Comparative Literary Studies of 19th Century Europe Focusing on Fryderyk Chopin, George Sand, and Adam Mickiewicz
Project/Area Number |
23K12146
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02050:Literature in general-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 梨沙 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (80909846)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | ショパン / サンド / ミツキェヴィチ / 文学と音楽 / フランス文学 / ポーランド文学 / 比較文学 / 比較芸術 / 幻想 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、フランス7月革命およびポーランド・リトアニア11月蜂起を経た後の時代、すなわち1830年代後半から1840年代の、フリデリク・ショパンのピアノ曲作品(特にOp. 44、Op. 49、Op. 61)と、彼に影響を与えたであろうポーランドやフランスの文人・詩人たちの作品、特にアダム・ミツキェヴィチの詩劇『父祖の祭』第三部や、ジョルジュ・サンドの哲学小説『スピリディオン』他との比較分析を行うものである。一見ジャンルもナショナリティも異なるこれらの作品を、「幻想」をキーワードに据えて見ていくことで、この時代に国家、民族、言語、性別、芸術分野を跨いで目指された思想を明らかにしていく。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度はJSPS海外特別研究員としてパリ第3大学CERCを拠点に研究活動を行なった。まずは5月にパリ第3・第7大学の研究者らが共催した民族詩学に関する学会で発表し、そこでは申請者のこれまでの研究成果として、ショパンの音楽とポーランドやウクライナの詩学との関係について扱った。続いて10月にフライブルクで行われた、ヴァイマール三角連合に因むポーランド・ドイツ・フランスの各大学共催学会では、ショパンの一連の幻想曲作品に影響を与えたと考えうるサンドとミツキェヴィチのフランス語及びポーランド語の文学作品を、ゲーテ『ファウスト』と比較分析する試みを発表した。さらに同年12月にパリで行われた、ワルシャワの国立ショパン博物館とパリの各種博物館の共催学会でも、学会共通テーマである1830年代を中心としたフランスとポーランドの文化関係に絡め、申請者はサンドとミツキェヴィチの文学作品が、ショパンが1840年代になって作曲を始めた幻想曲群(Op. 44, 49, 61)に対し与え得た影響について、文学作品分析と楽曲分析の両面から論証を行った。後者2つの発表については2024年度中の出版(いずれもフランス語)を見込み、現在原稿を校正中である。 加えて日本語での業績では、日本比較文学会東京支部研究報告として1点の論文を投稿した。本課題の問題意識の原点となるショパンとサンド、ミツキェヴィチそれぞれの背負った背景と思想から作品を比較分析した論文で、2024年3月にオンラインアクセス出版された。上記2点のフランス語論文と併せて、本課題の目的の一つである民族、性別、言語、 創作ジャンルを跨いで共有したこれらの芸術家たちの思想を紐解くための道筋を作り、2023年度は主にショパンが幻想曲群を発表する直前の時代(1830年代後半)に焦点を当てた総合的な分析・検証を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度当初の計画では、上記の5、10、12月の3学会で研究成果をフランス語で発表し、最終的にはそれらの出版までを見据えていたが、現時点でそれが予定通りに進んでいるため「おおむね順調」と自己評価している。また当初は、JSPS海外特別研究員としてのパリ赴任を2024年8月まで予定していたため、ショパンとサンドが1838-39年に滞在したマヨルカ島の修道院での調査訪問は2024年度を想定していたが、修道院(現・博物館)の館長より拙著の購入希望の連絡を受け、急遽2023年12月に訪問することとなったため、2023年度中にこの計画も果たすことができた。博物館に拙著を献本したところ、館長からは本課題に関わる貴重な研究書や資料を多数ご提供頂き、引き続き本課題の遂行にもご協力頂ける関係を結ぶことができた。2024年4月からは早稲田大学高等研究所に着任が決まり帰国することとなったため、2023年12月中にこの調査訪問も実現できて良かったと思う。 加えて当初の計画通り、2023年8月に第1回国際研究集会「Comparing "Comparative literature": Japan, Germany, France and the world」をパリで企画・主催した。「比較文学」という概念自体はすでに200年以上の歴史を持つものの、日本と世界各国での捉え方がかなり異なるのではないかという問題意識を前提に、今回は主にドイツ、フランス、日本の違いを射程に入れながら、特に社会科学系で国際的に活躍する研究者らに登壇頂き、自身の専門と文学やテクストとの関係について語って頂いた。2024年度中には議事録をオンラインで発信予定である。また聴講に来た中国の研究者が強い関心を持ち、2024年に同様の集会を共催してもらえないかとの誘いを彼女から頂いたため、2024年6月に第2回集会をパリで開催予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は1830年代後半のショパン、サンド、ミツキェヴィチの出会いと交流から、作品の批評とその影響関係までの検証に集中し考察を発表することができたため、2024年度はそれを踏まえ、1840年代の彼らの創作と活動に注目する。ショパンは3つのピアノ独奏による「幻想」曲のうちの2曲、Op. 44, 49を1841年に立て続けに発表したが、Op. 61は1846年に発表しており、この間が5年あいている。この5年間にショパンとミツキェヴィチ、あるいはショパンとサンドの関係には亀裂が入り、悪化していった。特にショパンとサンドの関係についてはロマンスの側面からの検証がこれまで圧倒的であったが、他方で1840年代になると、ミツキェヴィチがトヴィアニズムという神秘思想に傾倒し、フランスにいるポーランド知識人たちを扇動し始めたことが、ミツキェヴィチとショパンとの関係を悪化させる主な要因となった。本課題ではこうした政治思想・宗教思想的な側面が、ショパンとサンドの関係の変化にも少なからず影響を及ぼしていたのではないかと見ており、その結果1840年代後半に完成したOp. 61におけるショパンの「幻想」概念は、ミツキェヴィチとサンドの文学作品・批評の直接的影響から生まれ得た1840年代前半の「幻想」概念と比較して、何らか変化した可能性があると考えている。よって2024年度以降はこの点を射程に入れ、資料収集と読解、作品分析に集中する予定である。現時点でこの内容を含めた1点の提案書をフランスのジョルジュ・サンド関連学会に提出しており、採用されれば2025年3月までに論文を投稿できるため、この研究結果について論文を執筆し提出したいと考えている。
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Report
(1 results)
Research Products
(11 results)