明治太政官制下の博物館制度と価値形成:英国のオリエンタル・コレクションと比較して
Project/Area Number |
23K12263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高久 彩 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究者 (00974007)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | ミュージアム / コレクション / 分類 / 価値体系 / 分捕品 / 聖遺物 |
Outline of Research at the Start |
19世紀のミュージアムや万国博覧会は西欧の価値体系を可視化し、そこでは日本とその物品はオリエントに位置付けられていた。ミュージアムや万国博覧会における分類や展示を通じて西欧文明とオリエントが序列化される中で、明治初期の日本の「博物館」(東京国立博物館の前身)は、いかに「他者」の文化を用いながら自国の物品の価値を形成したのだろうか。本研究は、明治太政官制下の「博物館」が、「もの」を分類して序列化するとともに、列品(収蔵品)を制度化する過程について、英国のサウス・ケンジントン博物館(以下、SKM)のオリエンタル・コレクション形成との比較を念頭に、「博物館」におけるSKM制度の受容の一端を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治太政官制下における「博物館」(東京国立博物館の前身)制度化の特質を解明するため、英国のサウス・ケンジントン博物館(以下、SKMと称す)のオリエンタル・コレクション形成と比較・検討することを目的としている。 初年度(令和5年度)は、検討課題の一つ「日本の『博物館』における価値形成」を検討するため、次の2点①神祇行政関係者の動向、②分捕品の収集過程、について調査を進めた。具体的に前者では、兵庫県内や大阪府内の図書館や博物館で資料調査と収集を行い、西宮神社と廣田神社、そして四條畷神社を巡検した。そこでの調査を踏まえて、資料を整理するとともに、明治の神祇行政で重要な役割を果たした福羽美静の身体に注目し、福羽のオーラル・ヒストリーと他者の叙述を比較考察しながら、福羽の身体に係る自己理解と他者理解の異同を検討した。検討成果として、障害史研究会編『障害史へのアプローチ』(2024年3月)において、論文「福羽美静(1831~1907年)の身体の語り方・語られ方 ―記憶が自伝・伝記になるまで―」を公表した。 また後者では、1874年の台湾出兵に関して、国立公文書館および東京国立博物館が所蔵する文書を収集・整理するとともに、日本軍が牡丹社双渓口で獲得した「蕃地」の武器などを「分捕品」として東京に輸送した経緯を考察した。これに加えて、2023年11月に、150年ぶりに台湾原住民「牡丹族」の頭骨が英国エディンバラ大学から台湾へ返却されたことが報道されたことから、頭骨の移動の経緯とSKMにおける戦利品の動向を先行して検討した。そこでの検討を踏まえて「19世紀の軍事遠征による戦利品とミュージアムの倫理 ―1874年の台湾出兵と諸外国の事例を比較して―」という題目で5000字程度の予稿を公表するとともに、2024年3月に開催された日本文化政策学会年次大会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(令和5年度)に、旧別格官幣社と神祇行政の関係を検討する予定でいたが、昨年暮れに台湾出兵と密接に関わる台湾原住民「牡丹族」に関する研究に進展がみられたことから、そこでの動向を注視しながら、予定を早めて台湾出兵に係る資料収集と整理および資料の検討を先行するとともに、それに必要となる書籍や物品購入を優先した。結果的に、19世紀に特徴的な軍事遠征とそこでの戦利品の移動が、いかにミュージアムのコレクション形成と関係しながら、現在の文化財返還問題を引き起こす要因となっていたのかを把握することに繋がった。そこでは、とりわけSKMの事例を考察することによって、SKMの後身のヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が現在直面する倫理的課題とその解決に向けた取り組みとともに、今後のミュージアム・マネジメントを再考する契機ともなった。次年度(令和6年度)以降に予定しているSKMにおけるオリエンタル・コレクション形成過程に関して歴史的考察を進める上で、事前に有益な基礎的情報を得ることができた。これを深掘りする検討を引き続き行うとともに、後回しとなった旧別格官幣社に関する検討を並行して進める。以上のことから、本研究は今のところ大きな遅滞等はなく、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、「日本の『博物館』における価値形成」を掘り下げて検討するため、2年目(令和6年度)は予定通り「仏教に係る物品」に注目しながら、「『博物館』が『他者』の文化を、いかに展示空間に配列し叙述したのか」という点を考察する。また、日本文化政策学会で報告した「19世紀の軍事遠征による戦利品とミュージアムの倫理―1874年の台湾出兵と諸外国の事例を比較して―」の内容に加筆・修正を加えて、学術ジャーナルへの投稿を進める。これと並行して、SKMにおけるオリエンタル・コレクション形成過程を考察するため、これに関する資料収集を進めるとともに、そこでの日本認識を考察する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)