音韻階層構造の言語普遍性と固有性に関する実証的研究
Project/Area Number |
23K12168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | HOKUYO University |
Principal Investigator |
植田 尚樹 北洋大学, 国際文化学部, 准教授 (30911929)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 分節音の構造 / 音韻体系の非対称性 / 要素理論 / 帯気性 / 母音の無声化 / 音韻階層構造 / 言語普遍性 / 言語固有性 / 音韻モデル |
Outline of Research at the Start |
言語には分節音、モーラ、音節、フットなどの音韻的単位があり、それらは階層性をなすとされる。 本研究ではまず、モンゴル語を対象に、どのような音韻階層構造が想定されるのか、音韻的単位は互いにどのように結びついているのかを、母語話者の発話の音響分析および調音動態解析、韻文と語形成の事例収集および統計分析を通して実証的に探究する。 そして、モーラやフットなどの音韻的単位はどこまで言語普遍的な構造を持ち、どの程度の言語固有性を持っているのか、普遍性と固有性の両方を十分に説明できる音韻モデルはどのようなものかを、モンゴル語と中国語、日本語を中心とした対照言語学的手法および理論的分析を用いて究明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、モンゴル語の音韻階層構造(分節音、モーラ、音節、フットの構造)の解明、および音韻的単位の言語普遍性および言語固有性の検討である。2023年度は、主にモンゴル語の分節音の構造について、言語事実を記述したうえで、言語普遍性の観点から分析を行った。 まずは、モンゴル語の子音体系に観察される非対称性を明らかにし、音韻理論に基づく解釈を提案した。この研究は、個別言語の音韻構造を理論的に分析することで言語普遍性の観点から位置づけたものであり、本課題の根幹をなす重要な研究である。その成果は、口頭発表「モンゴル語の子音体系における非対称性―要素理論による分析」および研究論文 “Asymmetries in the Consonant System of Khalkha Mongolian: An Element Theory Analysis” により公表されている。 また、分節音の構造に関する言語個別的な事象として、帯気性の実現としての母音の無声化に注目し、定量的な分析により母音の無声化の頻度と条件を明らかにした。その成果は、口頭発表「モンゴル語ハルハ方言における母音の無声化」および研究論文 “Vowel Devoicing in Khalkha Mongolian: Effects of Vowel Type and Phonological Environment” として公開されている。さらに、モンゴル語の分節音の特徴を他言語と対照しながら明らかにすべく、非母語話者を対象とした知覚実験を行った。この研究は、音韻体系における言語間の差異を手掛かりに言語固有性を明らかにすることを試みた点で意義がある。この研究の成果は、研究論文「モンゴル語の帯気性対立の他言語話者による知覚―日本語・中国語・韓国語母語話者を対象とした知覚実験―」として公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①母語話者の発話の音響分析および調音動態解析、②韻文と語形成の事例収集および統計分析、③モンゴル語と中国語・日本語の音韻階層構造の対照、④音韻モデルの検討、の4つを分析の柱としている。2023年度は、モンゴル語の分節音の構造について、モンゴル語母語話者の発話の音響分析を行うとともに、要素理論を用いて分析することによって音韻モデルの検討を行い、一定の成果を得た。また、音韻的単位の言語普遍性と言語固有性について検討するため、モンゴル語の音声を題材として、中国語および日本語母語話者を対象とした知覚実験を行い、対照言語学的な観点からも研究を進めた。これらは研究計画に沿った実績であり、着実に研究が進んでいると言える。 2023年度は分節音に関する研究がメインであり、モーラや音節等、分節音より大きな音韻的単位の分析には至っていないものの、今後は対象を拡大していく見込みがある。また、2023年度中にはモンゴル国において言語調査を実施することにより音声データを収集しており、さらなる音響分析を行う準備が整っている。モンゴル国の研究機関との関係も良好であり、今後も継続的に現地で調査を行うことが可能である。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、本研究では①母語話者の発話の音響分析および調音動態解析、②韻文と語形成の事例収集および統計分析、③モンゴル語と中国語・日本語の音韻階層構造の対照、④音韻モデルの検討、を4つの分析の柱としている。基本的にこの計画に沿って研究を遂行する予定である。 まずは2023年度に引き続き、母語話者の発話データをもとに音響分析を進めていく予定である。また、分節音の構造や、モーラ・音節・フットの実在性の検討には知覚実験も有効であるという見込みがあることから、知覚実験の実施も検討している。調音動態の解析についても、その有効性や実施の可能性を検討する。 韻文および語形成の事例収集については、日本国内での文献調査およびモンゴル国でのフィールドワークを通して実施する予定である。また、韻文および語形成における音韻階層構造の発現事例、およびその分析については、日本語を中心とする他言語の研究実績が大いに参考になることから、関連学会への参加や専門家との意見交換により成果の収集に努め、モンゴル語の分析に活かす。 音韻モデルの検討については、既に分析を進めている要素理論の応用の可能性を探るほか、モーラや音節を扱う諸理論の説明力、およびモンゴル語の現象への説明可能性を検証する。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)