Project/Area Number |
23K12283
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺澤 優 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 日本学術振興会特別研究員(RPD) (20876099)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 公娼制度 / 娼妓取締規則 / 山根正次 / 松井茂 / 行政執行法 / 花柳病 / 性売買 / 風俗統制 / 遊廓 / 衛生論 |
Outline of Research at the Start |
本研究は近代公娼制度の成立過程における風俗管理の側面に焦点を当て、その後の近代日本の売買春管理がいかなる風紀統制の思想、または家族制度の理念によって規定されていたのかを検討する。公娼制度をめぐる議論は国家による性病・生殖管理の研究や廃娼運動の歴史として蓄積されてきた。しかし1900年に制定され、その後の基本方針をなしたとされる内務省令第44号の娼妓取締規則やその他の公娼制度の処法令は、衛生面よりも風俗統制の面を重視して制定されていた。本研究はこの法令の特質を、前身となった警視庁令、制定に関わった警察官吏の思想から明らかにし、いかに公娼制度を風紀統制面で規定していったのかを考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
近代国家が売買春産業に介入し、性的行動を管理する理由とその本質的意義を問う本研究は、特に近代日本の公娼制度を焦点に置く。内務省令の制定以前の警視庁令や内務省令の制定プロセスに注目し、公娼制度の背景と経緯を解明する。そのために、内務省令の制定以前に存在した警視庁令、警視庁官僚の売買春観、内務省令への反映プロセスについての分析を行うものである。 今年度は、内務省警察医長である山根正次の動向について分析を行った。1900年、内務省と警視庁は共同で内務省令娼妓取締規則の改正を協議した。しかしこの時、山根は欧米視察中で不在であり、そのため医学的見地が規則に反映されなかった。この状況を問題視した山根は、1910年に行政執行法を改正し、娼妓取締規則における衛生的側面からの取締りを強化する方針を打ち出した。また、山根を含む行政執行法改正委員会は、公娼制度の導入が軍事や国家の強化に必要であるとの認識を背景に推進し、同法を基盤として1928年に花柳病予防法制定につながっていく。ここに近代日本の売買春管理の基礎である公娼ー私娼黙認体制が形成されていく。 一方で、1900年の内務省令の娼妓取締規則制定において、大きな役割を果たしたのは警視庁第二部長である松井茂であった。彼は山根とは異なり、法学者として公娼制度の維持に疑義を持っていたことが判明した。また、当時、娼妓の自由廃業に関する規定(警視庁令)と娼妓の就業契約(実際の楼主との契約)に生じる齟齬を問題視しており、内務省令制定においては何らかの解決が模索されたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体の進度は概ね順調といえる。当初の計画では警視庁令の制定課程を初年度の研究計画の中心とし、個々の官僚の思想的背景は2年目3年目の計画としていた。しかし先に警察官僚の思想に関する史料の方を先に入手したために順序を前後させた。
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Strategy for Future Research Activity |
警視庁令「娼妓取締規則」の内容・背景と実際の運用について、以下の点を中心に解明・分析する。
1. 1900年の警視庁令において、公娼取締りがどのように規定され、その下で東京府下の吉原遊廓などが運営されていたか、『警視庁東京府公報』や『花柳新聞』に掲載された情報から分析 2. 松井茂は警視庁令第37号と内務省令の制定に関与し、その風俗警察としての信条や観念が規則に影響したことが明らかになった。彼の残した資料をもとに、娼妓取締規則がどのような思想に基づいて展開されたかを考察。この際、医学的見地から公娼存置論を提唱した山根との比較分析を行う。 3. 内務省令の文言と地方の遊廓運営への影響を検討する。各府県での細則制定後、地方の遊廓の全国的平準化につながるとされる。そこで内務省令は地方の公娼運営の理念にいかに影響を与え、松井らの社会秩序や風俗観、家族制度観が地方の公娼制度にどのように反映されたか、またはされなかったかを考察する。特に、東京と大阪を対象に、公娼制度の理念が風紀面でどのように実践されたかを調査していく。
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