Project/Area Number |
23K12191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
李 頌雅 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 助教 (30964655)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | マルチモーダル会話分析 / 指導と学習の相互行為 / 身体的技術の指導 / 能楽 / 稽古 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、子ども向け能楽教室で収集した録画データを対象に、指導者による説明、学習者に対する身体動作の訂正やそれに伴う評価を含めた実践の事例を分類し、指導と学習の相互行為を明らかにする。マルチモーダル会話分析の手法を用いることで、参加者の言語運用と非言語行動を全体的に分析できる。本研究を通して、身体的に演じられる能楽の稽古という制度的場面の実態や、伝統芸能である能楽教育の現状を解明し、教育的示唆を導き出す。 能楽の伝承に関する取り組みには、能楽師になるための専門的な訓練および、一般市民向けの学習活動があるが、本研究は特に一般市民への文化伝承を目的とした能楽教室における相互行為の解明を目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、伝統芸能である能楽の指導における相互行為を解明することを目的とし、マルチモーダル会話分析の手法を用いて分析を行っている。特に、指導者が学習者である子どもたちに対してどのように身体的技術を伝授するかという点に着目している。プロジェクトの初年度となる2023年度は、関西にある子ども向け能楽教室を中心に、国内と国外で研究活動を行ってきた。 国内では、4月から7月まで能楽教室での映像データ収集を行っており、これまでのデータ収集も含め、計39時間の映像データを確保できた。また、トランスクリプト(文字起こし)の作成とともに、仕舞の指導における(1)動作に関する訂正の導入および(2)動作の説明方法を中心にデータ分析を進めてきた。結果としては、(1)指導者は誤った動作に対しては基準からの逸脱を示す形容詞(例:低い)および動作説明に伴う補助動詞「てしまう」の形式で指摘していることおよび(2)指導者は動作の実演とともにオノマトペ、指標性を持つことば、指示語などの言語的資源を使用していることが明らかになった。一方、学習者の発話が観察される場面は少ないが、指導者のモデルを観察し、自身の身体を用いてその動きと構えを実践する行動が明らかになった。こうした研究成果を公表し、会話分析研究会での発表を1件、武道・芸道に関するシンポジウムでの講演を1件実施した。さらに、仕舞の指導における訂正の導入部についての分析結果を研究論文にまとめ、学会誌『語用論研究』での掲載が決定した。 国外では、上記の研究成果に基づき、国立台湾大学が主催したシンポジウムでの発表を1件行った。日本、台湾、韓国の研究者との意見交換を行い、研究方法の検討や分析の観点などについて有益な知見を共有することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は予定通り研究データの収集・解析を進めており、分析対象となるデータは十分確保できた。また、研究代表者の本務校におけるデータセッションを1回、国内の会話分析研究会での発表を1回を行った。分析の妥当性について検討を重ね、同分野の研究者と議論してきた。さらに、研究の成果は国際シンポジウムで発表し、他国や他分野の研究者と分析の視点、日本の伝統芸能に関する指導の特徴や研究方法の妥当性について議論してきた。本年度の最後に、学術雑誌の研究論文としての掲載が決定し、研究成果の公表ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には、昨年度に引き続き、計39時間のデータをもとにトランスクリプトの作成を進める。さらに、指導における共通理解の達成や稽古における多人数の参加の仕組みについて分析する。 これまでの研究成果の公表に向けて、国内の学会における研究発表と論文執筆に注力する。海外での研究活動については、10月に国立台湾大学が主催するシンポジウムや来年度の国際語用論学会への参加に向けて、申し込みと発表資料の準備を進める予定である。
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