予定していた。(1)については、12~14世紀の主要な絵巻作品の中から、詞書に時間帯を示す語彙が含まれる場面の抽出と、明暗を示すモチーフの収集・整理を行い、索引を制作した上で場面分析を行う。(2)については、『平治物語絵巻』『石山寺縁起絵巻』をサンプルとして個別事例の検証を行う予定であった。 初年度はこれらの研究計画を進める基盤を作るため、まず必要な文献の整理に加えて、オンラインデータベースを契約して調査に着手した。またその過程で、出版社によるオンラインイベントにおいて『平治物語絵巻』中の夜の闇の非描写について発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は申請当初、所要年数を5年間として見込んでいた。(1)全体像の把握(絵巻研究のプラットフォーム構築)については、(2)個別の作品のサンプルリサーチと並行して進めていく予定であるが、まだ完成版の提示には時間をかけていきたい。ただし進行を遅らせる要素は今のところなく、おおむね順調に進展している。 (2)個別の作品のサンプルリサーチについては、まず『平治物語絵巻』三条殿夜討の巻の夜の闇の非描写への検討を加えられた。これは2023年11月10日実施の図書館総合展2023年度フォーラム「文献調査が変わる!研究者が極意を伝授『ジャパンナレッジ版 史料纂集・群書類従』」(https://japanknowledge.com/event/report/20231110.html)の中で言及している。夜の時間帯を舞台とした絵巻の例は多いが、『平治物語絵巻』の例のようにそれらは大型の火災の描写を伴う場合も多い。このことについて、ジャパンナレッジ版史料纂集・群書類従の検索機能などを活用し、実際の中古・中世の古記録類における「夜」の記録の傾向も分析することで、理解を深めることができた。 そのほか、『西行物語絵巻』諸本の画中における夜空の月の描写の有無が、複雑な諸系統の詞書テキストを比較する上で重要になるのではないかという見通しを現在新たに得ている。『西行物語絵巻』の物語中には実際の西行の月の和歌が多く取り込まれている。詞書と絵画の関係について、描かれ、詠まれた「月」に注目して分析を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き(1)全体像の把握(絵巻研究のプラットフォーム構築)と、(2)個別の作品のサンプルリサーチについて、データベースも活用しながら研究計画を進めていく。『平治物語絵巻』三条殿夜討の巻について成稿するほか、『西行物語絵巻』諸本の「月」の描写については、研究成果の発表先として、2024年8月の西行学会大会を希望している。その成果は学会誌へ投稿する予定である。
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