Project/Area Number |
23K12137
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
霜田 洋祐 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 講師 (80849034)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | イタリア文学 / リアリズム文学 / 真実主義 / 自然主義 / 近代小説 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、イタリアの「真実主義(ヴェリズモ)」文学について、(1)派生元であるフランスの自然主義文学の理論と実践との比較を通じて真実主義固有の特徴を正確に把握し、(2)その独自の展開が、それ以前のイタリア小説の伝統と関連していることを確認する。これにより、単にイタリア版の自然主義とまとめられがちな真実主義を、19世紀イタリア文学内部におけるリアリズムの発展という文脈から捉え直したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「イタリア版の自然主義」と見なされることの多いイタリアの文芸潮流「真実主義」が、実際には派生元であるフランスの自然主義から本質的な変容を遂げていることを、相違点を明確にしながら示し、さらに、その独自の展開の要因の一つに、これまで見過ごされてきた、19世紀前半のイタリアの写実的傾向の小説からの影響があることを明らかにすることを目的としている。 本年度は、真実主義を代表する作家ジョヴァンニ・ヴェルガが、非人称的語りと自由間接話法の多用という独自のスタイルを編み出す際に、フランスの小説だけでなく、マンゾーニ『婚約者』以来のイタリアの写実的な小説の手法を参照したことを明らかにすることを目指した。その際に、書き言葉と話し言葉の乖離が大きく方言も多様であるイタリアでは、いかなる言語で文学作品を書くべきかという問題が他の言語圏の文学と比べ顕在化しやすいという固有の特徴に注目し、特に標準語による庶民的な言葉使いの再現という観点から分析を進めた。 ヴェルガの長編小説『マラヴォリア家の人々』は、方言を話すはずのシチリアの庶民の生活をリアリスティックに描きつつも少なくとも表面的にはトスカーナの言葉をベースとする標準語で書かれており、標準語による庶民的な言葉遣いの模倣には、ミラノを舞台とする物語『婚約者』をやはり標準語で描いたマンゾーニとの数多くの共通点が見られる。ここには明らかな連続性(マンゾーニからのヴェルガへの影響)を見ることができるが、一方で、ヴェルガの言葉遣いのほうが伝統的な文語に近い場合が散見されることも明らかとなった。こうしたヴェルガの独自性に、ほかの文学伝統からの影響を見るべきかについてはさらなる調査が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イタリア文学史において伝統的に比較されるジョヴァンニ・ヴェルガとアレッサンドロ・マンゾーニの差異ではなく連続性を確認できたことは一つの成果と言える。それに加えて、ヴェルガの小説の言葉遣いがときにマンゾーニより伝統的な文学語に近づくというのはやや意外性のある発見である。 ただ、こうした発見の意義は、マンゾーニ以降の写実的小説の伝統とヴェルガとの関係を言語的な(標準語による庶民的な言葉使いの再現という)観点から分析することでより鮮明となるはずである。当該年度の研究では、ヴェルガをはじめとする真実主義の作家とマンゾーニの間をつなぐ作家や作品についての検討・分析が十分ではなかった点で、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず次の二つの点から研究を進める予定である。①ヴェルガとカプアーナによる真実主義の理論と実践が、ゾラの自然主義から離れた独自の展開を見せる部分を明瞭にする。特に、真実主義の作品には、ゾラの強調する医学・生理学的な科学理論の影響が希薄であるという仮説を、非人称的な語りのゾラ以前のモデルに注目しながら検証する。②カプアーナの作品にあらわれる怪奇幻想的主題が、非現実に実感を与える表現技法の観点からは、逆説的に、客観的な現実を描こうとする真実主義の手法とも調和しうるという仮説を、序文などにおける著者の主張と作品中の技法を分析して検証する。 それに加えて、これまでの研究で浮かび上がった課題に対応するため、主に小説に用いられる言語の観点からマンゾーニとヴェルガらの間の作家や作品についての検討・分析も進める。これは、後に予定している、③19世紀中葉のイタリアの田舎文学と真実主義の主題および手法の連続性と相違を明らかにするという課題の遂行を助けるものともなるはずである。
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