Project/Area Number |
23K12292
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
海野 典子 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 講師(任期付) (30815759)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | 中国ムスリム / オスマン帝国 / 清朝 / 大日本帝国 / 回民 / 中国 / イスラーム / 日本 |
Outline of Research at the Start |
20世紀前半、大清帝国(清朝)との通商関係樹立を望むオスマン帝国、およびアジア進出を目論む大日本帝国は、漢語を話すムスリム(中華人民共和国の少数民族の一つである回族にほぼ相当、歴史的呼称は回民)に戦略的重要性を見出し、回民を対象に諜報活動や懐柔策をそれぞれ実施した。中国におけるムスリムの地位向上を目指していた回民指導者の一部は、両帝国と交渉して引き出した政治・経済的支援を宗教・教育改革に利用した。本研究は、回民の両帝国に対する働きかけが、世界情勢や学問潮流、日本の対イスラーム宣撫工作、中国の民族政策に与えた影響を解明することによって、近代アジアの国際関係史をマイノリティの視点から再構築する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、20世紀初頭、日本やオスマン帝国が回民に接近した経緯を整理した。 まず、アジア進出を目論む日本が、回民に対して団結心と闘争心の強い集団であるというイメージを膨らませ、彼らの国際的な宗教ネットワークに戦略的重要性を見出した過程を調べた。そのために、陸軍・外務省・国家主義団体が中国各地の回民コミュニティに派遣した工作員(その一部は、亡命先の東京で回教工作に協力していたロシア出身のタタール人ムスリム)による調査報告書、中国西北地域での「回教国」建設計画書、および回民知識人の日本留学記を分析した。 次に、西欧列強との戦争に敗れ、起死回生の一手として清朝との通商関係樹立を望んだオスマン帝国第34代スルタン(皇帝)のアブデュルハミト2世が、両国の仲介役として回民に期待を寄せ、彼らの宗教・教育改革や当時オスマン領であったメッカへの巡礼を支援するに至った流れを把握した。特に、1900年の義和団事件発生時、在中外国人を襲撃した回民部隊に恐れをなした、ドイツ皇帝のヴィルヘルム2世に助けを求められたことをきっかけとして、アブデュルハミト2世が回民に関心を抱くようになったということがわかった。 7月には台北で、9月にはアンカラで調査を行い、東アジアとオスマン帝国の関係史を研究する現地の研究者と意見交換の機会をもつことができた。また、2023年度に調べた事柄を現在執筆中の著書に 反映させるべく、作業を行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、ほぼ当初の計画どおりに研究を進めることができた。史料の収集・精読だけではなく、関連分野の研究者との意見交換の機会や、著書執筆の時間をもつことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、中国のムスリムを対象として宣撫工作を行っていた日本とオスマン帝国に対する、各地の回民の多様な反応を比較検討し、その変遷をたどる。具体的には、以下三つの回民グループの両帝国への対応を分析する:①日本の回教工作やオスマン帝国の産業スパイ活動に協力する見返りとして、宗教・教育改革への援助を申し出た、北京の宗教指導者(王寛、張子文など);②日本が回民を煽動するために作った秘密結社「狼頭会」の活動や、オスマン帝国が支援していた新疆のテュルク系ムスリムの分離独立運動に参与した、西北地域の宗教指導者(馬元章など);③ムスリム全体が外患罪の疑いをかけられることを危惧して、両帝国と密接な関係を持つ宗教指導者たちを批判した、北京や天津のジャーナリスト(丁宝臣、劉孟揚など)。 なお、東アジアでの利権拡大を狙うドイツやフランスの外交官が中国におけるオスマン帝国の治外法権を認めるよう中国政府に提案したこと、オスマン帝国の工作員に金銭を提供していたことについて、中国当局は不快感を抱いていた。このとき、英国は、独仏の動向や日本の膨張政策を注視し、独自に情報収集を行っていた。そこで、東アジアにおける西欧諸国の外交戦略、1908年の青年トルコ革命や1911年の辛亥革命といった政治変動、回民の日本留学やメッカ巡礼の経験が、回民・日本・オスマン帝国の関係にどのような変化をもたらしたのかを調べる。英国の公文書館で史料調査を実施する予定である。
|